来る7月、SPAC芸術総監督・宮城聰が、南仏の古都エクサン・プロヴァンスで毎年開催される世界的なオペラの祭典「エクサン・プロヴァンス音楽祭」にて、『イドメネオ』(モーツァルト作曲)を、メイン会場となる旧大司教館中庭の「アルシュヴェシェ劇場」にて演出します。本劇場での日本人演出家による作品上演は、75年に及ぶ同音楽祭史上初めてのことです。
『イドメネオ』はモーツァルトが25歳の時に作曲し、その後のオペラ創作において重要な区切りとなった傑作です。宮城は、この古代ギリシアの物語に太平洋戦争終結時の日本を重ね、原作が持つスケールの大きさはそのままに、生々しいドラマ性を浮き上がらせます。
音楽監督を務めるのは、フランス音楽界のホープとしていま大きな注目を集めるラファエル・ピション。歌手陣には、テノールとバリトンの声を持つマイケル・スパイアーズ、フランスの若手ソプラノとして人気絶頂のサビーヌ・ドゥヴィエルら豪華な顔ぶれが並び、本作の核として戦死者たちの魂を表現する合唱、およびオーケストラは、ピション率いるピグマリオンが担います。また、クリエイティブチームとして、宮城と25年以上にわたり共に創作を行い、代表作『マハーバーラタ』『アンティゴネ』など数多くの作品を手掛けている木津潤平(空間構成)、高橋佳代(衣裳)が参加。さらに、SPACでは『ギルガメシュ叙事詩』『顕れ』などの照明デザインを担う舞台照明家・吉本有輝子、昨年SPACで『忠臣蔵2021』の振付を担当した振付家の北村明子らが参加し、唯一無二の『イドメネオ』を誕生させます。
アヴィニョン演劇祭(2017年)、ニューヨーク(2019年)での『アンティゴネ』公演など、国内のみならず、世界的にも高く評価される演出家・宮城聰の、ヨーロッパにおけるオペラ演出のデビュー作『イドメネオ』にぜひご注目ください。
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「エクサン・プロヴァンス音楽祭」
オペラ 『イドメネオ』 Idomeneo, re di Creta
作曲:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
台本:ジャンバッティスタ・ヴァレスコによるイタリア語のリブレット
音楽監督:ラファエル・ピション
演出:宮城聰
美術:木津潤平/衣裳:高橋佳代/照明:吉本有輝子/振付:北村明子
合唱:ピグマリオン、リヨンオペラ座合唱団/管弦楽:ピグマリオン
◎日時(現地時間):
7月6日(水)・ 8日(金)・11日(月)・13日(水)・15日(金)
7月19日(火)・22日(金) 各日21:30開演
◎会場:
アルシュヴェシェ劇場(エクサン・プロヴァンス/フランス)
◎上演言語:
イタリア語上演(フランス語および英語字幕)
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あらすじ
クレタ王イドメネオはトロイア戦争から凱旋の帰途、嵐に遭遇するが、海神ネプチューンに助けられる。王は、上陸して最初に出会う人間を生贄に捧げると海神に誓うが、息子イダマンテに出会ってしまう。家臣は、イダマンテをクレタに滞在中で彼を愛するアルゴスの王女エレットラとともにアルゴスへ向かわせるべく提案。だがイダマンテは捕らわれの身となっている敵国トロイアの王女イリヤと愛し合っている。イダマンテの危機に、イリヤは自らを生贄にと神に申し出る。すると突然、神の託宣が聞こえ、イダマンテを国王にと告げる。エレットラだけが託宣に怒るが、人々はイダマンテとイリヤの結婚を祝福する。
エクサン・プロヴァンス音楽祭とは
1948年に南フランス、エクサン・プロヴァンスでスタートした、ザルツブルク、バイロイト、グラインドボーンと並ぶヨーロッパ最大級のオペラ・フェスティバル。
https://festival-aix.com/fr
演出家プロフィール
宮城 聰 MIYAGI Satoshi
演出家。SPAC-静岡県舞台芸術センター芸術総監督。東京大学で小田島雄志・渡邊守章・日高八郎各師から演劇論を学び、90年ク・ナウカ旗揚げ。国際的な公演活動を展開し、同時代的テキスト解釈とアジア演劇の身体技法や様式性を融合させた演出で国内外から高い評価を得る。2007年4月SPAC芸術総監督に就任。自作の上演と並行して世界各地から現代社会を鋭く切り取った作品を次々と招聘、「世界を見る窓」としての劇場づくりに力を注いでいる。14年7月アヴィニョン演劇祭から招聘された『マハーバーラタ』の成功を受け、17年『アンティゴネ』を同演劇祭のオープニング作品として法王庁中庭で上演、アジアの演劇がオープニングに選ばれたのは同演劇祭史上初めてのことであり、その作品世界は大きな反響を呼んだ。他の代表作に『王女メデイア』『ペール・ギュント』など。04年第3回朝日舞台芸術賞受賞。05年第2回アサヒビール芸術賞受賞。平成29年度(第68回)芸術選奨文部科学大臣賞(演劇部門)受賞。19年4月フランス芸術文化勲章シュヴァリエを受章。