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2021年9月25日

『マハーバーラタ ~ナラ王の冒険~』ウラジオストク公演開幕

 宮城聰×SPACの代表作『マハーバーラタ ~ナラ王の冒険~』は、ロシア・ウラジオストクで2020年に開催を予定されていた「第1回太平洋国際演劇祭」(主催:チェーホフ国際演劇協会)の招聘を受け、一年間の延期を経て9月24日(金)、無事初日を迎えました。
 
▼初日カーテンコールの様子

 
 古代インドの国民的大叙事詩のなかで最も美しいロマンスと言われる『ナラ王物語』。これを絢爛豪華な舞台絵巻に昇華させた本作は、世界各地で上演を重ね、観客を魅了し続けています。2014年、世界的な演劇の祭典「アヴィニョン演劇祭」で大成功をおさめると、翌15年には「チェーホフ国際演劇祭」の招聘を受けロシア・モスクワで上演。その後、「東アジア文化都市2016奈良」やフランス・パリでの「ジャポニスム2018」サウジアラビア公演(18年)池袋西口公園野外劇場のこけらおとし公演(19年)でも絶賛されました。
 
 「太平洋国際演劇祭」は、ロシア政府が実施する極東連邦地域での文化活性化事業のメインプログラムであり、環太平洋諸国とロシアの文化交流強化を目的としています。本作の持つ「文化の出会いと混交のダイナミクス」というテーマは、同演劇祭の目的にまさに合致するものです。

 海外との往来がまだまだ難しい状況の中、このたびの公演の実現にあたりご尽力くださった皆様に、この場をお借りし心よりお礼申し上げます。
 

 
 

 
マハーバーラタ ~ナラ王の冒険~
演出:宮城聰 台本:久保田梓美
音楽:棚川寛子 衣裳デザイン:高橋佳代 
照明デザイン:大迫浩二 美術デザイン:深沢襟 ヘアメイク:梶田キョウコ
出演:SPAC/赤松直美、阿部一徳、池田真紀子、石井萠水、大内米治、大高浩一、春日井一平、片岡佐知子、加藤幸夫、榊原有美、桜内結う、佐藤ゆず、関根淳子、大道無門優也、武石守正、舘野百代、寺内亜矢子、ながいさやこ、中野真希、本多麻紀、美加理、宮城嶋遥加、森山冬子、吉見亮、若宮羊市[五十音順]

■ 公演日:[一般公演]2021年9月24日、25日、26日(全3公演)
■ 会 場:マリインスキー劇場 沿海州別館 (大ホール)
Pacific International Theatre Festival
Международный Тихоокеанский театральный фестиваль (pacificfest.ru)
英語ページ
The International Pacific Theater Festival (pacificfest.ru)

劇場外観 演劇祭ポスター

 

9/23(木)のプレスカンファレンスにおける宮城のコメント

COVID-19が広がったことによって、僕たちが日本からウラジオストクに来ることに様々な困難が発生しましたが、しかしどうしても行くべきだと考えました。
と言うのも、かつて世界の国境は段々低くなっていくと信じられていた時代がありましたが、しかし最近は、国境はまたどんどん高くなっているのではないでしょうか。そして国のグループと国のグループの反目は一層進んでいると感じます。つまり「自分たちと異なる文化を持っている人々は、理解できないんだ」という諦めが世界中に広がっているのではないでしょうか。自分たちとは異なる人々を理解できないんだと決めてしまったら、その先にあるものは、力のあるものが相手を黙らせるという暴力的な世界だと思います。ですから、今こそ自分たちとは異なる文化を理解し、さらにそれを楽しむという機会を持つことが大切ではないでしょうか。
特に演劇は、言語を使う芸術なので、自分たちとは異なる文化だということは、はっきりしています。しかし、言葉が違うという壁を越えて、観客と舞台にいる人々とが共感する瞬間があります。そういった瞬間には、「人間と人間は、根底においては理解し合えるんだ」という深い喜びを感じることができます。どれほど文化が異なっていても、奥深いところで共感できるという体験をすることで、人間は人間に対しての信頼を取り戻すことができるのではないでしょうか。僕たちが明日から上演する日本語の演劇が、ウラジオストクのお客様の共感を獲得できれば、その時、今申し上げたように、人と人との信頼というものが実感できると思います。軍事的なこと、政治的なこと、様々な問題があっても文化によって人間は前進できる、僕はそう信じています。