ニュース

2025年2月21日

「SPAC秋のシーズン2025-2026」アーティスティック・ディレクターに石神夏希氏

世界の名作戯曲を現代の演出でお届けするSPACのシーズンプログラム。2025年度の「SPAC秋のシーズン」のアーティスティック・ディレクターに、劇作家・石神夏希氏を迎え上演します。
「秋のシーズン」では、週末の一般公演に加え、平日には若い世代がはじめて演劇にふれる機会として「中高生鑑賞事業公演」を行い、毎年1万人をこえる県内各地の中高生に本格的な舞台鑑賞の機会を提供しています。
*「SPAC秋→春のシーズン」は「SPACのシーズン」に名称変更しました

SPAC-静岡県舞台芸術センター 芸術総監督
宮城聰のコメント

SPAC-静岡県舞台芸術センターは今年、財団設立30周年を迎えます。
これを機に、「舞台と客席」の範疇にとどまらずに、広く社会の課題解決や新たな価値の創造にわれわれの蓄積を活用してゆこうと、「SPACが社会に染み出す」フェーズ、いわば「SPAC2.0」のフェーズに進もうと考えております。
僕はSPACの芸術総監督としてこの「SPAC2.0」の諸事業を開発・展開するとともに、組織のガバナンスにもいっそう注力していくつもりです。
そこで、25年度のSPAC「秋のシーズン」では、アーティスティック・ディレクターとして石神夏希氏を迎え、3作品のプロデュースに関する仕事をお任せすることにいたしました。
<社会に染み出してゆく>SPACにぜひご注目いただき、また石神氏プロデュースの秋シーズン3作品にご期待をお寄せいただきたく、ここにお知らせいたします。
2025年度もSPAC-静岡県舞台芸術センターをどうぞよろしくお願い申し上げます。

石神夏希氏からのコメント

生まれ育った首都圏を離れ、2020年から静岡で暮らし始めました。以来ときには子どもの通う保育園で、ときには商店街の人との会話から、地域に根ざした公立の劇団・劇場であるSPACが、この土地で生活する人たちにとってどのような存在なのかを肌で感じてきました。またSPAC秋のシーズン(旧・秋→春のシーズン)には平日の昼に足を運び、中高生に交じって観劇する機会が増えました。劇場に来たことがないという若い人たちが「生まれて初めて演劇と出会う」瞬間に立ち会うことは、いつも特別な体験でした。
今回ディレクションをさせていただくにあたって、観客席の闇の中で感じた子どもたちのあの息遣いをなんども思い返しました。そしてコンセプト、というよりむしろメッセージとして〈きょうを生きるあなたとわたしのための演劇〉ということを、シーズンを通じて伝えたいと思いました。
ラインナップを組む際には「生活者としてのアーティスト」がどのような物語を届けたいと思うのか、というシンプルな問いを立てました。観る人の身体の裡に永遠に残る一瞬を結実させようとすることと、きょうもあしたも続く生を生きること。相反するふたつの方向に引き裂かれながら、目の前にいる観客とともに「この世界の手触り」みたいなものをなんとか掴もうとする。演劇の上演とはそのような愚直な行為だと思います。私はそんな矛盾した、だからこそ切実な営みに心を動かされます。SPACと観客の皆さんとの間で三十年という月日をかけて積み重ねられてきた対話に思いを馳せながら、劇場にまたひとつ新たな窓を開くように、今シーズンが「新しい風」を吹かせることを願っています。

プロフィール
石神夏希(いしがみ・なつき)
劇作家。1999年よりペピン結構設計を中心に活動。国内外で都市やコミュニティのオルタナティブなふるまいを上演する演劇やアートプロジェクトを手がける。近年の主な仕事に「東アジア文化都市2019豊島」舞台芸術部門事業ディレクターおよび『Oeshiki Project ツアーパフォーマンス《BEAT》』作演出、2019台北芸術祭ADAM Artist Labゲストキュレーター、静岡市まちは劇場『きょうの演劇』企画・ディレクター(2021年度)他。SPACでは、2022年に『弱法師』(作:三島由紀夫)、2023年に『お艶の恋』(原作:谷崎潤一郎『お艶殺し』)、またふじのくに⇄せかい演劇祭2024にて、間食付きツアーパフォーマンス『かちかち山の台所』を作・演出。2025年度、「SPAC秋のシーズン2025-2026」のアーティスティック・ディレクター。

関連リンク:
〜SPAC設立30周年〜 2025年度年間上演ラインナップ
これまでの中高生鑑賞事業のあゆみ