8月18日に清水区にある禅寺、東壽院さんでリーディング・カフェを開催しました。カフェといっても今回は、小学3年生から6年生の子どもたちが集まった修養会に少しだけ参加させていただいて、みんなで戯曲を読みました。
東壽院さんは夏のこの時期に子どもたちを集めて修養会を開いています。もう30年も続いているそうです。20数名の子どもたちがお寺に滞在し、寝起きをともにしながら、勉強したり、川で遊んだり、夏休みのひとときを過ごします。県内だけでなく県外から参加している子どもがいたり、子どもたちにとってはとても特別な体験になるだろと思います。
御住職の御厚意でそこで戯曲を読む機会をいただいたわけですが、読んだのはメーテルリンクの『青い鳥』。ご存知の方も多いと思います。チルチルとミチルが青い鳥を探しに旅に出るお話です。
一人一人せりふを読んでいくと、みんな、人が読んでいるときはじっと耳を澄まして聴いていることに気づきます。せりふを読むことは、登場人物の声を代弁することにもなるので、戯曲を声に出して読みはじめると、本のなかの人たちがこの世にあらわれ出たような錯覚がうまれて、子どもたちも、そんな不思議な空気に、思わず、耳を澄ましてしまったようです。普段おしゃべりをするときとは明らかに違う言葉が、ふっと、その空間を漂って、子どもならではの鋭い感覚で、その変化をとらえているようでした。だから隣の友だちとごそごそ話していても、せりふが聞えだすと、黙って聴いてしまう。演劇が生み出す異空間が人を惹きつける、そのシンプルな形に出会ったようで、子どもたちを見ながら、こちらの方がなるほどとうなずいてしまう、そんなリーディングになりました。
後半は25人の子どもたちに5人ずつ5グループにわかれてもらい、グループごとにリーディング、それから発表もしました。人前に立って読むとなると淡い緊張感があって、けれどみんな堂々と読んでいました。
戯曲を読むというただそれだけなのですが、子どもたちはさまざまな心の動きを体験することになったのではないかと思います。思わず耳を澄ましてしまう、あるいは、人の前に立つ緊張感というのも普段は体験しないことでしょう。演劇の教育的意義を示したいSPACとしても、その信念を確認するよい機会になりました。
演劇が教育のためにできることがまだまだあるようです。