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2013年11月22日

『ロミオとジュリエット』ヨーロッパ・ツアーその10(美加理編)

11/14

ツアー6 ヶ所目の 南仏シャトーバロンへ。
いつものように俳優陣は、ジュネーヴのコルナバン駅税関前で待ち合わせ。
ツアーの始め頃は、皆であたふたしたものですが、列車での移動も、慣れたもの。

今回は、ジュネーヴから、片道4時間半の南仏の都市ツーロン駅を目指します。
これまでのフランス行きとは違い、アビニヨンやマルセイユを通るルート。
車窓の景色もまた新鮮。

さて、列車の旅、皆どうやって過ごしているかというと、、
音楽を聞く、動画を観る、食べる、飲む、語らう、本を読む、編み物をする、ひたすら景色を見る、パズルをする、寝る。
といった感じです。普通です。
芝居の稽古をする人や、スパーリングを始める人は居ません。

で、今回は、珍しく皆の席が2つのbox席で揃ったので、
お喋りをしながら、折り紙をして過ごしました!
コワオモテの折り紙サークルですね。

実は先日、休暇明けに、この『ロミオとジュリエット』のツアーを共にしていた、舞台スタッフさんが病気を患われ、入院されているということを知りました。
危険な状態は脱し、現在は快方に向かっているということで、安心しました。
そこで、お見舞いに皆で鶴を折ることにしたのです。

このあと、シャトーバロンに到着してからも、フランス俳優陣やスタッフさんも含め、折り紙大会となり、鶴さんは、どんどん増殖するのでした。



夕方、ツーロン駅に到着。

演出助手のファビアナや、神父役のピエール=イブ、パリス役のギガちゃん、ヘアメイクのベロニク、通訳の山上さんらと合流。
迎えに来てくださった現地のスタッフさんの車に 乗り込み、劇場と宿舎のある場所へ。

遥か山の上方に、建造物群が見える。誰かさんが「あんな処にまで人が住んでいるんだねえ」なんて、感心していたら車はずんずんそちらの方へ。

ああ、これは日本平だ、利賀村だ。

シャトーバロン。
訳すならば、「男爵城」です。
辺りは暗くて
全貌はわかりませんが、空気が澄んでいます。朝がくるのが楽しみです。

宿舎は、小さな元お城です。
地下のお部屋は洞窟のようで、男優陣の素敵にうなだれた姿が似合います。
リビングルームでは妖しい笑みを浮かべた ぬいぐるみ男爵が、私たちをみつめています。

それぞれ3日分の食料を買い込んで、キッチンの冷蔵庫は一杯になりました。

宿舎の隣りには、野外劇場があるようです。
私たちが公演をするのは、屋内劇場。
ほかに、敷地内には、スタジオなどもあるそうで、1980年代から、フェスティバルが開催されている歴史ある場所。

やはりここも、芸術の聖地なのでしょう。
身がひきしまります。

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11/15 公演初日

敷地内を散策。
太陽と風 、空と大地のハーモニーを味わう。
自然の中にいると、身体に力がみなぎってくる。
感謝。
野外劇場から、地中海が見える。


前乗りして、前日から仕込み作業をしてくださっている舞台、照明、音響、衣装スタッフのみなさんは、既に劇場入りをしている。

私たち俳優は、それぞれのやり方で調整をして、午後からのゲネプロに臨みます。
わたしのこの日は、折角なので、木立ちの中、岩に腰掛けて、歌をうたったり、台詞の練習。劇場に入って、自分の小道具や早替え場のセッティング、そしてストレッチなど。



午後
舞台上に集合。
劇場によって、舞台の大きさも客席との関係も違いますので、まずそれを確認します。
シーンごとに必要な舞台セットの置き位置のバミリ(目印となる小さなテープ)を貼ります。

準備が出来たら、衣装とメイクは無しで、ゲネプロが始まります。
照明や音響、またセットの出し入れなどを担当してくださる、それぞれの公演地のスタッフさんの練習として、必ず各公演地の初日は、昼間に一度、本番と同じように全編を通します。
俳優にとっても、お客様こそいないけれど、その劇場がどういう空間で、どういう特徴を持っているかということを、感じる大事な時間でもあります。

しかし、今回のように、前日からその土地に着いて休めるときはいいのですが、
公演当日に、その土地に来て、ゲネプロをして、公演もして、というスケジュールの時は、流石にぐったりしてしまいます。

13歳のジュリエットを演じているので、はつらつとしていなくてはなりませんね!
けれど終演後の姿はとてもおみせできません。

さて、この日、忙しいお仕事の合間をぬって、演出のオマールさんがいらっしゃいました。
もっと、作品を良くしたいとの思いから、ゲネプロ中にも関わらず、どんどん止めて、新たな演技プランを俳優に試させます。
あらあら、こんな日もありますね。

そうこうするうちに、本番です。

この劇場は、音の響きが、少なく、台詞が、すこし聞き取りにくいようです。

お客様に楽しんでいただけるといいのですが。

終演後、聞いたところによると客席がとても寒かったそうで、お客様の集中力も今ひとつの感。
私たちも、いくらか、慣れてきてオートマチックな演技に傾いていた部分もあったのか、残念ながら、ベストと言える公演ではありませんでした。

明日こそは!

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11/16 

シャトーバロン千秋楽

今日はのんびり、夕方のトレーニングまでは、自由です。
昨夜飲み過ぎたわたし、反省の朝。

昼過ぎ、何人かで、折鶴の糸通しの作業、一つ一つ手にとると、折った人の個性が見えて面白い。首も尾っぽ?も太いやつ、メタボな感じのやつ、バレリーナみたいなやつ、半透明で小さいこ、なかには、舞台図面の紙で折ったのもいて、素敵です。

枝を拾って、モビールみたいに仕上げようということになり、バランスなど、皆で頭をひねりひねり
完成は、次の土地、アヌシーに持ち越します。

また、ヘアメイク楽屋では、「サロン・ド・ベロ」が、大繁盛!
ツアー中に伸びた髪の毛を、ヘアメイクのベロニクさんに整髪してもらっています。
何日かに分けて、ほとんど全員、お世話になりました。

夕方、劇場に集まり、SPACトレーニング。
最近では、照明のバロンタン王子も参加しています。ヨロヨロしながら、必死にメソッドに取り組む姿は、かなりキュート。
トレーニング終わりは、今回演出助手の名女優、ファビアナさんの、ノーツタイム(前日の公演の反省や、改善点などの相談をする時間です)。
この日、ファビアナさんは、
「みなさん、もう一度、各シーン、それぞれ自分の役の目的や、全体のなかでどういう位置にある瞬間なのか?丁寧に確認して、本番にのぞみましょう」
というような事をいってくれました。

公演回数が多くなるうちに、どんどん進歩していくことも勿論たくさんあるけれど、
知らず知らず、横に置いてきぼりにしてしてしまうこともでできて、それがとても大切なことだと、我に返してくれることを、このファビアナさんは、時折教えてくれるのです。
彼女は本当にとても素敵な女優さんで、いつも、初めてそのお芝居をみるお客様の 心の動きを忘れない人だと思います。

さて、
この日の公演は、とてもいい舞台でした!
会場の温度も調節され、スタッフ、キャスト、皆、一丸となり丁寧でいい仕事が出来ました!
お客様も昨日とはうってかわり、とても喜んでくださっている。
カーテンコールの後、いつも舞台裏では、皆で、握手をしたり、ハグをしたりしますが、今日の笑顔は、本当にみんな素敵でした。

終演後、突然20人位の団体で見にいらしていた高校生とその先生からのリクエストで、俳優と高校生で質疑応答の時間が設けられました。みな、様々なことを感じてくださったようです。

この後は、また大急ぎでバラシ作業です。
この日は、最後まで皆で作業しました。
終了は、午前2時。

たいそうロングなトラックに、全て積み込んで。

スタッフさん揃って、記念写真をとりました。

お疲れ様でしたー!

美加理(2013.11.19)