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2009年10月21日

SPAC俳優たちの“素顔”

10月17日、18日と静岡芸術劇場1階ロビーで「SPAC俳優による朗読とピアノの午後」が上演されました。

SPACを以前からご存知の方にとっては、SPACの俳優といえば、訓練に訓練を重ねた鋼の肉体をもち、舞台の上に立つことに関しては一切の妥協を許さない、日本演劇界屈指のアスリートというイメージがあるかもしれません。このイメージは、俳優たちの実像を一面では的確に言い当てています。けれど、野球選手にだっておちゃめなところがあるように、SPACの俳優にだって“素顔”があります。そんな今まであまり見えなかった俳優の魅力をひきだそうと企画されたこのロビーコンサート。SPACにとっては初の試みでしたが、2日とも盛況のうちに終えることができました。

この企画は、半ば、俳優のセルフプロデュースのようになっています。俳優自身が今読みたい詩だったりエッセーだったり小説だったり戯曲だったりを持ち寄って、こんなことやりたい!
というアイディアをピアニストや演出家と相談しながらつくります。だから俳優によってまったく趣の違うものができあがります。一口に「朗読とピアノ」と言っても、毎回俳優が変わりますから、毎回がらりと雰囲気が変わるんです。

しかも劇場1階ロビーでの上演です。劇場のなかとは大違いです。大窓から日の光が差し込みますし、貨物列車の発車の合図も聞えます。観客が俳優の顔を見られるのはもちろんですが、俳優の方も観客の顔がありありと見える親密な空間です。お客様には俳優を身近に感じ取っていただけると思います。

17日の出演俳優は貴島豪と石井萠水、18日は本多麻紀と木内琴子、ピアニストは両日ともに吉田イツコさんにお願いしました。

ピアニストの吉田イツコさんは俳優に負けないパフォーマーで、ショパン、シューベルト、スクリャービンを複雑な技巧を感じさせない軽やかさで奏でるかたわら、17日には貴島豪の朗読に合わせてエアピアノを披露してくださりました!
貴島豪が東北なまりで書かれたエッセーを読むその横で、サングラスをかけた吉田さんが見えない鍵盤を弾いている!
思わずニヤリとしてしまう趣向です。

貴島豪は土方巽という舞踏家の難解なテキストを優れた朗誦術と意外なアイディアで見せました。階段から大量のジャガイモが流れてきたときには、思わず皆さん口をあけてしまったことでしょう。もちろんこのジャガイモはお客様にお持ち帰りいただきました。
ブログ<萌え目線。>でおなじみの石井萠水も17日に登場。萩原朔太郎の詩を吉田さんのスクリャービンに合わせて読み上げました。

18日はあえて朗読とピアノを切り離し、交互に上演するという形をとりました。吉田さんが弾くシューベルトの即興曲と俳優たちの朗読が交互に展開します。本多麻紀の澄んだ繊細さと木内琴子の力強い印象が、それぞれの俳優にとって大切な詩のなかで浮かびあがります。それをピアノがやさしく受け継いでゆく…
いつのまにか心地よい空気があたりを漂う、そんなコンサートになりました。
最後はなんと木内琴子の歌で締めくくり。しかも客席には紙ふぶきが舞い降りるという仕掛けでした…
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今回の「朗読とピアノの午後」にはワンドリンクチケットがついています。終演後は皆さん劇場2階の「カフェ・シンデレラ」で小1時間の歓談を楽しまれていました。カフェには俳優とピアニストが顔を出し、お客様に直接感想を聞いたり、親交を深めることができるようになっています。

「SPAC俳優による朗読とピアノの午後」、次は11月の開催です。残るはあと8人の俳優たち。これを見逃す手はありません。
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