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2017年9月16日

<病ブログ2017 #2>潤色・演出 ノゾエ征爾さんインタビュー

病ブログ第2回は、潤色・演出のノゾエ征爾さんのインタビューです!

[写真1]NozoeFace15pf-1

自身が主宰する劇団「はえぎわ」での作・演出のほか、映画やTVドラマなどへの俳優としての出演、さらには昨年12月にはさいたまスーパーアリーナで、故・蜷川幸雄さんの意を継ぎ、「1万人のゴールド・シアター2016」の脚本・演出を手がけるなど、様々なシーンで活躍中のノゾエ征爾さん。
5年ぶりとなる『病は気から』の再演を前に、本作への思いについてお話を聞きしました。

(本インタビューのショートver.は、2017/7/21発行の「すぱっく新聞第1号」に掲載されています)

[写真2]2012.10.23-039
(初演の舞台写真 撮影:三浦興一)

「SPAC史上一番笑いに執着した作品にしたい」

-初演時、SPAC俳優との芝居づくりはどうでしたか?

当時は2期に分けて稽古したんですけど、第1期の稽古はもう、ずっと模索していて。SPACさんとご一緒すること自体が初めてでしたし、色々やってみて、「これ面白いかもね」「あぁ、これはよくない」という共通感覚を、お互いにちょっとずつ掴んでいく時間でした。
そもそも「こういう作品にしよう」っていう演出プランを、僕の方ではあえて明確にしなかった。どういうチームなんだろう、何を面白いと思うのか、といったことを感じること、そして探すことから始めたいところがありました。だから演者さんたちは、「おやおや、この演出家は具体的なことはあまり言わないぞ」って、戸惑っていた時期があったかと。あるとき僕が一言、「SPAC史上一番笑いに執着した作品にしたい」とボソッと言ったら、演者さんが、「今日初めて演出的なことを言ってくれた気がする」と。(笑)

-明確な演出プランを示してそれに沿ってやっていくというよりは、やっていく中で起きたことや気づいたことを大切にしたい、というスタンスなのですね。

ええ。プランを示すタイミングはいつも意識していますし、プランを示すべきじゃないと思ったら示さない、という姿勢です。最初のプランって一人で机の前とかで考えているものなので、それがハマるときもあるんですけど、稽古場に行くと結局跳ね返されることも多い。
稽古場で人が集まって生まれるエネルギーってすごく絶対的なものがあって、そこで起きるものを大切にしたいと思っています。プランがあったとしても、いい意味でそれが跳ね返されることを、常に期待しています。

-舞台での笑いを作るときに大切にしていることはありますか?

いわゆるお笑い芸人さんがやられるような笑いには、踏み込むべきではないし、踏み込んだところでかなうものではないと思っています。まずはドラマや役柄の置かれている状況が優先で、その結果として起こる笑いを目指しています。
あと、かなり大事にしているのが登場人物たちが切実であるということ。なので、笑いというより「滑稽」かも。漏れ出る滑稽さ。それが「いとしさ」になっていく。「滑稽」って、イコールどこか抜けているというか、つまり不完全さですけど… 不完全な人にこそ、僕らは人間味を感じて共感する。そういった「人間たちのいとしさ」というものを抽出したい。そこに自然と笑いがある。そんな感覚があります。

[写真3]2012.10.23-003
(初演の稽古風景より 撮影:三浦興一)

-モリエールは、戯曲を書いて演出し、自ら出演もするという人物だったといわれていますが、ノゾエさんも同様の活動をされているという印象があります。ノゾエさんから見て、モリエールという人物のイメージや魅力はどのようなものでしょうか。

当時の文献を読んでいて思ったのは、350年以上前の人間が、演劇という場をこんなに謳歌しているという驚きです。それに関してモリエールって、むしろ新しさを感じるというか、同じ演劇人として、その自由さにショックを受けた覚えがあります。演劇というものの自由を体現している。
シェイクスピアも同じ時代の人間ですが、シェイクスピアってどこかで遠い人といいますか、僕たちとの間に時間の溝みたいなものがある感じがします。偉大になりすぎたと言いますか。一方でモリエールは不思議なもので、それほど時間の隔たりを感じない。
その最期にしても、舞台上で倒れてそのまま亡くなったという説があって、一見するとフィクションのような事件ですが、僕は逆にそういったところに人間味を覚えます。遠い昔の人間ですけど、感覚的に僕たちと同じラインにいる人なんだな、という感覚がありますね。

-今度は再演になりますが、どのようなスタンスで臨まれますか?

何かを大きく変えるつもりはないんですが、初演から時間が経っているっていうのもありますし、前回が面白かったからと言って、僕らが新鮮さを感じなくなっている部分があったら、そこはもうやるべきじゃないと思っています。ですから、鮮度がなくなっているところは一回取り外す必要があるのかな、と思っていますね。
初演ってカドがたくさんあるものが生まれていると思うんです。勢いといいますか、トゲトゲしていて。もしかするとそれは「荒い」っていうことかもしれないんですけど、再演を重ねてカドが取れれば収まりも良くなるんでしょうけど、完成度イコール面白みかというと、僕はなにか違う気がしていて。
ですから、今回の再演では、僕自身も稽古場で、あらたにトゲトゲしたものを見つけていきたいし、作っていけたらいいなと思っています。年数が経ってより熟して深みが出た部分と、新たなトゲトゲとの融合を、楽しみにしててください。

[写真4]2012.10.23-308
(初演の舞台写真 撮影:三浦興一)

(2017年6月)
聞き手:佐藤亮太(SPAC制作部)
構 成:布施知範(SPAC制作部)

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SPAC秋→春のシーズン2017-2018 ♯1
『病は気から』
2017年10月7日(土)、8日(日)、14日(土)、15日(日)、21日(土)、22日(日)
潤色・演出:ノゾエ征爾
原作:モリエール (「モリエール全集」臨川書店刊/秋山伸子訳より)
出演:SPAC
静岡芸術劇場
*詳細はコチラ
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