こんにちは。
制作部の丹治 陽(たんじ・はる)と申します。
いま制作担当をしている『授業』について紹介させてください。
実は、西 悟志さんとご一緒させていただくのはこれが2回目です。
2007年の「Shizuoka春の芸術祭」で野外劇場「有度」で上演した『マクベス』に西さんが出演されていて、僕は制作担当でした。
SPACに入って1年が過ぎた頃で、まだまだ日々が新しいことだらけで、しかもちょうど芸術総監督が鈴木忠志さんから宮城聰さんに交代したばかりで、ソワソワしていた頃です。
『マクベス』はあたふたしているうちにあっという間に終わってしまったという感じで、あまり記憶がありません。
ただ、泥だらけの舞台上で、白塗りの身体で、頭と腕と上半身を振り乱していた西さんをよく覚えています。
ギョッとしたし、なにかアブナイものを観た気がしていました。
▲『マクベス』に出演していた西さん
あれから10年以上がたち、西さん演出の『授業』を担当することになりました。
この10年あまりで西さんは芝居をほぼ1本しか作っていませんが、『マクベス』以前の西さんを知っている宮城さんが『授業』の演出に抜擢したというわけです。
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ちょうど1年くらい前に『授業』の準備に着手したころ、
西さんは「ビル建設ではなく 農業をやりたい」と言いました。
本当に農業をやるわけじゃなくて、『授業』をつくるにあたって、農業をやるようにつくりたいという意味合いで。
開墾して、土壌をつくって、種をまいて、水や養分を与えて、芽が出るのを待つ、芽が出てからもこまめに手入れをして、実がなったら収穫・・・。
自然(人間)が相手なのだから、思うようにいかないこともたくさんあります。
西さんが理想とする創作環境がつくれたのかどうか、ちょっと自信がないところではありますが、西さんはたしかに農業をしているように僕には見えます。
稽古場に来て、俳優・スタッフをじっと見つめ、言葉という栄養分を投げかけ続けている。
(西さんは本当によくしゃべる。)
▲ 西 悟志さん
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演劇は、ある決められた時間・場所に人々が集まって成立します。
その決められた最初の時間まで、残り1週間ほどです。(10月3日が公演初日です!)
否が応でも収穫期を迎えなければいけません。
数日前から劇場稽古が始まっています。
舞台美術、衣裳、照明、音響、そして劇場空間という栄養分が加わり、『授業』は急速に育ち始めています。
ここにきて俳優がいかにおもしろいかを日々感じていて、イヨネスコの戯曲(言葉)も西さんの演出(言葉)もすべては俳優を生き生きとさせるための栄養分だったんじゃないかと思えてきます。
最近、高校1年の時に家族で観に行った芝居をよく思い出します。
つかこうへいさんの演出作品でした。
ほとばしる汗、唾、眼光、浮き出た血管・・・この人たち(俳優)はなぜこんなに必死なんだろう?と釘づけになり、俳優の生々しいエネルギーに圧倒されたんです。
それまでなんとなく「演劇はつまらない」と思っていた固定観念が激しく揺さぶられたこの観劇体験が、僕の根っこにはあります。
中高生鑑賞事業で『授業』を観に来てくれる若い人たちにとっても「釘づけ」になる作品だと思います。
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イヨネスコはベケットと並ぶ不条理演劇の代表的作家、とよく説明されます。
なんだか難しそうです。
イヨネスコはあるインタビューでこう答えています。
「自分の演劇はとても単純でわかりやすいし、視覚的で原始的で、子供っぽいものだと考えています。
問題はただ、ある種の理屈っぽい精神の習慣を追放することだけなのです。」
(イヨネスコ著・大久保輝臣訳『ノート・反ノート』より)
そうなんです。『授業』もわかりやすいシンプルな戯曲なんです。
基本的には教授と生徒のかけあいですから。
そして、イヨネスコの描く人物は「性格はなくて、だれとも区別がつかない幾人かの人物」ですので、「俳優が役になる」ということもない。
ただただ俳優の色(魅力)が出てくる戯曲なんだと、俳優を見ていてあらためて気づきました。
貴島豪さん、野口俊丞さん、布施安寿香さん、渡辺敬彦さん、この4人が生き生きと魅せる演劇作品です。
どうぞご期待ください!
▲ 左:貴島豪さん 右:布施安寿香さん
▲ 左:野口俊丞さん
▲ 左:布施安寿香さん 右:渡辺敬彦さん
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SPAC秋→春のシーズン2018-2019 ♯1
授業
2018年10月6日(土)、7日(日)、8日(月・祝)、13日(土)★、
20日(土)、21日(日)、28日(日)
各日14:00開演 ★13日(土)のみ16:00開演
会場:静岡芸術劇場
演出:西 悟志 共同演出:菊川朝子
作:ウジェーヌ・イヨネスコ
翻訳: 安堂信也、木村光一
出演:貴島豪、野口俊丞、布施安寿香、渡辺敬彦
照明デザイン:大迫浩二
美術デザイン:香坂奈奈
衣裳デザイン:駒井友美子
*詳細はコチラ
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