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2021年1月22日

学芸班スタッフの演劇問わず語り~『病は気から』の魅力をどうしても語りたい~

こんにちは、制作部の鈴木達巳です。
SPACには舞台作品の創作や劇場運営に関わるあらゆるマネジメントを担当する制作部という部署があります。その中に「学芸班」というセクションがあり、私はこちらを担当しています。「学芸班」の主な業務としては、中高生向けの鑑賞パンフレット「げきともパンフレット」の執筆、編集などがあります。
今週1月23日(土)より静岡市民文化会館で一般公演を迎える『病は気から』のパンフレットでもいくつかのページを担当しました。
こちらからパンフレットを読むことが出来ますので良ろしければどうぞ。
 
『病は気から』はSPACでも過去に二度上演されている人気作です。ではこの作品の魅力とはなにか?パンフレット作成を通して感じたものを、演目の制作担当者とは違った視点から、というもよりも、もはやこの作品のいちファンとして魅力を紹介させてください。
 

 
魅力その① 戯曲の面白さ
『病は気から』は1673年、およそ350年前にモリエールによって書かれた戯曲です。モリエールは日本で一般的にはあまり知名度が高い人物ではありませんが、フランスでは「イギリスにシェイクスピアあれば、フランスにはモリエールあり」と言われるほどの人気を誇る劇作家です。その魅力は風刺の効いた喜劇で、『病は気から』も人々の愚かさとおかしみに溢れています。
『病は気から』の魅力、それは現代にも通じるところです。登場人物達は皆、極端な人物として描かれていますが、どこか身近にいる人達のようにも思えます。主人公アルガンは、自分を病だと思い込んで医療にすがりますが、なにかを盲目的信じて行動する人は現代でも少なくありません。また娘婿候補のトーマスは挨拶ひとつとっても杓子定規な人物ですが、皆さんの周りにもこういった融通の利かない人っているのではないでしょうか?
このように身近な「あるある」と思える人物達が登場し、クスッと笑えるお話を展開させるのが、モリエール戯曲の魅力の一つではないでしょうか?
 

▲『病は気から』原作者のモリエール
 
魅力その② 演出の凄さ
SPACの『病は気から』の潤色、演出を務めるのがノゾエ征爾さんです。ノゾエさんはこの作品を喜劇として演出する一方、観客の価値観を揺さぶる演出も見られます。
まず舞台装置が「客席」となっている点です。これは観客に大きな鏡を想起させ、あたかも登場人物達は今の私達の姿、ひいては社会の在り方を映しているように思えてきます。
物語は冒頭、モリエール率いる劇団が劇場見学に来るところから始まり、見学中に『病は気から』を演じ始めるという「入れ子構造」をとっています。実際に病を患っていたモリエールが、自分は病気だと思い込む男アルガンを演じるという脚色を加え、物語の途中で何度か、アルガンからモリエールに戻るシーンもあります。このような仕掛けによって、登場人物達が物語の中の住人というものを超えた存在となり、作品も喜劇の枠を超越した深みを感じさせます。
 

 
笑える喜劇ながら、人間の深淵に触れる本作。登場人物や小道具など他にも魅力いっぱいです。是非とも劇場に足をお運びいただき、お楽しみください。
 

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秋→春のシーズン2020-2021 #2
『病は気から』
一般公演
2021年1月23日(土)、24日(日)14:00
会場:静岡市民文化会館 中ホール
潤色・演出:ノゾエ征爾
原作:モリエール(「モリエール全集」臨川書店刊/秋山伸子訳より)
出演:阿部一徳、石井萠水、大高浩一、加藤幸夫、榊原有美、富川一人、本多麻紀、牧山祐大

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