2011年の秋のシーズンでも、鑑賞事業公演では、県内のたくさんの中高生がSPACの舞台を鑑賞にお越しくださいました。
SPACでは、鑑賞事業公演の際、中高生に観賞パンフレットを配布させていただいていますが、
そのパンフレットの一面にいつも掲載させていただいている、 SPAC芸術総監督 宮城聰のメッセージを、このサイトをご覧頂いている皆さまにもご紹介いたします。(※このメッセージが日本経済新聞2011年12月15日発行(朝刊)にも取り上げられました)
_______________________
中高生の皆さんへ
みなさんは、いま自分がどういう時代に生きていると感じていますか?
そう、地域社会が崩壊し、価値観が流動化し、自殺者は増え続け、そして若者は「ひとり遊び」ばかりしていて孤独のなかに閉じこめられている、そういう「精神的危機」の時代に生きている・・・と感じる人が多いかもしれません。
でも演劇をやっている僕から見ると、すこし違って感じます。なぜなら、演劇は何百年間も、孤独にさいなまれる精神や、なにが正しいのかの基準をなくして迷子になっている精神をえがいてきたからです。
つまりどうやら、世界が人間にとって生き易かったことなど一度もなかったらしいのです。
でもそのなかでがむしゃらにあがく人間が、演劇には登場します。がむしゃらにあがく彼らは、しばしば悲しい結末を迎えるし、人間とかこの世というものについてのはっきりとした解答を出してもくれません。ですが、それでも演劇を見るとなんだか励まされる気がします。
どうしてでしょう?
きっとそれは彼らが “「わからない」ことに耐える力” を、すこし観客に手渡してくれるからだと、僕は思っています。
“「わからない」ことに耐える力”。それは“孤独と向き合う力”でもあります。
人間はいまも昔も孤独です。だから少しでも人とつながれるように、一生懸命ことばとからだを研ぎすましてきました。
それが演劇です。
SPAC-静岡県舞台芸術センター芸術総監督 宮城聰
こちらもご覧ください。
私と演劇— 「他者」と出会うこと 宮城 聰