金森穣の新作『ラ・バヤデール』は傑出した作品である。平田オリザに脚本を依頼し、SPACの俳優3名を加えて舞台化しようとしたその方針そのものが傑出していたといっていい。金森とNoismには、舞踊家としてそれだけの自信があったということなのだろうが、結果は予想をはるかに上回るものになった。振付の水準もダンサーの水準もこれまでのそれを大きく超えている。異常な成長である。
特筆すべき点は二つ。それがそのまま最大の見どころになっているのだが、ひとつは、この「劇的舞踊」が、1960年代に登場し、日本と世界の舞台芸術に大きな影響を与えたいわゆる小劇場運動と、80年代以降、コンテンポラリー・ダンスの呼称のもとに展開してきた舞踊運動との、いわば完璧な結合以外の何ものでもないということである。小劇場運動は60年代から70年代を通じて、寺山修司、唐十郎、鈴木忠志といういわゆる御三家によって担われたが―その最大の特徴は歌と踊りと劇の結合である―、長く伏流水となっていたそのエネルギーがコンテンポラリー・ダンスの現場において突如噴出したのだ。金森にしてみれば突如などではないだろうが、小劇場運動とコンテンポラリー・ダンスの結合ということでは、前作『カルメン』を上回っている。 続きを読む »