劇場文化

2018年2月21日

【オセロー ~夢幻の愛~】演劇の地平――世阿弥からの挑戦(竹内晶子)

 「能って何?」――この問に、端的に答えればこうなります。「中世日本に生まれ、現代まで続く歌舞劇である」、と。
 もう少し言葉を尽くすなら、こうも付け加えられるでしょう。「西洋演劇の常識を、平気な顔でくつがえしてしまう演劇形態」、と。
 たとえば、キャラクターの台詞のみからなるもの…という西洋演劇の定義に反して、能は、「とて失せにけり(と言って消えてしまった)」などのナレーションまで舞台で発してしまいます。さらに能では、一人のキャラクターの台詞が、そのキャラクターを演じる役者だけでなく、地謡や、ときには別のキャラクターを演じる役者の口からも発せられます。そもそも地謡という合唱隊自体が、複数のキャラクターの台詞を発するものですし、加えてナレーションまでも担当してしまう。その結果、「誰のセリフなのか特定できない」言葉、「一つの身体に還元できない言葉」が、能においては往々にして現れます。 続きを読む »