『源氏物語』の面白さは、ライトノベルとも近い。四百人を超える登場人物たちは、そろいもそろって、性格が際立っている。つまり、極端なまでに「キャラ立ち」している。中でも、最高にキャラが立っているのが、末摘花である。「赤い鼻」と「貧困」のレッテルは、彼女のキャラを不朽のものとした。
絶世の美貌を誇る光源氏(源氏の君)と、異貌の末摘花(姫)のカップルは、いかにもミスマッチである。しかし、処世術に乏しく、頑固一徹に信念を貫く姫の生き方は、不思議なまでに、多くの女性の心を引きつける。
明治時代の樋口一葉も、その一人である。父親の没後は、半井桃水(なからい・とうすい)というハンサムな小説家への思いを胸に、一葉は貧しさと戦いながら、文学への夢を追った。一葉は、自分自身の生き方を、末摘花と重ね合わせていた。 続きを読む »