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2019年5月29日

「ふじのくに⇄せかい演劇祭2019」後半レポート

早いもので5月も後半。ゴールデンウィークにパフォーミングアーツで賑わった静岡の街にも、日常が戻りました。「ふじのくに⇄せかい演劇祭」後半の4日間を、写真とともに振り返ります!
★前半レポートはこちら
 
5月2日(木・休)

五月晴れで迎えた演劇祭後半は、スコットランドのミュージカル『マイ・レフトライトフット』で幕を開けました。「インクルーシビティ(包括性)」をテーマにした作品ということで、静岡芸術劇場には、筆談に応答できる「コミュニケーションボード」や休憩案内の文字情報パネルを持ち歩くスタッフの姿も。さらに来日したカンパニーのリクエストで、「ジェンダーフリートイレ」の表示や、「カームダウン」ルームも仮設されました。
そして開演!冒頭から、明るくエネルギッシュな歌声が響き、客席からは度々拍手が起きます。
 
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パワフル!そしてブラックユーモアも満載!! [撮影:平尾正志]
 
「コメディであること、笑える要素があることが非常に大事。周りの世界を笑う、それから自分たちを笑うことによって対話が生まれる」。自らも障がいを持ちながら、スコットランドの舞台業界の一線で活躍する演出家、ロバート・ソフトリー・ゲイルさんの言葉通り、障がい者に対する固定観念や、障がいそのものをも明るく笑い飛ばす一級のミュージカルは、観客に鮮烈な印象を残しました。
 
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「障がい者を演じる」、難しいテーマにも関わらず会場は始終笑いに包まれた。[撮影:平尾正志]
 
上演に先立ち、午前中には「クリエイティブ・アクセシビリティについて考える」というテーマのシンポジウムが行われました。演出家のロバート・ソフトリー・ゲイルさん、浜松市で活動するNPO法人クリエイティブサポート・レッツの久保田翠さんにお話いただきました。(トーク内容は、携帯アプリを使って文字情報としても提供されました)
 
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「障がいのある人たちの物語を舞台で具体化すると、彼らの姿が見えるようになる。それを観てもらうことで話ができるようになり、対話が生まれる」と語るゲイルさん。 [撮影:猪熊康夫]
 
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「芸術には、様々な人たちを包括していく力がある」と話す久保田さん。 [撮影:猪熊康夫]
 
劇場、観客、そしてアート、表現。自由だと思いがちな場にも、健常者が作った様々な「フォーマット」や「ルール」、そして「壁」「枠」が存在する。障がいを持ちながら舞台芸術の一線で創作を行うゲイルさんは、その枠の中から「壁」を壊し、今や目標とされる存在に。対して「表現未満、」などのプロジェクトで、障がいをもつ方々の自由な表現活動を支える久保田さんは、既存の「枠」を常に問い直すことで芸術の可能性を拓く。障がいの有無に関わらず、誰もが芸術ひいては社会にアクセスしやすくなるためのヒントを沢山いただいたトークでした。
★より詳しいレポートはこちらから。
 
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[撮影:猪熊康夫]
 
2日には、いよいよ駿府城公園での『マダム・ボルジア』も開幕!
夕暮れ時、紅葉山庭園前の特設会場では、「青年貴族」と呼ばれる俳優たちによる観客への口上が始まり、広場には笛や太鼓の音が響きます。
 
11_Inokuma_0929[撮影:猪熊康夫]
 
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観客は青年貴族に率いられ、“領民”となって客席へ。[撮影:日置真光]
 
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日が暮れ始める広場で、前半の舞台。 [撮影:猪熊康夫]
 
前半の舞台は、「水の京(みやこ)」(原作ではヴェネツィア)。楽師を乗せた小舟・・・ならぬトラック(!)が場内に到着し、戦国風の衣裳を着た青年貴族たちが、悪名高きルクレツィア・ボルジアのウワサ話を寸劇で披露します。仮面をつけたルクレツィアが現れ、生き別れた息子ゼンナロと再会するも、ゼンナロの友人たちに侮辱を受け失神・・・そしてトラックで退場〜(♪)突飛な演出に、会場も沸きます。
と、ここで観客は後半の会場、「高嶺の国」へと再び移動します。
 
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色鮮やかな屏風絵が並ぶ後半の舞台。[撮影:平尾正志]
 
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[撮影:日置真光]

 
後半は、毒を飲まされたゼンナロと、母だと打ち明けられぬまま息子を救いたい一心のルクレツィアの息もつかせぬ展開。緊迫した長ゼリフの応酬に、夜間の冷え込みにもかかわらず集中した空気が立ちこめ、終演後は客席から温かい拍手が送られました。
「劇場の境界線をできるだけなくしたい」、宮城の想いは、現実の世界と作品世界とを緩やかにつなぐ〈広場を取り囲む低い客席〉や〈役者たちによる誘導〉などで形となり、また、役者、技術スタッフ、制作スタッフそしてボランティアクルーが一丸となって「観客500人の移動」が実現しました。来場いただいたお客様によってその「場」が完成した感慨はひとしおでした。
 
そして、今年の演劇祭の夜はここで終わらない・・・
「しりあがり寿presentsずらナイト」が、ガーデンカフェ ライフタイムでスタート!
「“ずら”はカツラのヅラじゃないんですよ〜、東海道ずらベルト、静岡の方は方言で♪」、しりあがりさんのゆる〜いトークで始まったトーク&ライヴイベントは連日大盛況!落語女子♡や音楽ライヴを楽しみに来られる方も、フェスティバルの夜を満喫しました。
 
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千穐楽を迎えたばかりの宮城聰が登場し、建畠晢さん・しりあがり寿さんとで『マダム・ボルジア』を批評する夜も。
 
5月3日(金・祝)〜6日(月・休)

3日から、静岡市街地で「ストレンジシード静岡」が始まりました!静岡市役所周辺や商店街など、街のあちこちでストレンジシードの“黄色”が目に留まります。
 
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大階段ステージにてFUKAIPRODUCE羽衣 [撮影:平尾正志]
 
今年は全国、そして海外からも注目のアーティストたちが静岡に大集結!そして開催場所のバリエーションも豊か!!
 
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駐輪場を舞台にした作品を、実際に駐輪場で上演した「ロロ」 at駐輪場ステージ(静岡市文化会館前)[撮影:平尾正志]
 
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市役所ドームをバックに「劇団短距離男道ミサイル」 at水上鏡池ステージ(静岡市役所 敷地内広場)[撮影:平尾正志]
 
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1934年に建てられたレトロなエントランスで「ホナガヨウコ企画」 atレトロステージ(静岡市役所 本館)[撮影:猪熊康夫]
 
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「Magik Fabrik」(フランス)の無言劇に観客も飛び入り。 atレトロステージ(静岡市役所 本館)[撮影:猪熊康夫]
 
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愛情表現とケンカは表裏一体?! スペインから来日「HURyCAN」 at階段ステージ(静岡市役所 敷地内)[撮影:猪熊康夫]
 
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芝生の上に言葉と動きが転げ回る「ままごと×康本雅子」 at芝生ステージ(駿府城公園内)[撮影:平尾正志]
 
静岡市民ギャラリーの一室を使った「範宙遊泳」は、“子どもも見られる作品”ということで最前列に子ども席を設け、大人も子どもも独特の劇世界に引き込みます。

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山梨から静岡にやってきた男と人魚♡ 「範宙遊泳」 atギャラリーステージ(静岡市民ギャラリー)[撮影:平尾正志]
 
コンテンポラリーダンスの熱いパフォーマンスからも、目が離せません!
先鋭的、同時代的な表現に、老若男女問わず誰もが触れることができる、しかも無料で!この場所から新たな観客が生まれる、そんな期待もふくらみました。

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ドラムとの熱いセッションを繰り広げた「山田うん」 atレトロステージ(静岡市役所 本館)[撮影:猪熊康夫]
 
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限界まで踊るダンサー(大熊聡美)、大通りの向こうにも立ち止まって観る人の姿が。「黒田育世(BATIK)」 at階段ステージ(静岡市役所 敷地内)[撮影:猪熊康夫]
 
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目抜き通りの交差点をジャックする「川村美紀子×米澤一平」 at 十字路ステージ(札の辻)[撮影:猪熊康夫]
 
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一般公募の参加者と創作、「いいむろなおきと静岡ストレンジシーズ」at芝生ステージ(駿府城公園内)[撮影:平尾正志]
 
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七間町通りを闊歩する「壱劇屋」と観客たち at十字路ステージ(札の辻)[撮影:平尾正志]

静岡では、大道芸ワールドカップが定着していることもあって、観客の受け入れ方がとても柔軟で懐が深いと感じました。参加したアーティスト同士もジャンルに関係なく交流し、フェスティバルならではの時間と空間が街中にあふれていました。
 
5月4日(土・祝)

街がストレンジシードで盛り上がる中、演劇祭の恒例となった「広場トーク」も行われました。この日は昼過ぎから急に黒雲が・・・、小雨の中でトークはスタート!しかしこの雨が、登壇者と聴衆の距離をぐっと縮めてくれました。
 
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左から:司会の中井美穂さん、劇作家の石神夏樹さん、静岡県文化プログラムのコーディネーターなど務める鈴木一郎太さん、作曲家の原田敬子さん、SPAC芸術総監督の宮城聰。[撮影:猪熊康夫]
 
「アートは地域に何をもたらすか?」というテーマで、ゲストと宮城がそれぞれのフィールドでの体験を紹介。
インドネシアで現地の人々と演劇作品を創った石神さんは、迷惑をかけること、損をすることを恐れない、地域に入って生まれる「清算できない関係」の魅力を。鈴木さんは、生活者がそこにある状況をなんとかしようと「何かしている」、その姿自体がアートワークに近いという感覚から様々なプロジェクトを立ち上げていることを語りました。

42_Inokuma_1033「空気を読まずに面白いと思ったことを作品にする。体当たりで何かが起きることが多い」と語る石神さん。[撮影:猪熊康夫]
 
43_Inokuma_1038「もともと演劇をやってないんです。演劇祭で創った作品では、観る側が演劇だと勝手に解釈してくれて・・・」と自然体の鈴木さん。[撮影:猪熊康夫]
 
また、作曲家としての活動と並行し、長年、奄美郡歌の調査研究を行う原田さんは、「生活を伴う言語と、それに即した発声法」に魅せられているという。「地域にいなかった人(アーティスト)が入ってくることで、地域の人が気付く」こともあり、アーティストが地域から受け取りお互いに発見し合うというお話に、他のパネリストも共感していました。
静岡での活動が13年目を迎える宮城は、「ここ5年、自分の作品が変わってきた」こと、そして静岡で観客を想像しながら創ることで「ちょっとだけ普遍性が増したのでは」という実感を語りました。
 
44_Inokuma_1027「最初は不審者(笑)。でも地域のことを、地元の人以上に知っている事があると、入っていける」と話す原田さん。[撮影:猪熊康夫]
 
5月6日(月・休)

迎えた演劇祭最終日。5日から静岡芸術劇場で上演され、演劇祭のラストを飾ったのは、ピッポ・デルボーノ演出の『歓喜の詩(うた)』
「この作品は、ボボーの死から蘇ります」、こんな言葉から作品は始まりました。
 
51_MG_1591 2[カンパニー提供写真 / 撮影:Luca Del Pia]
 
52_MG_0408[カンパニー提供写真 / 撮影:Luca Del Pia]
 
長年、世界中を旅しながら活動を共にし、集大成と言うべき本作にも出演していたボボーが今年2月に亡くなり、失意の只中にあるデルボーノと仲間たち。
ボボーが座るはずの椅子に、彼はいない。「喜びはどこに?」、舞台上にはボボーの「不在」が在り、彼らの苦しみと愛情が痛いほどに伝わってきます。しかしそこにはまた、様々な境遇の中で傷ついた心の再生、そして全身で今を肯定するパフォーマーたちの存在があり、詩や戯曲などから引用されたデルボーノの言葉の数々が。最後に花々が舞台を埋め尽くし、私たちもいつの間にか生きる希望の只中にいる、そんな舞台でした。

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[カンパニー提供写真 / 撮影:Luca Del Pia]
 
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[カンパニー提供写真 / 撮影:Luca Del Pia]
 
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温かい拍手がいつまでも続いたカーテンコール。[撮影:平尾正志]
 
終演後に行われたアーティスト・トークでは、宮城が「同い年の大切な友人ピッポ」への言葉を贈り、トーク後は固い握手が交わされました。
 
56_HO063375 [撮影:平尾正志]
 
57_P2110896 [撮影:平尾正志]
 
開催20回目という節目の演劇祭。劇場で観る作品の幅広さ、奥深さ、そして街へ飛び出したパフォーミングアーツの可能性、広がりも感じていただけたのではないでしょうか。初めての10連休、走り抜けた!という感覚とともに、20年という時間の中で、劇団SPACが作る演劇祭がお客様とともに歩いてきたのだな、という感慨も。
また来年、どんな作品との出会いがあるのか、私たち自身も楽しみにしています。
SPACの今後の活動にも、ご注目いただければ幸いです。

(テキスト:制作部・坂本彩子)

2019年5月17日

「グッドデザイン賞とロングライフデザイン」イベントレポート

去る4月21日、D&DEPARTMENTで開催された「d SCHOOL」出張版トークツアーのゲストとして、SPAC芸術局長の成島洋子が登壇しました。
「グッドデザイン賞とロングライフデザイン」をツアーテーマに、日本デザイン振興会の矢島進二さんとD&DEPARTMENTのナガオカケンメイさんが、「良いデザイン」「ながく続くデザイン」とは何かをトーク。
ツアー先の土地のグッドデザイン受賞者をゲストに、ということでお声がけいただきました。
少し日が経ってしまいましたが、今回のブログではこちらのトークイベントで語られた内容を抜粋してご紹介します!
 
SPACは2018年度グッドデザイン賞(主催:公益財団法人日本デザイン振興会)を受賞しました。
舞台芸術作品の創造・上演とともに、優れた舞台芸術の紹介や舞台芸術家の育成を事業目的として活動し、静岡から世界レベルの演劇を発信して国際的な文化交流を図っているという、その活動が一つのデザインとして高く評価されました。https://www.g-mark.org/award/describe/48284
 
D&DEPARTMENT SHIZUOKA by TAITA
47都道府県に1か所ずつ、現地のパートナーと共につくる拠点「D&DEPARTMENT」の2店舗目としてオープン。
過去には、2014年に宮城聰がトークイベントに登壇したり。(関連ブログ:【『グスコーブドリの伝記』の魅力 #10】 宮城聰が発見したこと
2017年に発刊されたガイドブック「d design travel 静岡」ではSIGHTおよびPEOPLEのページでSPACが取り上げられています。
今年の演劇祭では開催前~期間中にかけて、店舗内に20年間の歩みをたどることができる資料などを特別に展示。さらに、「ご近所ぐるぐるマップ×ふじのくに⇄せかい演劇祭」も作ってくださり、演劇祭を応援してくださいました!

 
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▲「ご近所ぐるぐるマップ」お客様に好評でした!
 
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▲左からSPAC芸術局長・成島洋子、日本デザイン振興会・矢島進二さん、D&DEPARTMENT・ナガオカケンメイさん
 
矢島 まずは、受賞したときの思いを聞かせてください。
成島 ほっとしました。そもそも応募のきっかけは、審査員からの推薦(*)だったんです。それこそグッドデザイン賞といえばプロダクトデザインの賞というイメージだったので、戸惑いながらでした。すべてが暗中模索というか、これで果たしていいんだろうか?と思いながらやっていました。ですので受賞自体はほっとしたという感じでした。
(*)「グッドデザイン賞」にふさわしいと思われる企業・団体・取り組みを審査員から推薦。推薦を受けた場合には一次審査をパスし二次審査から参加できる。
 

▲トークイベント参加の皆様にご覧いただいたSPAC紹介映像
 
ナガオカ 静岡の人はSPACがあるから、どこの県にもあると思うかもしれないけど、日本でも珍しいことですよね。
成島 劇場に来ていただいて演劇を観て楽しんでいただくということはもちろんですが、それ以外にもいろんなレベルで、地域のなかに劇場があり劇団がある・アーティストが住んでいるということが、地域にとって意味がある。このことを実現していけたらいいなと思っています。
矢島 サッカーとかラグビーとかのチームが地域に根付いているように、県が劇団をつくって演劇の魅力を広めていきたいということですよね。
成島 そうですね。質の高いものを作り続けながら裾野は広く、を心がけています。劇場に来ない人も何らかの形でSPACに関わる・アクセスするチャンスが出てくるように。例えばお子さんが学校の鑑賞事業でSPACを観に行く、街中でのパフォーマンスからSPACを知るということであったり。20年常に万全ではなく、フロンティアという感じでやっています。
 
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成島 ありがたいなと思ったのは、SPACは演劇公演やフェスティバルなど、イベント・事業ベースで捉えられがちなんですけれども、「グッドデザイン賞」というのをいただくことでSPACは”在り方そのもの”なんだ、ということを応援していただいたような感じがあります。
矢島 劇場のデザインでもなく、舞台の一つの作品でもなく、長きにわたる活動の実績と県民との関わりそのもの。さらに劇団だけではなく劇場を運営していく体制・仕組みを持っている、ということが評価されたのだと思います。「グッドデザイン賞」を受賞して変化はありましたか?
成島 静岡にはたくさん大企業があり、例年グッドデザイン賞をとっている企業があるなかで、SPACが受賞するということは自分たちも驚きでしたし、外部の人にも知っていただける機会になったのではないかと思います。繰り返しになりますが、デザインといっていいような活動・在り方そのものなんだということが伝えられたのではないかと。
ナガオカ 20年もやっていればお子さんだった人が劇場に来たりだとか、ありそうですよね。
成島 小学校1年生のときから知っている色んな人材育成事業に参加していた子が今SPACの舞台に出ていたり、世代をまたぎながら来てくださる方々がいたりしますね。つい先日、静岡芸術劇場開館20周年ということで記念式典も行いました。
(関連リンク:朝日新聞(2019.4.19) 静岡芸術劇場20周年 宮城聰さんに仏勲章

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ナガオカ 「ふじのくに⇄せかい演劇祭」についても教えてください。
成島 普段は劇団が作った作品を年間通して劇場で上演しています。「秋→春のシーズン」では「もし演劇の教科書があったら」という観点で宮城が作品を選び上演しているのですが、ゴールデンウィークの10日間だけはエッジのきいた作品を招聘・上演しています。
この期間海外から100名くらいのアーティストが静岡に来て、舞台芸術公園だったり静岡の街中に滞在します。今の時代、映像でいろんな国の情報が入ってきますが、生身の人間がやっていることを見る、というのはなかなかありません。たとえば今までだとシリアのような紛争地域で起きていることを作品にしていたり、自ら障がいがありながらインクルーシビティを社会の中に開いていこうという作品を作っていたり。
異質なものに出会えるのが「ふじのくに⇄せかい演劇祭」です。人間ってこんなに多様なんだということが海外のカンパニーに会うと本当に実感します。
矢島 いまのお話を聞いて「演劇は世界を見る窓」というキャッチフレーズ、そしてそれを長く実践されてきているんだなということがよくわかりました。
 
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成島登壇の第二部だけでなく、全編通して「デザイン」についてじっくり考えることのできるイベントでした。
ご来場いただきました皆様ありがとうございました!このあとも矢島さん・ナガオカさんによるトークツアーは、5月18日(土)東京、26日(日)京都と続きます。詳しくはこちらをご覧ください。
SPACは「ふじのくに⇄せかい演劇祭」が終わって間もないですが、6月には『イナバとナバホの白兎』の上演・そして海外ツアーが控えています!夏には人材育成事業、それが終わると「秋→春のシーズン」5作品です。ぜひ演劇祭だけでなく、年間通してSPACの活動に注目していただければ幸いです。静岡でお待ちしています!
 
<関連リンク>
2019年度上演ラインナップ
ステージナタリー特集記事 「ふじのくに⇄せかい演劇祭」から「メナム河の日本人まで」宮城聰×今井朋彦対談
チケット好評販売中!6月8日・9日『イナバとナバホの白兎』
人材育成事業 参加者募集がはじまっています!
【参加者大募集!】SPACシアタースクール2019『オフェリアと影の一座』
「SPAC-ENFANTS-PLUS=スパカンファン-プラス」新メンバー募集のお知らせ

2019年5月4日

「ふじのくに⇄せかい演劇祭2019」前半レポート

GWは早くも折り返し、「ふじのくに⇄せかい演劇祭」は今年も連日賑わっています!開催20回目を迎えた演劇祭前半4作品のチケットは、開幕前に全てソールドアウト。「平成」から「令和」への改元で巷が湧く中、「GWは静岡へ!」の合言葉が浸透してきたことを実感しながら迎えた10連休。4月27~29日、前半の3日間を写真とともにレポートします♪
 
4月27日(土)

『Scala-夢幻階段』開幕初日は、土砂降りの雨とともに始まりました。強まる雨にも関わらず、静岡芸術劇場には続々とお客様が来場され、ロビーはこれから始まる祭典への期待と高揚感に包まれます。
 

SPAC芸術総監督の宮城聰が、劇場入り口でお出迎え。[撮影:平尾正志]
 
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2Fロビーでは、これまで開催した20回のポスター展も。[撮影:平尾正志]
 
開幕作品の『Scala-夢幻階段』は、世界的に注目されているヨアン・ブルジョワ氏の日本初上演作ということで、静岡はもちろん、首都圏をはじめ遠方からも多くのお客様が。劇場に一歩足を踏み入れると、舞台には階段がそびえ立つグレートーンの大きなセットが目に飛び込みます。
 
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[カンパニー提供写真 / 撮影:Géraldine Aresteanu]
 
舞台に男が現れ、不意に壁の額縁が落ち・・・。日常的な動作が行きつ戻りつし、時間軸が次第に歪んでいくかのよう。全てが目の前で起きていることだとわかりながらも、観客は非現実的な浮遊感に包まれます。ブルジョワ独特のセンスとユーモアに、笑いが起こるシーンもしばしば。人間離れした動きの連鎖が生む濃密な60分、観客は舞台に釘付けになりました。
 
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[カンパニー提供写真 / 撮影:Géraldine Aresteanu]
 
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トランポリンを使ったアクロバットに、思わず拍手が起こる。[カンパニー提供写真 / 撮影:Géraldine Aresteanu]
 
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カーテンコールには熱い拍手が送られた。[撮影:平尾正志]
 
初日の舞台芸術公園では、「開幕式」も行われました。昼から降り続いた雨が奇跡的に止み、新緑が目に鮮やかな野外劇場前広場に、大勢のお客様が集います。
SPAC芸術総監督宮城聰の挨拶、そして難波喬司静岡県副知事のご祝辞に続き、駿府城公園で上演される『マダム・ボルジア』のSPAC俳優たちによる「開幕パフォーマンス」が、賑々しく行われました。
 
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「開幕パフォーマンス」の笛や太鼓の音色が広場に響く。[撮影:猪熊康夫]
 
開幕式の後は、いよいよ宮城聰が演出するSPAC作品、『ふたりの女 平成版 ふたりの面妖があなたに絡む』を野外劇場「有度」で上演。
 
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[撮影:猪熊康夫]
 
廃材の柱を組み上げた舞台美術が、今回も見事に再現されています。2015年と同じキャストで、それぞれに4年という月日を重ねた俳優たちが、唐十郎が紡ぐ珠玉のセリフ群を一層丁寧に観客に渡しているように感じました。宮城のサプライズ出演のワンシーンも健在!客席が大いに湧きます。俳優たちの吐く息が白くなるほどの冷え込みにもかかわらず、満席の会場は集中した空気に包まれました。
 
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[撮影:2枚目/平尾正志、その他/猪熊康夫]
 
終演後の冷えきった体には、カチカチ山の「フェスティバルbar」が待っています。今年は静岡おでんも登場!地元のおいしいものをほおばりながら、俳優たちとの語らいにも花が咲きました♪
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[撮影:猪熊康夫]
 
4月28日(日)

2日目の朝には、『Scala』の出演者によるワークショップを開催。講師を務めたのは、ブレイクダンスやコンテンポラリーダンスをバックグラウンドに持つメヘディ・バキさん、スタント俳優出身でアクロバットを得意とするルカ・ストゥルナさん。そして、『Scala』のアーティスティック・アシスタントとして来日した津川友利江さんも、通訳兼アシスタントとして30名の参加者とともに作品の“秘密”の一端に触れました。
 
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ウォーミングアップもユニーク。相手との距離を感じながら歩く参加者とメヘディさん。
 
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1人の体を数人で持ち上げる。体を委ね、浮遊しているような感覚を体験。
 
27日(土)・28日(日)、2日のみの貴重な上映となったのが、グランシップ映像ホールで上映されたドキュメンタリー映画『コンゴ裁判 〜演劇だから語り得た真実〜』。作品は、コンゴで起きている虐殺や環境汚染に関する「模擬裁判」を記録したドキュメンタリー映画。国際企業によるレアメタル争奪戦により、地元住民の土地は奪われ、河川が汚染され、民族紛争や貧困による様々な犯罪の連鎖が起きている。そして加害の一端に、携帯電話などの電子機器を消費する私たちの生活がある、という極めて重い事実が観客に突きつけられました。そしてフィクションである演劇が、実社会における真実を炙りだす役割を持ち得ることも実感しました。
 
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[カンパニー提供写真]
 
4月29日(月・祝)

『Scala』は、最終日も満員の客席から惜しみない拍手が送られ、終演後には出演者全員によるアーティスト・トークが開催されました。
 
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[撮影:平尾正志]
 
お客様には、アーティストに聞いてみたいことを「質問カード」に書いていただき、宮城がその質問をアーティストに投げかけていきます。驚くほどたくさんのカードが寄せられた中で、7人のバックグラウンドに関する質問に、サーカス、アクロバット、スタント、ブレイクダンス、演劇、さらにクライミングやボクシングなど、パフォーマーたちが自身の表現の源となっているフィールドを紹介。様々なテクニックとアイディアがこの作品に結集していることが改めて知れました。
 
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「私たちは異なる道をたどってここに集まった」、そう話す出演者たち。[撮影:平尾正志]
 
演劇祭前半の最後を飾ったのは、27日から舞台芸術公園の屋内ホール「楕円堂」で3公演を行なった韓国の『メディアともう一人のわたし』
 
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水を湛えたセットの両側で演奏する俳優たち。[撮影:猪熊康夫]
 
前半、メディアが後に夫となるイアソンたちと遊ぶ幼少時代は、どこまでも無邪気でコミカル!しかし幸福な時間も束の間、ストーリーの大胆な省略と飛躍が、裏切った夫への復讐に駆られるメディアの感情を加速させていきます。嫉妬に狂うメディアと、子どもたちへの情愛に苦しむもう一人のメディア。二人の俳優の感情が頂点に達し復讐が成し遂げられた時、世にも恐ろしい場面にも関わらず涙する観客もちらほら。日常では経験しないような激情に引き込まれ、観る者の心もまさに“引き裂かれる”ようでした。韓国演劇の底力を感じる舞台で、前半戦が終了しました。
 
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楕円堂の扉を開け放ったラスト、赤いセットに新緑が映える。[撮影:猪熊康夫]
 
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演出家のイム・ヒョンテク氏や韓国チームと。お疲れ様でした![撮影:平尾正志]
 
演劇祭は早くも後半戦に突入!3日からはいよいよ「ストレジシード」も始まり、ジャンルはさらに広がります。まだ演劇祭のチケットも好評発売中!残りの日程もどうぞお見逃しなく。

(テキスト:制作・坂本彩子)

★後半レポートはこちら