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2019年5月17日

「グッドデザイン賞とロングライフデザイン」イベントレポート

去る4月21日、D&DEPARTMENTで開催された「d SCHOOL」出張版トークツアーのゲストとして、SPAC芸術局長の成島洋子が登壇しました。
「グッドデザイン賞とロングライフデザイン」をツアーテーマに、日本デザイン振興会の矢島進二さんとD&DEPARTMENTのナガオカケンメイさんが、「良いデザイン」「ながく続くデザイン」とは何かをトーク。
ツアー先の土地のグッドデザイン受賞者をゲストに、ということでお声がけいただきました。
少し日が経ってしまいましたが、今回のブログではこちらのトークイベントで語られた内容を抜粋してご紹介します!
 
SPACは2018年度グッドデザイン賞(主催:公益財団法人日本デザイン振興会)を受賞しました。
舞台芸術作品の創造・上演とともに、優れた舞台芸術の紹介や舞台芸術家の育成を事業目的として活動し、静岡から世界レベルの演劇を発信して国際的な文化交流を図っているという、その活動が一つのデザインとして高く評価されました。https://www.g-mark.org/award/describe/48284
 
D&DEPARTMENT SHIZUOKA by TAITA
47都道府県に1か所ずつ、現地のパートナーと共につくる拠点「D&DEPARTMENT」の2店舗目としてオープン。
過去には、2014年に宮城聰がトークイベントに登壇したり。(関連ブログ:【『グスコーブドリの伝記』の魅力 #10】 宮城聰が発見したこと
2017年に発刊されたガイドブック「d design travel 静岡」ではSIGHTおよびPEOPLEのページでSPACが取り上げられています。
今年の演劇祭では開催前~期間中にかけて、店舗内に20年間の歩みをたどることができる資料などを特別に展示。さらに、「ご近所ぐるぐるマップ×ふじのくに⇄せかい演劇祭」も作ってくださり、演劇祭を応援してくださいました!

 
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▲「ご近所ぐるぐるマップ」お客様に好評でした!
 
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▲左からSPAC芸術局長・成島洋子、日本デザイン振興会・矢島進二さん、D&DEPARTMENT・ナガオカケンメイさん
 
矢島 まずは、受賞したときの思いを聞かせてください。
成島 ほっとしました。そもそも応募のきっかけは、審査員からの推薦(*)だったんです。それこそグッドデザイン賞といえばプロダクトデザインの賞というイメージだったので、戸惑いながらでした。すべてが暗中模索というか、これで果たしていいんだろうか?と思いながらやっていました。ですので受賞自体はほっとしたという感じでした。
(*)「グッドデザイン賞」にふさわしいと思われる企業・団体・取り組みを審査員から推薦。推薦を受けた場合には一次審査をパスし二次審査から参加できる。
 

▲トークイベント参加の皆様にご覧いただいたSPAC紹介映像
 
ナガオカ 静岡の人はSPACがあるから、どこの県にもあると思うかもしれないけど、日本でも珍しいことですよね。
成島 劇場に来ていただいて演劇を観て楽しんでいただくということはもちろんですが、それ以外にもいろんなレベルで、地域のなかに劇場があり劇団がある・アーティストが住んでいるということが、地域にとって意味がある。このことを実現していけたらいいなと思っています。
矢島 サッカーとかラグビーとかのチームが地域に根付いているように、県が劇団をつくって演劇の魅力を広めていきたいということですよね。
成島 そうですね。質の高いものを作り続けながら裾野は広く、を心がけています。劇場に来ない人も何らかの形でSPACに関わる・アクセスするチャンスが出てくるように。例えばお子さんが学校の鑑賞事業でSPACを観に行く、街中でのパフォーマンスからSPACを知るということであったり。20年常に万全ではなく、フロンティアという感じでやっています。
 
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成島 ありがたいなと思ったのは、SPACは演劇公演やフェスティバルなど、イベント・事業ベースで捉えられがちなんですけれども、「グッドデザイン賞」というのをいただくことでSPACは”在り方そのもの”なんだ、ということを応援していただいたような感じがあります。
矢島 劇場のデザインでもなく、舞台の一つの作品でもなく、長きにわたる活動の実績と県民との関わりそのもの。さらに劇団だけではなく劇場を運営していく体制・仕組みを持っている、ということが評価されたのだと思います。「グッドデザイン賞」を受賞して変化はありましたか?
成島 静岡にはたくさん大企業があり、例年グッドデザイン賞をとっている企業があるなかで、SPACが受賞するということは自分たちも驚きでしたし、外部の人にも知っていただける機会になったのではないかと思います。繰り返しになりますが、デザインといっていいような活動・在り方そのものなんだということが伝えられたのではないかと。
ナガオカ 20年もやっていればお子さんだった人が劇場に来たりだとか、ありそうですよね。
成島 小学校1年生のときから知っている色んな人材育成事業に参加していた子が今SPACの舞台に出ていたり、世代をまたぎながら来てくださる方々がいたりしますね。つい先日、静岡芸術劇場開館20周年ということで記念式典も行いました。
(関連リンク:朝日新聞(2019.4.19) 静岡芸術劇場20周年 宮城聰さんに仏勲章

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ナガオカ 「ふじのくに⇄せかい演劇祭」についても教えてください。
成島 普段は劇団が作った作品を年間通して劇場で上演しています。「秋→春のシーズン」では「もし演劇の教科書があったら」という観点で宮城が作品を選び上演しているのですが、ゴールデンウィークの10日間だけはエッジのきいた作品を招聘・上演しています。
この期間海外から100名くらいのアーティストが静岡に来て、舞台芸術公園だったり静岡の街中に滞在します。今の時代、映像でいろんな国の情報が入ってきますが、生身の人間がやっていることを見る、というのはなかなかありません。たとえば今までだとシリアのような紛争地域で起きていることを作品にしていたり、自ら障がいがありながらインクルーシビティを社会の中に開いていこうという作品を作っていたり。
異質なものに出会えるのが「ふじのくに⇄せかい演劇祭」です。人間ってこんなに多様なんだということが海外のカンパニーに会うと本当に実感します。
矢島 いまのお話を聞いて「演劇は世界を見る窓」というキャッチフレーズ、そしてそれを長く実践されてきているんだなということがよくわかりました。
 
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成島登壇の第二部だけでなく、全編通して「デザイン」についてじっくり考えることのできるイベントでした。
ご来場いただきました皆様ありがとうございました!このあとも矢島さん・ナガオカさんによるトークツアーは、5月18日(土)東京、26日(日)京都と続きます。詳しくはこちらをご覧ください。
SPACは「ふじのくに⇄せかい演劇祭」が終わって間もないですが、6月には『イナバとナバホの白兎』の上演・そして海外ツアーが控えています!夏には人材育成事業、それが終わると「秋→春のシーズン」5作品です。ぜひ演劇祭だけでなく、年間通してSPACの活動に注目していただければ幸いです。静岡でお待ちしています!
 
<関連リンク>
2019年度上演ラインナップ
ステージナタリー特集記事 「ふじのくに⇄せかい演劇祭」から「メナム河の日本人まで」宮城聰×今井朋彦対談
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