2018年12月16日

<『顕れ』#007> 静岡県立大学図書館で特別展示開催中

Filed under: 『顕れ』2018

いよいよ『顕れ ~女神イニイエの涙~』開幕まで1ヶ月を切りました!
静岡県立大学図書館では、夏にムセイオン企画として宮城が公開授業を行った縁もあり、秋→春のシーズンを通して上演作品のポスターと関連書籍の展示を行っています。
◆関連リンク:県大での公開授業レポート

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『顕れ』(あらわ・れ)はカメルーン出身・フランス在住の女性作家レオノーラ・ミアノさんによって書かれた、奴隷貿易を主題とする戯曲です。
作品にまつわる書籍・かつ間口が広がるような本は…と悩み、今回は国際関係学部の松浦直毅先生に選書コーナーのプロデュースをお願いすることにしました。
松浦先生は快く引き受けてくださり、4つのカテゴリーに分けた計16冊を選んでくださいました!
書籍だけでなく、先生が実際に現地で手に入れた楽器などの関連グッズも展示しています。
静岡県立大学図書館へは学生以外も入館できますので、ぜひみなさん足をお運びください。

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打ち合わせを重ねるなかで、研究に関してたくさん興味深い話を聞くことができました。
担当制作の心にだけ留めるのはもったいない!と思い、さらにブログ記事執筆もお願いしました。ぜひ続けてお読みください。


 

『顕れ』上演によせて
松浦直毅(静岡県立大学国際関係学部)

 
静岡県立大学の松浦直毅と申します。アフリカの熱帯林地域で人類学の研究をしています。芸術全般に対して疎く、とりわけ演劇や舞台といったものには縁遠い人生を送ってきた私ですが、せっかくの機会なので、アフリカでの現地生活の経験のなかから、『顕れ』の世界へと通じる(かもしれない)お話をしたいと思います。『顕れ』の背景に広がるアフリカ文化の一端を知ることで、鑑賞をよりいっそう楽しんでいただければ幸いです。

ガボンの伝統儀礼ブウィティ
いまからご紹介するのは、私が長年にわたって調査をしてきたガボンという国のとある村でおこなわれている、現地の言葉で「ブウィティ」とよばれる儀礼のお話です。ガボンは、アフリカの中部、大西洋岸の赤道直下にある国で、国土の大半が森林におおわれ、数多くの野生動物がすんでいる自然豊かな国です。私はこの国で、森の資源に強く依存して生活する狩猟採集民の人びとについて、かれらの村に住みこんでの調査を2002年からつづけています。これまでに十数回にわたって村を訪れており、あわせて2年半ほど村で生活を送ってきたことになります。ブウィティは、宗教的な性格をもったいわゆる伝統儀礼で、儀礼結社の成員になるためにおこなわれる「成人儀礼」、人が亡くなったときや過去に亡くなった人を弔うための「葬儀」、病気の治療や問題解決のための「治療儀礼」など、いくつかの種類の儀礼をふくんでいます。ブウィティは、地域をあげておこなう重要な社会的行事であり、人びとの生活の中でも精神世界の中でも、なくてはならない大切な位置を占めています。

写真1
▲調査村の風景

儀礼への参加を体験する
村で長く暮らし、村の人たちがそれなりに私の「立ち位置」を認めてくれるようになると、私もブウィティの参加者の末席にくわえてもらえるようになります。あるとき村の人たちが、「君も一緒に参加するんだよ」と言って連れて行ってくれたのが、となりの村でおこなわれた、過去に亡くなった人物を弔うブウィティでした。
村に夜のとばりがおりるころ、木と葉で建てられた集会所に人びとが三々五々集まってきます。中ではたき火があかあかと燃えさかっており、それを囲んで座っている人びとが、手をたたき、竹を打ち鳴らし、太鼓やマラカス状の楽器の音を響かせています。その場をとりしきる男が口火をきって歌いはじめると、大声の合唱がはじまります。男も女も子どもも、その場にいる全員が声をはりあげて歌います。先導役の男があおりたてるように歌うと、それに呼応して合唱の声はどんどん大きくなっていきます。幾重にも声がおりかさなった合唱を心地よく聴きながら、ふと集会所の外の音に注意を向けてみると、いろいろな種類の虫の声が聴こえてきます。虫たちも合唱に参加しているかのようです。

写真2
▲集会所

さまざまな音がシャワーのように降り注ぐなかで、二つの巨大なたいまつに火がともされます。二人の男がそれをもって、聖火ランナーのように集会所の外へと走り出します。男たちが走り去ったあとには、たき火の煙にまじったたいまつのにおいが立ち込めます。村のはずれまで走っていった男たちの先にいたのは、たいまつの灯りで照らされて妖しげな動作で踊る「精霊」でした。村の奥に広がる森から精霊が村へと帰ってきたのです。

写真3
▲精霊

暗がりのなかで、能面のような白い仮面でおおわれた精霊の顔が妖しく浮かび上がってみえます。仮面のまわりはヤシの繊維でおおわれており、まるで長髪を振り乱しているかのようです。腰と手首、足首に葉っぱの装飾をつけ、木の枝を細かく割いたほうき状の道具を両手に持った精霊は、二つのたいまつに照らされて、手、腰、足を激しくふりまわして踊っています。さきほど、「精霊が村へと帰ってきた」と述べました。このように表現した理由は、森にすんでいるとされるこの精霊こそが、この日のブウィティで弔われている死者が姿をかえたものだからで、儀礼にあわせて故郷の村に帰ってきたというわけです。精霊の登場によって、音楽と歌声の盛り上がりは最高潮に達します。精霊は、しばらく激しく不可思議に踊ったのち、ふたたび森の闇のなかへと消えていきました。たいまつの男たちは走って集会所にもどってきます。煌々と明るいたいまつよりはずっと淡く優しい月の光が、精霊が去ったあとのひっそりした村はずれを照らしていました。

写真4
▲歌い踊る参加者たち

遠くて近いつながり
あたかも精霊が実在するかのような私の表現に違和感をもたれた方がいるかもしれません。もちろん、この精霊は村人のひとりが「演じている」ものですが、儀礼開催のためには、何日もかかって装飾品や小道具、参加者に提供する食事などが準備され、精霊が登場するための「舞台装置」が周到に整えられており、参加者がこぞってその演出に協力することによって、精霊の存在、ひいてはこの儀礼が成り立っているのです。ですから、精霊の「正体」をうたがってその舞台裏をのぞこうとするのは、野暮なことでしかありません。実際にそのとき私は、森と村と人びとが織りなすさまざまな音と色とにおいに包まれた非日常の空間のなかで、本当に森にすんでいる精霊が村に現れてまた森へと消えていったと思ったのでした。10年以上前のできごとですが、あのときの体験は私の脳裏に強く焼きついたままです。どんな表現を尽くしても、さまざまな演出と舞台装置にいろどられた「場」を再現できるものではなく、その「場」で五感をつかって味わった感覚を伝えることもきわめて困難なのですが、その一端に触れていただくことはできたでしょうか。

写真5
▲村の背後に広がる森

さて、演劇に親しんでいる読者のみなさんのなかには、ここまでの儀礼にかんする描写をご覧になって、つぎのようなことを感じた方がいるのではないでしょうか。すなわち、これはまさしく演劇なのではないのかと。まさにそのとおりで、ここでは専門的な話にはふみこみませんが、じつは文化人類学のなかで、儀礼と演劇は長きにわたって深いつながりをもつものとして議論されてきました。儀礼にも演劇にも共通しているのは、私たちが日常の生活や人間関係から切り離された非日常の時間と空間のなかで、参加する者たちが一体となって「場」をつくりあげること、そこでは定型にしたがった「パフォーマンス」が繰り返し演じられ、参加者同士が心に深くきざまれる体験を共有するということです。
冒頭で私は、「劇場に足を運んで舞台を観る経験が乏しい」という意味で、自分が演劇とは縁遠い人生を送ってきたと述べました。しかしながら、これまで述べてきたように、私たちが人生のさまざまな場面で経験する儀礼が、演劇と分かちがたくむすびついており、そして、私たちの社会がそうした「儀礼的・演劇的なもの」によっていろどられていることをふまえれば、私の、そして、どんな人の人生も「演劇と縁遠い」などということはなく、むしろ「演劇とともにある」のではないかと思うのです。

写真6
▲参加者が一体となって儀礼の場をつくりあげる

他方で読者のみなさんは、はじめにアフリカの村の話だと聞いたときには「自分とは縁遠い」と思われたことでしょう。では、これまでの話をお読みになって、どのような感想をおもちになったでしょうか。もちろん、まったく想像もつかず理解もできない世界だという声もあるかもしれません。しかし一方で、私たちと通底する何かを感じることはなかったでしょうか。たとえば、アフリカの種々の仮面をみてみると、真っ白で面立ちも能面のようなものがあることに驚きます。みんなが一体となった儀礼に参加すれば、自分がまったくちがう立場の者だということをすっかり忘れ、いつしかその場に没入してしまいます(没入が高じて私は、儀礼結社に加入し呪術師にも入門してしまいましたが、その話はどこか別の機会ですることにしましょう)。作品紹介の動画で宮城さんが語っていらっしゃるように、『顕れ』で描かれているのも、私たちとは遠く離れているようでありながら、私たちと深いところで相通じる世界なのではないかと思うのです。

写真7
▲精霊の仮面

「演劇とともにある」ひとつらなりの自分の人生のなかで、私たちと相通じる世界を体験する「場」に立ち会えることを楽しみに、『顕れ』を観に行きたいと思います。


◆これまでのブログ
2018.7.15更新 #001 県大での公開授業レポート
2018.7.21更新 #002 作者レオノーラ・ミアノ氏来静!
2018.8. 5更新 #003 レオノーラ・ミアノ氏講演会レポート
2018.8.30更新 #004 研修生ポールさんの振り返りレポート
2018.9.11更新 #005 世界初演まで間もなく!
2018.12.10更新 #006 『顕れ』の世界を読んで楽しむ

◆パリ公演期間中のブログ
『顕れ』パリ日記2018 by SPAC文芸部 横山義志

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SPAC秋→春のシーズン2018-2019 #3
顕れ ~女神イニイエの涙~
2019年1月14日(月祝)、19日(土)、20日(日)、26日(土)、27日(日)
2月2日(土)、3日(日) 各日14:00開演
日本語上演/英語字幕
会場:静岡芸術劇場

作:レオノーラ・ミアノ
翻訳:平野暁人
上演台本・演出:宮城聰
音楽:棚川寛子

*詳細はコチラ


2018年12月14日

『マハーバーラタ』パリ・サウジ日記(15)仕込み二日目~リハーサル

SPAC文芸部 横山義志
2018年11月30日(金)

技術スタッフは朝9時劇場入り。イスラム圏では金曜日は休日で、道が空いている。

14時半過ぎ、俳優劇場入り。

俳優劇場入り

音響班は音響機材が届かず、昨日から作業ができていない。もう五日前からトラックが国境で止まっていて、昨夜のうちに届くといわれていたが、今日もまだ通関していないという。劇場機材はほとんど外国から輸入しているので、手配してもすぐに届かないことが多いらしい。どこの国境なのかもはっきりしないが、面積は日本の六倍あるので、どの国境にしてもそれなりの距離がある。今日は作業できるか見通しつかず。なんとか劇場にある機材を見繕って、楽器の音が出るようにする。

楽器設置

カンパニー担当のウィリーさんと世界文化センター内のミュージアムを訪問。現代美術、歴史的なイスラム美術の展示、自然史博物館という三つのパートでできている。ウィリーさんが中世イスラム美術の展示を指さして、「ほら、これは私たちの王国よりもずっと古いんですよ!」と、驚いたように話していて、ちょっと大げさだな、と思っていたら、よく聞くと、そもそもサウジにこのようなミュージアムができたのは初めてなのだという。よく見たら、このイスラム美術の展示も、ロサンジェルスの美術館から借りてきたものらしい。

今日はアラブ首長国連邦のナショナルデーで、今日から記念行事。

UAEナショナルデー

通訳のアナスさんによれば、アラブ首長国連邦はサウジアラビアにとっての最大の友好国なので、相互にナショナルデーを祝う習慣になっているという。センター内のあちこちでコンサートやダンスなど。かなりの人出。スマホで写真や動画を撮ってSNSで発信している方もよく見かける。自撮り棒を使う方も。

自撮り棒

ずいぶん熱心に撮っているな、と思ったら、カンパニー受け入れ担当のウィリーさんによると、そもそもサウジではコンサートやダンスといったものを公共の場で見ること自体、今でも比較的稀なことらしい。これらは全てアラブ首長国連邦ナショナルデーだからこそ、この三日間に限って、ここでしか見られないものなのだという。

サウジでは長年の間、公共空間でコンサートが行われることが否定的に見られてきたが、サウジ政府が2016年に発表した「ビジョン2030」で文化・娯楽の推進が打ち出された。2017年にはサウジを離れて米国で活動していたポップシンガーのロターナのライヴがはじめて故国で開かれている。
 *参考:中東のミュージシャンは何と闘っているのか? 中東音楽のポリティックス
この世界文化センターの建設は10年以上前から計画されていたが、いい時期に開館を迎えたのかもしれない。来週ここで上演される『マハーバーラタ』も、多くのサウジ人にとっては全く見当もつかないものなのだろう。

20時から舞台上で稽古。現地スタッフがたくさん興味津々で見に来てくれる。演奏がはじまると、突然劇場に血が通ったような感じがする。

稽古

22時半退館。

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『マハーバーラタ』(アブドゥルアジーズ王世界文化センターのウェブサイトへリンク)
https://www.ithra.com/en/eventshub/events/201812-mahabharata

『マハーバーラタ』サウジアラビア公演(SPACウェブサイト内)
http://spac.or.jp/mahabharata_saudiarabia2018.html
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SPAC海外ツアーブログ
アヴィニョン演劇祭参加の記:2014年『マハーバーラタ』『室内』上演記録
アヴィニョン法王庁日記  :2017年『アンティゴネ』上演記録
『顕れ』パリ日記2018 :宮城聰最新作『顕れ』上演記録
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2018年12月11日

『マハーバーラタ』パリ・サウジ日記(14)アブドゥルアジーズ王世界文化センターのこと、仕込み初日

SPAC文芸部 横山義志
2018年11月29日(木)

アブドゥルアジーズ王世界文化センターについて、改めて。

夜の「世界文化センター」、制作大石さん撮影(CG合成ではありません)。

夜の世界文化センター

ダーランは世界最大の原油生産量を誇る国営石油会社サウジアラムコが本社を構える石油の町。20世紀初頭には砂漠の片隅に過ぎなかった。だが、ここで1931年に発見された油田が、サウジアラビアの歴史を大きく変えることとなった。

サウジアラムコによって建てられたアブドゥルアジーズ王世界文化センターは、TIME誌による「今すぐ体験したい場所100選」特集の中で「世界で最も素晴らしい場所2018」として選出されている。2008年着工、2016年落成、2017年12月に正式オープン。劇場の他、博物館や図書館もある。オスロとノルウェーに拠点を置く設計事務所スノヘッタが設計を手がけ、10万平米の敷地に4億米ドルをかけて建設された。

上記リンクのサウジアラムコの日本語サイトによると、「知的探求、創造性、異文化交流を担い、国と地域の架け橋となることを目指し、サウジアラムコによる企業の社会的責任イニシアチブの一環として建設され」たとのこと。このイニシアチブは、今から85年前の1933年にサウジアラビアの初代国王で現国王の父にあたるアブドゥルアジーズ王がソーカル(現シェブロン)との原油採掘権契約交渉で、採掘がサウジ市民の利益となるものにするための条項を強く要求したことに由来する。このためもあって、このセンターには初代国王アブドゥルアジーズの名が冠されている。

世界文化センター公式サイトには、このように紹介されている。「世界は、発展し、変革し、変化しています。そしてサウジアラビアはさらに急速なスピードで変化しています。アブドゥルアジーズ王世界文化センター(Ithra)では、人間の可能性こそが変化の最も重要な源泉だと考えています。だから私たちは創造性を支援し、人の心にインスピレーションを与え、才能が開花できるようにすることを使命としています」としている。つまり、この世界文化センターは「急速に変化しつつあるサウジアラビア」の象徴として、その変化をさらに加速するべく作られたようだ。センターのアラビア語の通称「イスラー(إثراء, Ithra)」には「さらに豊かにする、知見や意識をさらに深める」という意味があるという。上演会場となる劇場は「イスラー劇場」と呼ばれている。

芸術監督のエリー・カラムさんは英語もフランス語も堪能なレバノン出身の演出家で、ヨーロッパの演劇事情にも詳しい。そのエリーさんが、ここで初めての本格的な演劇作品として、ヨーロッパの作品などではなく、あえてSPACの『マハーバーラタ』を選んだのは、この作品こそがサウジアラビア文化を「世界文化」とつないで変化を促し、さらに豊かにするのにふさわしいと思ってくれたためだろう。

技術スタッフと俳優の一部は午前8時半ホテルロビー集合、午前9時前に劇場入り。各セクションに別れて仕込みがはじまる。

舞台スタッフチーフの多くはヨーロッパ人。ベルギー人やフランス人が多くて、ここでもけっこうフランス語が通じる。不思議な感じ。

仕込み
仕込み2

一歩外に出てみると、少し曇っている様子だが、すごく眩しい。アブドゥルアジーズ王世界文化センターはちょっとストーンヘンジのようにも見える。

世界文化センターと大石さん

劇場前のウチワサボテンにイチジクのような実がなっている。

ウチワサボテン

サウンドチェックのためにスピーカーから大音量で音楽をかけていたら、突然ガイドツアーが劇場に入ってくる。アバヤを来てマイクをつけた女性のガイドさんが音響スタッフに声をかけて音楽を止めさせ、解説をはじめる。「この劇場ではロシアのマリインスキー劇場のオーケストラによるコンサートがあり、次回は『マハーバーラタ』の公演です!」等々(と言っているらしい)。たまたま劇場に入ってきた制作の方が「あー入って来ないでって言ったのに・・・」とあわてて確認に行く。

ガイドツアー

午後22時退館。

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『マハーバーラタ』(アブドゥルアジーズ王世界文化センターのウェブサイトへリンク)
https://www.ithra.com/en/eventshub/events/201812-mahabharata

『マハーバーラタ』サウジアラビア公演(SPACウェブサイト内)
http://spac.or.jp/mahabharata_saudiarabia2018.html
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2018年12月10日

<『顕れ』#006> 『顕れ』の世界を読んで楽しむ

Filed under: 『顕れ』2018

パリ・コリーヌ国立劇場シーズン開幕作品として、1ヶ月のロングラン公演を無事に終えてから早2か月。
いよいよ年明け1月、静岡芸術劇場に、秋→春のシーズン3作品目として凱旋します!
みなさんチラシや「すぱっく新聞」はもうご覧になられたでしょうか。

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12月6日(木)にタリーズコーヒー富士市中央公園店、7日(金)に浜松市のギャラリー・ショップ「遥懸夢/はるかむ」にて、公演に先駆けて【リーディング・カフェ】を開催しました!

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▲タリーズコーヒー富士市中央公園店での開催の様子

リーディング・カフェは、演劇に使われている台本をSPAC俳優ナビゲートのもと声に出して読んでみる人気のアウトリーチ企画。
出演俳優・永井健二がナビゲーターを務めた、7日「遥懸夢」での開催の様子を少しだけご紹介します。

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会場の「遥懸夢」は由美画廊を引き継いで2017年にオープンしたギャラリー・ショップ。
“はるかむ”には “はるか遠くにある夢に橋を架ける”という意味が込められています。
「遥懸夢」面する鴨江小路沿いには、「浜松市鴨江アートセンター」「木下惠介記念館」、五社公園、個人商店などが並び、アートと人が行き交い集うスポットとして少しずつ浸透していました。
オーナーの山口祐子さんは、由美画廊が閉じることになったときに、ご自身にとっても大切だった場所を無くしたくない、アートの火を灯しつづけよう!という想いから、引き継ぐことを決め、「表現の交差点」をモットーにギャラリーで様々なアーティストや作品を紹介されています。
当日お越しくださった皆さんの中にも、このギャラリーを大切に想っている方が多く、リーディング・カフェを始める前にまずは皆さんでささやかな立食パーティーを行いました。

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山口さん手作りのスープや、参加者が持ち寄ってくださったサラダ、ご近所に新しくできたお店からテイクアウトしたボリュームたっぷりのバケットサンドが揃い、テーブルはあっという間に華やかに。
少し寒さが厳しくなった日でしたが、スープで乾杯、おいしい料理とともに歓談し身も心も温かくなりました。

そしていよいよ場所を2階に移して、リーディング・カフェ!
現在ギャラリーは、作家・熊谷隼人さんの作品展「地上のかけらをあつめて」の会期中(会期は12/16まで)。
生命をモチーフとした切り絵や点描画などの絵画に囲まれた空間での開催となりました。

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ナビゲーターの永井によるSPACと作品の紹介ののち、まずは参加者皆さんの自己紹介からスタート。
これはお名前を知るのと同時に、「どんな声をしているか」を聞くためでもあります。
自己紹介が一周したらいよいよ読んでみる時間。
永井によって配役が割り振られ、少しずつ読み進めていきます。

『顕れ』という戯曲は前回のブログでも触れたように、世界初めての上演がわたしたちSPACによるものであり、日本語訳もされていませんでした。
そのため、翻訳の平野暁人さん、俳優たちとディスカッションを重ねながら、演出の宮城によって上演台本が作られました。
奴隷貿易を主題とし、「加担したアフリカ人たち」の告白を神話的世界での救済の物語として描いています。
作品に登場するのは、神様と魂たち。「この世に生まれたくない!」という魂たちのストライキから物語は始まります。

参加者の皆さんはもちろんまだ舞台をご覧になっていません。
場面の状況を説明する<ト書き>や台詞の口調から、キャラクターの造形を想像して声を出していきます。
皆さんそれぞれに想像力をふくらませて、個性・情感豊かに読んでいらっしゃいました。

出演俳優ならではの創作のウラ話、質問タイムを交えながら進み、中盤には実際にSPAC版ではこの上演台本からどんな舞台を立ち上げたのか答え合わせ。
何点かパリ公演の舞台写真を見ていただきました。

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舞台上で演じている永井さんとの違いに驚かれる方も。
また、ビジュアルを目にした後ではみなさん少しずつ読み方が変わっていました。
キャラクターそれぞれの話し方の違いを味わいながら、その後もじっくりと読み進めてリーディング・カフェは終了。
はじめて参加された方・SPACを観たことがない方がほとんどでしたが、「新しい体験だった」「作品も見てみたくなった」「絵と音読とのコラボレーションが面白かった」など感想をお寄せいただきました。
ギャラリーや集まった方々の雰囲気も相まって、終始あたたかな空間でした。

『顕れ』のリーディング・カフェはあと1回、「遥懸夢」の近くにあり、作家・熊谷さんがレジデントしていた「浜松市鴨江アートセンター」で来週12月15日に開催いたします!
定員まであと少し余裕があるそうなので、ご興味のある方はぜひご予約ください。

SPACリーディング・カフェ『顕れ』

また、ここから公演に向けてたくさんブログを更新していきます!お楽しみに。

◆これまでのブログ
2018.7.15更新 #001 県大での公開授業レポート
2018.7.21更新 #002 作者レオノーラ・ミアノ氏来静!
2018.8. 5更新 #003 レオノーラ・ミアノ氏講演会レポート
2018.8.30更新 #004 研修生ポールさんの振り返りレポート
2018.9.11更新 #005 世界初演まで間もなく!

◆パリ公演期間中のブログ
『顕れ』パリ日記2018 by SPAC文芸部 横山義志

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SPAC秋→春のシーズン2018-2019 #3
顕れ ~女神イニイエの涙~
2019年1月14日(月祝)、19日(土)、20日(日)、26日(土)、27日(日)
2月2日(土)、3日(日) 各日14:00開演
日本語上演/英語字幕
会場:静岡芸術劇場

作:レオノーラ・ミアノ
翻訳:平野暁人
上演台本・演出:宮城聰
音楽:棚川寛子

*詳細はコチラ
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2018年12月9日

『マハーバーラタ』パリ・サウジ日記(13)下見

SPAC文芸部 横山義志
2018年11月28日(水)

 
ダーランは夏には50度近くなるときもあるというが、冬は過ごしやすい。今日は最高気温23度、最低気温16度。パリに比べると15度近く暖かいことになる。

午後1時半、女性陣はアバヤを試着。よく見るといろんなデザインがある。サウジで女性が公共の場所に出る際には、体の線が出ないように、このゆったりとした黒い服で体を覆う必要がある。

アバヤ

午後2時、劇場を下見。どこも真新しい感じ。まだあちこちで工事している。技術スタッフはベルギー出身の方が多い。制作米山さんとそっくりな方も。

客席

午後3時、芸術監督のエリーさん、芸術監督アシスタントのカイリーさんとお話。エリーさんはレバノン出身で、カイリーさんはオーストラリア出身。アヴィニョン演劇祭で『マハーバーラタ』と『アンティゴネ』を見てくれていて、昨年アヴィニョンで声をかけてくれたのはエリーさんだった。

エリーさんの話。
「みなさんがサウジアラビアに来てくれて本当にうれしい。この企画をなんとか実現できてよかった。この劇場はサウジアラビアではほとんど初めての本格的な西洋型の劇場で、一般のお客さんに見てもらうようになってからまだ6ヶ月しか経っていません。
この最初のシーズンはゲルギエフ指揮によるマリインスキー劇場のオーケストラで幕を明け、ロシアのクラウンやラジャスタン(インド)の音楽作品などを紹介してきましたが、ほとんどのお客さんにとって、本格的な演劇作品を観るのは『マハーバーラタ』がはじめてです。
全席を使うと850席ありますが、今回は舞台が見にくい席もありそうで、全部は売らない予定です。現状、予約は270席ほどですが、かなり多いともいえます。サウジでは、一週間以上も前に席を予約するような習慣はありません。そもそも、これまでは無料で見るのがふつうだったので、お金を払って劇場に来るような習慣もありません。席の料金は最大170リアル(約4000円)にしていますが、他に似たような劇場はないので、これが高いのか安いのか、なかなか判断が難しいところです。
サウジではSNSの利用率が世界一高いと言われています。前回のインド音楽のときも、初日が明けるまでは全然客席が埋まらずに不安でしたが、初日を見たお客さんからのSNSでの発信から火がついて、20人、50人単位での予約があり、あっという間に満席になりました。」

SPACを知らないどころか、そもそも「劇場」なるものもほとんどなく、「演劇」なるものを観る習慣もないこの国で、どんな人が予約してくれたのだろうか。

カイリーさんによれば、今年の6月24日に女性による車の運転が解禁されたほか、以前に比べて宗教警察による風紀の取り締まりもだいぶ少なくなってきているという。

夕方にホテル前の超巨大ショッピングモールへ。

お出かけ

家族連れなど、多くの人で賑わう。

家族連れ

女性だけの買い物客も多い。ファッションのお店のほとんどはZARAやMANGOなど欧米系のチェーン店で、品揃えは日本やヨーロッパのショッピングモールと大差ない。

ショーウィンドウ

そこにアバヤを来た女性たちがたくさん買い物に来ているのがすごく不思議だった。「アバヤを着た女性たちはここで買った服をどこで着るんですか?」と一緒に来てくれたエブラヒムさんに聞くと、「家のなかとか、パーティーのときとか」とのこと。「公共の場所」とそうでない場所とで、だいぶ着るものが違うらしい。

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『マハーバーラタ』(アブドゥルアジーズ王世界文化センターのウェブサイトへリンク)
https://www.ithra.com/en/eventshub/events/201812-mahabharata

『マハーバーラタ』サウジアラビア公演(SPACウェブサイト内)
http://spac.or.jp/mahabharata_saudiarabia2018.html
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SPAC海外ツアーブログ
アヴィニョン演劇祭参加の記:2014年『マハーバーラタ』『室内』上演記録
アヴィニョン法王庁日記  :2017年『アンティゴネ』上演記録
『顕れ』パリ日記2018 :宮城聰最新作『顕れ』上演記録
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2018年12月8日

『マハーバーラタ』パリ・サウジ日記(12)サウジへ

SPAC文芸部 横山義志
2018年11月27日(火)

パリからサウジアラビアへの移動。劇団SPACが宮城作品で西アジアに行くのは創立以来はじめて。

午前6時、チェックアウトしてバスで空港へ。眠い。

朝バス

サウジに運ぶ楽器などのエアカーゴの荷物をカウンターまで運び、チェックイン。

エアカーゴ荷物

今日の最終目的地はサウジアラビアのダーラン(ザフラーン)だが、その最寄りの空港はダンマーム空港になる。フライトはアラブ首長国連邦のアブダビ経由。実はパリから行くとダンマームの方がアブダビよりも手前にあるのだが、直行便がないため。ダンマームは石油の輸出港として知られる都市で、観光地でもない。そもそもサウジアラビアは巡礼に来るムスリム以外の観光客をあまり受け入れていない。サウジアラビアへの入国は、メンバー一同はじめて。宮城さんから、サウジ滞在中の注意事項など。

宮城さん注意事項など

朝10時過ぎ発の便で、まずはアブダビへ。6時間ほどのフライト。時差もあって、19時過ぎ着。

時差

そこで乗り換えて、21時過ぎ発のフライトで、サウジアラビアのダンマームまで約1時間半。ゲートで待っていると、好奇の視線を感じる。石油技術者でも商社関係者でもなさそうな東アジア人がこんなに大挙してダンマームに行くこともなかなかないのだろう。

アブダビ~ダンマーム

エティハド航空の座席スクリーンでは、便利なお祈り案内画面がある。これを見ると、何より重要なメッカの方向がわかるし、今日のお祈りの時間、そして次のお祈りまでの時間を知ることができる。

お祈り案内画面

サウジアラビアといえば、日本では第一に石油だろうが、ムスリムの方々にとっては、何よりもメッカ(マッカ)とメディナ(マディーナ)というイスラム教の二大聖地がある国。

メディナ

そのために、どこよりもイスラムへの思い入れが強い国でもある。そんな国で日本人がヒンドゥー教の聖典『マハーバーラタ』を上演するというのがどういうことになるのか。実際に行ってみないとわからないことばかり。

22時半頃ダンマーム着。ふたたびトラックに荷物を積み込む。

積み込み

バスでダーランへ。45分ほどの道のり。

ダーランへ

バスのなかで、迎えに来てくれた制作会社フィルムマスターのスタッフ、ウィリーとエブラヒムの二人と話す。ウィリーことワリードはバンクーバーの大学でウェブデザインを学び、六カ月前にフィルムマスターに就職。エブラヒムはインドのムンバイ近郊の大学でコンピュータ工学を学んでいたという。

二人によれば、上演会場のアブドゥルアジーズ王世界文化センター(King Abdulaziz Center for World Culture)は国営石油会社のサウジアラムコが建てて、運営している。はじめはアラムコの関係者だけが対象だったが、半年前から一般の観客も入場できるようになったとのこと。

やがて、世界文化センターが見えてくる。

世界文化センター1

この世のものとも思えない、ちょっとSFのような風景・・・。

世界文化センター2

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『マハーバーラタ』(アブドゥルアジーズ王世界文化センターのウェブサイトへリンク)
https://www.ithra.com/en/eventshub/events/201812-mahabharata

『マハーバーラタ』サウジアラビア公演(SPACウェブサイト内)
http://spac.or.jp/mahabharata_saudiarabia2018.html
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アヴィニョン演劇祭参加の記:2014年『マハーバーラタ』『室内』上演記録
アヴィニョン法王庁日記  :2017年『アンティゴネ』上演記録
『顕れ』パリ日記2018 :宮城聰最新作『顕れ』上演記録
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2018年12月7日

『マハーバーラタ』パリ・サウジ日記(11)ラ・ヴィレット搬出

SPAC文芸部 横山義志
2018年11月26日(月)

バラシ。リング状舞台から木材を外していく。

バラシ

日本に送り返す船便のコンテナの積み込み。ふたたび外の寒気のなかの作業。

積み込み

楽器などサウジへのエアカーゴ荷物も。こちらはトラックで搬出。

カーゴ荷物

16時、積み込み完了。ラ・ヴィレットのスタッフと記念撮影。

記念撮影

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『マハーバーラタ』(ラ・ヴィレットのウェブサイトへリンク)
https://lavillette.com/programmation/satoshi-miyagi_e20

『マハーバーラタ』フランス公演(SPACウェブサイト内)
http://spac.or.jp/mahabharata_japonismes2018.html

ジャポニスム2018参加企画 ふじのくに魅力発信事業(SPACウェブサイト内/日仏併記)
静岡県は、ジャポニスム2018公式企画に選定されたSPACの『マハーバーラタ』公演を活用し、公演期間である2018年11月19日から11月25日の間、「Mt. FUJI × TOKAIDO(富士山と東海道)」をテーマに、パリ市内で静岡県の魅力を世界に向けて発信するさまざまな事業を展開します。
http://spac.or.jp/news/?p=14636
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2018年12月6日

『マハーバーラタ』パリ・サウジ日記(10)公演六日目・楽日

SPAC文芸部 横山義志
2018年11月25日(日)

今日は雨模様だが、最高気温8度と、それほど寒くない。楽日。

今日も超満員で、多くの方にお断りしている状況。劇場入口にはチケットを求める方々。

チケットを求める方

というわけで、ふだん使っていない二階バルコニーを開放してもらって、内部関係者は上から見ることに。ふだん見えない舞台裏もよく見える。

劇場の人たちにも、作品がとても愛されているのを感じる。開演すると、案内係の方々が振りを憶えていて、舞台裏で曲に合わせて踊っていた。

赤い制服を着たセキュリティ責任者も、最後に神様が出てくる場面になると、一番見やすいところに出てきて、毎回楽しみに見に来てくれる。

二階バルコニーから

今日はアヴィニョン演劇祭技術ディレクターのフィリップさんが来てくださった。実は今回ラ・グランド・アールの舞台監督レミさんとフィリップさんは兄弟。

レミとフィリップ

今回上演している『マハーバーラタ』リング状舞台バージョンは、アヴィニョン演劇祭2014で初演したもの。伝説的な公演となったピーター・ブルック演出『マハーバーラタ』が上演されたブルボン石切場という野外の会場での公演だった。ここで日本の演出家が同じ『マハーバーラタ』を上演するというのは大変なチャレンジだった。

そこで空間デザインの木津潤平さんが提案したのが、リング状の舞台だった。通常石切場で使われていた客席を使わずに、舞台と客席の全体を作りなおすことになるこのかなりクレイジーなプランを実現するには、もちろん大変な労力と費用が必要になる。だが、このプランを見て、「これは今までで一番美しい舞台になる!」と確信を持ってアヴィニョン演劇祭の制作方を説得してくれたのが、技術ディレクターのフィリップさんだった。
*関連リンク:2014年7月6日「アヴィニョン演劇祭参加の記(2)」

そしてこれをちょうどラ・ヴィレットの館長に就任したところのディディエ・フュジイエさんとプログラム担当のラファエラさんがアヴィニョン演劇祭で見てくれた。ディディエ・フュジイエさんは、これを新たな方向性を示す象徴になりうる作品と考え、ラ・ヴィレット芸術監督のフレデリック・マゼリさんが国際交流基金の支援も取り付けてこの企画を推進してくれて、これがパリでの日本文化紹介企画「ジャポニスム2018」の一環に位置づけられることとなり、四年越しで今回この公演を実現することができた。

円形舞台の全景を見ようと思うと、かなり高くから見る必要がある。二階バルコニーにいると、神様たちと同じ高さに立つことができた。お客さんは神様の視点を想像しながら見ることになる。

二階バルコニーから見た神様

このラ・グランド・アールでは、劇場スタッフが様々な努力を重ねてくれて、最後の場面で幕を開けると外の木々が見える演出をすることができた。この場面では登場人物たちがみんなで「神も獣も王たちも平和の訪れをこそ喜ぶべし」と声を上げる。ここでは人間の世界に外部があることが重要になる。この瞬間、これまで語られてきたナラ王とダマヤンティー姫の苦難の物語が突然、世界の片隅の小さな物語のように見えてくる。そして同時に、そこで見えてくる巨大な宇宙全体が二人を祝福しているようにも見える。


▲パリ千穐楽カーテンコール
 
今回のパリ公演も、なんだかあちこちから不思議な力が働いて実現したような気がしてくる。さらには、このパリ公演があったおかげで、サウジアラビアからの招聘にも応えることができることになった。イスラム教の聖地メッカを抱えるサウジアラビアで、日本人が演じるインドの神々がどのように受けとめられるのだろうか。

新たな出会いへの期待と不安に胸を高鳴らせながら、バラシ、積み込み準備。

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『マハーバーラタ』(ラ・ヴィレットのウェブサイトへリンク)
https://lavillette.com/programmation/satoshi-miyagi_e20

『マハーバーラタ』フランス公演(SPACウェブサイト内)
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2018年12月4日

『マハーバーラタ』パリ・サウジ日記(9)公演五日目

SPAC文芸部 横山義志
2018年11月24日(土)

 
静岡県の緑茶プロモーションの一環として、ショートパフォーマンス『喫茶去(きっさこ)』を上演。今年春の「ふじのくに⇄せかい演劇祭」開幕式で、知事にも出演していただいた作品。「喫茶去」というのは、「まあお茶でも飲んで行きなさい」という意味で、中国のえらいお坊さんのお話。
*『喫茶去』の様子も紹介した演劇祭のブログはこちら:【シアタークルーレポート】開幕式

フランス語上演になるので、ラ・ヴィレットのラファエラさんにフランス語を聞いてもらって練習。

喫茶去仏語稽古

ラ・ヴィレットに「ちゃっきり節」が響き渡る。

ちゃっきり節

「リトル・ヴィレット」という子ども向けの施設の前で上演。

リトル・ヴィレット

小雨が降るなか、子ども連れの方もたくさん来てくださった。

喫茶去観客

静岡茶の呈茶サービスも。

呈茶サービス

「リトル・ヴィレット」では子ども向けの日本紹介企画も行われている。折り紙や鯉のぼりに加えて、クロード・レジ演出、SPAC俳優出演の『室内』で通訳をしてくださっていたパリ在住の俳優浅井宏美さんが紙芝居を披露。

紙芝居

『マハーバーラタ』はいよいよ超満員で、キャンセル待ちのお客さんも。今日は一席の空きもない状態に。

キャンセル待ち

熱い拍手、ブラヴォー。暖房が入って暖かくなったせいもあるかも。


 
終演後、ポストパフォーマンストーク。レンヌ大学演劇科のブリジット・プロさんの司会で、客席から宮城さんへの質問。

「日本の伝統演劇には死者の霊を慰める機能があるという話がありましたが、今宮城さんがやっていらっしゃる作品ではどんな死者を慰めるのでしょうか?場所と関係した死者でしょうか、それとも観客と関係した死者でしょうか?」と、パリ第三大学の学生さん。

「伝統演劇では、観客はひとつの共同体に属しているという前提があり、その特定の共同体を呪ったり護ったりする霊を慰めます。しかし現代の演劇ではお客さんがみんな同じ共同体に属しているわけではなく、それぞれ違う共同体に属し、それぞれ違う死者と関係をもっています。今の人たちだって、いろいろな形で死んだ方からも影響を受けていますよね。だから、そういった様々な死者全てに対応する必要があるのが、伝統演劇とは違うところです」と宮城さん。

帰り際のお客さんからも話しかけられた。「私の継母が悪い魔女のような女性で、画家である父親の相続問題で最近すごく辛い思いをしていました。この『マハーバーラタ』ではナラ王のほうが悪魔に取り憑かれているので、その反対のケースですね。でも、この作品を見たおかげで悪魔払いができたような気がします」とのこと。宮城さんによれば、この『マハーバーラタ』はスリランカの悪魔払いの儀礼に基づいている部分があるという。スリランカの農村では、「悪魔に取り憑かれた」という人がいると、村人が集まって円になり、バカバカしい小芝居をやったりして、どうにかしてその人を笑わせようとする。その人が笑うと、悪魔が落ちる。孤独に取り憑かれた人をふたたび共同体に繰り入れるための儀式だという。

アヴィニョン演劇祭で『マハーバーラタ』を見て、今回の上演を提案してくれた人の一人であるラ・ヴィレットのプログラム担当ラファエラさんは、ほぼ毎晩見てくださっていて、「この作品は私たちに本当に必要な作品だと思った。美しさ、そして宇宙を感じること。見るたびに幸せな気分になる。そんな作品はなかなかない」とおっしゃってくださった。

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『マハーバーラタ』(ラ・ヴィレットのウェブサイトへリンク)
https://lavillette.com/programmation/satoshi-miyagi_e20

『マハーバーラタ』フランス公演(SPACウェブサイト内)
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2018年12月2日

『マハーバーラタ』パリ・サウジ日記(8)公演二日目 音楽の都ラ・ヴィレット

SPAC文芸部 横山義志
2018年11月20日(火)

いよいよ気温が下がり、朝から雪がちらつく。

雪

今回公演している劇場は、ラ・グランド・アールの「チャーリー・パーカー・ホール」という。4000平米あり、コンサートでは1500席は組めるというが、今回は925席なので、贅沢な使い方といえる。

ラ・ヴィレットが音楽の中心地の一つになったのは、1980年代~1990年代のミッテラン政権(1981-1995)の文化政策に寄るところが大きい。ミッテラン政権では、かつて文化施設が少なかったパリ東部に文化施設を建設していく動きがあった。オペラ・バスティーユ(1989年)もその流れで作られたものだった。

ラ・ヴィレットには、1984年にロック・ポップスの聖地の一つとなる巨大なコンサートホール「ル・ゼニート・パリ(6000席)」、1990年にパリ国立高等音楽・舞踊学院とシャンソン・ホール(国立シャンソン・ヴァリエテ・ポップス遺産センター)、1990年代半ばには先鋭的なロック・電子音楽・ヒップホップなどのコンサートを紹介している私立のコンサートホール「ル・トラベンド」、そして1995年にはシテ・ド・ラ・ミュジークが設立された。さらに2015年にパリ管弦楽団の本拠地フィルハーモニー・ド・パリがここに移転してきた。

ヴィレット公園入口
▲ヴィレット公園入口

ヴィレット公園全体図
▲ヴィレット公園全体図

ル・ゼニート
▲ル・ゼニート

パリ国立高等音楽・舞踊学院
▲パリ国立高等音楽・舞踊学院

シャンソン・ホール
▲シャンソン・ホール

ル・トラベンド
▲ル・トラベンド

シテ・ド・ラ・ミュジーク
▲シテ・ド・ラ・ミュジーク

フィルハーモニー・ド・パリ
▲フィルハーモニー・ド・パリ

ここには耳の肥えたお客さんがたくさん来てくださっている。今日は『顕れ』の作者レオノーラ・ミアノさんがいらしてくださった。

レオノーラ・ミアノさん

ミュージシャンもアフリカ系の方々も、最後まで『マハーバーラタ』のジャンベの音を楽しんでくださっているよう。セキュリティ担当の方も、舞台がよく見えるところでじっと見てくれていた。ダブルコール。

二日目ダブルコール

終演後、NHKのインタビュー。

NHKインタビュー

レンヌ大学の学生60人が宮城さんと面会。バスで数時間かけて来てくれたという。「先生から何度も宮城さんの『マハーバーラタ』の話を聞いていたけど、実際に見てみたら、想像してたよりもずっとすごかった!」とおっしゃってくれた。

二日目レンヌ大学

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『マハーバーラタ』(ラ・ヴィレットのウェブサイトへリンク)
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『マハーバーラタ』フランス公演(SPACウェブサイト内)
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