1月24日(土)静岡県教育委員会特別支援課の主催で「輝きブック」を静岡芸術劇場で開催しました。これは静岡県内の特別支援学校に通う中・高校生7人がその特技を静岡芸術劇場の舞台で披露、一人ひとりの「輝き」を発見し、共生社会への架け橋となるよう地域社会が応援団となることを目指して今年初めて開催されたものです。
実はこの公演開催のきっかけは一昨年にさかのぼります。特別支援課の方々が「輝きブック」を開催したいと考え、SPAC芸術総監督の宮城に相談に来たところから始まりました。その時、ビデオを通して紹介された子どもたちを芸術家の視点から見つめる宮城と子どもたちをぜひ直接会わせたい、観客もそれを共有できるような場を作りたいと、特別支援課の方々が奔走し2年かけての実現となりました。
当日、静岡芸術劇場は『走れメロス』の休演日、舞台美術も残る舞台の前方に幕を下ろし、大きなスクリーンを吊るした前に演技スペースをつくって、SPACの俳優が出演者7人に一人ずつサポーターとしてつき、リハーサルから本番までの1日の時間を一緒に過ごしました。
13:10、オープニングは1階ロビーのグランドピアノにてショパンのワルツ(遺作)の演奏から始まりました。200名の観客が、1階から2階のロビーにかけてぐるっとピアノを囲むような形になりました。美しい音色とともにさあスタートです!
続いて静岡芸術劇場の中に舞台を移し、夢の案内人の司会に合わせて、ピアノ演奏、パントマイム、クレイアート、トランペット演奏、朗読、リコーダー演奏などの特技を持った子どもたち7人が舞台上で発表していきます。
クラウンタクは、パントマイムのショーを披露、会場を沸かせ、言葉がなくても人を笑顔にすることができる彼のパフォーマンスに感服!
クレイアートでは、今年の干支の牛の親子の作成を実演。50分もの間すごい集中力で細かい指先で造り上げた作品は本当に繊細な、楽しい作品でした。
休憩の後はトランペット演奏とピアノ演奏。劇場の一番後ろまで届くようにトランペットを高く掲げて演奏、まっすぐな音が届きました。
宮沢賢治の「いちょうの実」の朗読では、澄んだ声で一つ一つの言葉がはっきりと響き、その情景が目に浮かぶようでした。
消しかす細工は、消しゴムの消しかすで独創的な生物を創作。3体を製作する実演のため、クラス一丸となって消しかすを集めてきたそうです。
最後はリコーダーで「愛のあいさつ」を演奏。車椅子にすわりながらも、ピアノの伴奏に併せて、しっかりとした息遣いで伸びのある音が響きました。
彼らのパフォーマンスは、一つ一つがとても純粋で、目の前のことにちゃんと向き合っている。だからこそそれはある意味とても芸術的で、私たちの心を打つのでしょう。その高い集中力は、私たちが本来持っていたはずの能力で、色々な雑音にまぎれて鈍化、あるいは埋もれてしまった能力でもあります。障害者が頑張っているとか、障害者だからという視点ではなく、観客は芸術家としての彼らを見つめ、私たちは自分自身を見つめる機会となりました。彼らの集中力に引きずられるように思わず見入ってしまう私たち、そしてその視線を一手に引き受け、舞台上でもじもじせずにすっくと立つ彼ら。そのまっすぐな視線の前で、人を見つめて見つめ返される、人と向き合うことで発見できる輝きがある、ということを教えてくれた1日でした。