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2016年2月7日

【SPAC県民劇団】劇団壊れていくこの世界で『血の婚礼』ブログ#3

木田博貴インタビュー【前編】

節分も過ぎ、暦の上での季節は春になりましたが…、まだまだ寒さの厳しい舞台芸術公園。
公演までついについに3週間を切ったSPAC県民劇団「劇団壊れていくこの世界で」の稽古が、行われています!

そんな稽古の合間を縫って、演出の木田博貴さんにインタビューを敢行!!
結成2年目の今年にかける想いや、演出のコンセプトなど、
じっくりお話を伺いました。

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――結成2年目の「劇団壊れていくこの世界で」。「2年目」を意識したり、2年目だからこそ挑戦してみたことなどありますか?

 最初はすごく意識していました。でも、昨年の延長線上でやるわけではないので。昨年は「ギリシャ神話と和の融合」というテーマがありましたが、僕はすごく移り気が激しくて(笑)。どんどん別のことをやりたくなっちゃう。だから今年は「和」はそんなに押し出さなくても良いか、って。去年一年は、自分の劇団Z・Aでも『隻眼の紅蓮丸』や『八月のシャハラザード』で「和」をドーンって押し込んでいったので、逆に自分の中で「これしかないの?」って思ってしまって。厭きちゃうんです、やり続けると。

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――木田さんの中でブームは去った、ということですか?

 「去った」というか、「和」は好きだし、常に自分の中にあると思いますよ。昨年まではそれを極端に入れていたけれど、今は匂わせるくらいで良くて。だったらむしろ何か違うことをやりたいなって思う。今年は、昨年と集まったメンバーも違うし、『血の婚礼』を「和」で演出するって考えた時、自分の中で「何か違う」って思った。「ギリシャ神話」と「和」のテイストはすごくマッチしたんだけれど。この戯曲を「和」でやるんだったら、完全に別作品にしちゃった方が早いなって思った時に、「あ、これはまた別の演出・コンセプトでやろう!」って。
 最近僕アニメにはまってまして(笑)。子どもの頃はアニメとか漫画とか観て育ったけれど、大人になってからは音楽の方が好きだったから、アニメってほとんど観ていなくて。テレビでたまに映像が流れても、どれもこれも似ているなって思っていたんです。でも、ある時「化物語」っていうアニメを勧められたんです。全然知らなかったし、最初はわからなかった!女の子が可愛ければ良いと思ってるんじゃないよ!こんな女の子現実にいない!みたいな。よくこれにハマれるなーとか思っていたんです。でも観ていくうちに、「これは今まで僕が知っていたアニメではないな、演出の仕方が。スゴイしオシャレだな」って思って。そこから色々調べてみたら、アニメの中では結構有名な作品で、先日映画が公開されたんですけれど(※2016年1月8日公開の「傷物語<I 鉄血篇>」)、興行通信社発表の週末興行ランキングで3位に入っているみたいなんです。つくり方というか演出がすごく自分好み。こういうことを舞台でやってみたら面白いかもなって考えました。映像だからもちろん舞台とは違うけれど、その要素を今回は取り入れたいです。映像の演出をどれだけ3次元にできるか、というのが今回チャレンジしていること。「2年目だから」というよりは、「2015~16年だから」という感じですね、僕からすると(笑)だから役者に求めていることも去年と全然違う。役者にしたらやりづらい演出だと思いますよ。
 あとは、去年失敗したこととか、上手くいかなかったことは、すごく意識して芝居創りにはあたっています。でも、表面的にはそれほど押し出してはいないですね、2年目だからっていうのは。

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――『血の婚礼』は、2014年にZ・Aで上演していますよね。どうしてもう一度この戯曲に取り組んでみようと思ったのですか?また、その時と今回で、演出面や技術面、気持ちの上での違いなどありますか?

多分この戯曲が好きなんですよ!前回消化しきれなかったし、今回も多分消化しきれない。だからきっとこれから先もまたやるのだと思う。古典ではないけれど、海外の戯曲だし、現代とは文化も違うし、難しいイメージが最初はあったんです。でも、意外と僕たち寄りというか。古典に比べたら日常に近い、でも現代劇ではない。その中途半端なところが、僕にとってはいじりやすいんでしょうね。シンプル過ぎるんですよ、お話が。だからストーリーを伝えよう、というところに意識を持っていかなくて良い。ストーリーの合間に入っているロルカの個性や、彼がやりたかったことを自分たちがどう表現するのか、そこがすごく自由度が広いなって思っていて。自分たちが生きている時代とは文化も違うし近代的ではない生活をしているし、すごく…こう田舎というか、今の僕たちからすると遅れている。噂話もすぐに村中に広まってしまうし。でも、よくよく考えると、僕たちの時代も情報化社会になって、ネットで何でも検索できるし、ご近所の噂もネットとかLINEで入ってくる、Facebookでのぞき見が出来る。実は普遍的な作品なのかもしれない。少なくとも今の時代にはマッチしていると思う。状況や技術、文化は違っていても、すごく似ている部分もあるし、だから共感できるんだろうな。

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――どんなに技術が進歩しても、人間の感情は変わらない、共通するところがあるんでしょうね。

そうそう。だから2014年にZ・Aでやった時は消化しきれなかった。多分今回も消化しきれないと思う。それは、僕自身が色々なものを見たり聞いたり、人の気持ちを感じたり、明日はまた新しいことを知るだろうし、そういうものを詰め込みたいし、詰め込みやすい作品だからじゃないかな。
でも、どの作品にも言えることですけれど、やっぱりまずはこの作品が好きなんでしょうね、単純に。
また、今回僕はレオナルド役をやりますけれど、本当は花婿と父親の役もやりたいんですよ。父親は前回やったので、少なくともあと花婿をやるまでは、『血の婚礼』は僕の中では終わらない、またいつかやるでしょうね。

【後編に続く】

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SPAC県民劇団 劇団壊れていくこの世界で
『血の婚礼』
2016年2月20日(土)13:30/19:00、21日(日)13:30
舞台芸術公園 稽古場棟「BOXシアター」
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