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2016年10月4日

【『高き彼物(かのもの)』への道6歩目】 演出家・古舘寛治インタビュー

8月の第一期稽古からはや一カ月。


【8月の稽古最終日に撮った集合写真】

先日、出演者スタッフが再び静岡に集結し、第二期稽古が始まりました!

さて、今回のブログでは、グランシップ情報誌「グランシップマガジン」に掲載された、
演出家・古舘寛治さんのインタビュー記事をご紹介します。

「フィクションの中に本当に生きている人間がいる」
SPAC新作『高き彼物』で、真の“リアリズム”を追求する

――今年度の「SPAC秋→春のシーズン」で『高き彼物』を演出されますが、
  この規模の舞台の演出は初めてだそうですね。どのような経緯で決まったのですか?

昨年SPACの『舞台は夢』公演の際、終演後のアーティストトークのゲストとしてお招きいただいたのですが、トークの前に芸術総監督の宮城聰さんから「演出をやってみませんか」といきなり言われまして。それがまさに演出をやりたくてたまらなくなっていた時期だったんです。
僕は20代の時アメリカで演技を学んだことから、俳優の演技というものに対して、ある種の目標、理想とする形を持っています。一俳優としてそれを追いかけてきたつもりですが、一俳優にできることは限られている。舞台に出ている俳優の演技全体を自分が理想としているものにしたいっていう欲求が年々膨らんでいました。だから宮城さんのお誘いは、ちょうど良いタイミングでした。

――『高き彼物』という作品を選んだ理由を教えてください。

宮城さんからいくつかの候補作品をいただいて、その中で最後に読んだのが『高き彼物』でした。
恥ずかしながら、この戯曲の存在自体知らなかったんですよ。『サラリーマンの死』にしようかなと考えていたんです。が、これを読んだ瞬間、僕の考える「リアリズム」を追求するのにピッタリの作品だと直感しまして、これに決めました。

――舞台美術を静岡県出身の宮沢章夫さん(劇作家、演出家、作家。遊園地再生事業団主宰)が担当されますね。

宮沢さんは、ご自身の舞台でもそうですが、抽象的なデザインの舞台美術を用いる方なので…覚悟しています(笑)。
「抽象」と「リアリズム」―― 一見相反するようですが、具象的な日常風景の前より抽象的な背景の前で “リアルな演劇”をやる方が、作品としてはより面白くなると思います。宮沢さんとは既に一度打合せをしましたが、これからどんなプランがあがってきて、どう形になっていくのか、ワクワクしますね。

――SPACの俳優陣に加え、今回2名の俳優をオーディションで選ばれたと伺いました。

本作に出演するSPACの俳優を集めて、一度ワークショップを行ったのですが、非常に鍛錬されていて技能が高いですね。
また、主人公の元高校教師の娘役を演じるとみやまあゆみさんも、以前別の仕事でご一緒したことがあり、演技の幅がある方なのでとても楽しみです。
そして石倉来輝くん。彼は実年齢と同じ18歳の高校生の役を演じます。結構大人な内容の戯曲なので、リアルな18歳が演じて大丈夫かなって心配したんですが…杞憂でしたね。オーディションでも堂々としていて、彼しかいないという感じでしたよ。成長に期待しています。

――「リアリズム」という言葉がたびたび登場していますが、古舘さんが考える「リアリズム」とは?

「舞台上のフィクションの世界の中に、本当に生きている人がいる」と見えるようにしたいんです。それが僕にとっての「リアル」であり、「Truth(真実)」です。
アメリカの俳優の中には、「真実」を「リアル」に対する言葉として使う人がいます。「リアル」は客観です。一方の「真実」は、俳優自身が本当にそこに生きていると信じている状態、極めて主観的なものです。俳優がそういう状態になれば、自ずと客観的な存在である観客からは「リアル」に観える。それが僕の信じているリアリズムへの道(メソッド)なのです。その時、見た目の問題を越えて、間違いなく面白いものが立ち上がってくると確信しています。

――最後に、静岡ではテレビCMで目にしない日はない古舘さんですが(笑)、静岡のお客様に向けて一言お願いします。

実は静岡では、道ですれ違っても、お店にいても、声を掛けられたことがないんですよ。一度我慢できなくなってお店の女性に聞いちゃったんです。「僕のこと知ってます?」って。そしたら「ハイ、知ってます」って(笑)。
知っていても知らぬふりをするって、古き良き日本の奥ゆかしさがあって、静岡が大好きになっちゃいました。
そんな大好きな静岡での初演出となる『高き彼物』、ぜひ観に来てください!

【グランシップマガジンvol.7(2016年9月15日発行)に掲載】

真の”リアリズム”演劇を目指して、稽古も順調に進んでいます。
その様子は今後のブログでレポートしていきます!

よい席はお早めにどうぞ!

公演情報はこちら。
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SPAC秋→春のシーズン2016 ♯2
『高き彼物』
一般公演:11月3日(木・祝)、5日(土)、13日(日)、19日(土)
演出:古舘寛治 作:マキノノゾミ 舞台美術デザイン:宮沢章夫
静岡芸術劇場
*詳細はコチラ
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