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2021年2月5日

学芸班スタッフの演劇問わず語り②~『ハムレット』のハムレットを語りたい ~


(2008年初演時より/ブログ内すべて)
 
こんにちは、学芸班の鈴木達巳です。
SPACには舞台作品の創作や劇場運営に関わるあらゆるマネジメントを担当する制作部というものがあります。その中に「学芸班」というセクションがあり、私はこちらを担当しています。「学芸班」の主な業務としては、中高生向けの鑑賞パンフレットの執筆、編集などがあります。2月中旬より中高生向けの公演が始まる『ハムレット』のパンフレットでもいくつかのページを担当しました。(ウェブでもご覧いただけます。こちら
 
SPAC秋→春のシーズンのラストを飾る作品は、6年ぶりの再演となる『ハムレット』。約40本ほどあるシェイクスピア作品の中でも、特に有名で人気のある作品の一つです。
400年以上前に書かれた戯曲ながら、ストーリー、台詞、どれをとっても至高の領域にある作品で、今まで古今東西あらゆる演出家によって演出され、名だたる俳優達によって演じられてきました。
では、そもそも『ハムレット』の魅力とはなんなのか? 今回はその魅力の一つ、主人公のハムレットについて、学芸班というよりもはや、作品のいちファンとして紹介させてください。
 

 
『ハムレット』の魅力はハムレット
まず『ハムレット』のストーリーを少しご紹介。王子ハムレットが父の訃報を受け留学先から帰国すると、叔父であるクローディアスが王位につき、さらに母ガードルードと再婚したことを知ります。父の死から二か月も経たぬうちに叔父と再婚した母にショックを受けるハムレット。そんな彼の前に父の亡霊が現れ、「クローディアスによって殺された」と語るのです。信じていた世界が崩れ落ち、ハムレットは復讐へと向かいます。

さて、この設定だけを読むと、ハムレットは一般大衆とはかけ離れた人物なのに、何故か我々の心を惹きつけます。

その理由の一つは、彼ほど人間らしいキャラクターはいないからではないでしょうか?ハムレットは人が有するもの、とりわけ若者が持ち合わせているものを多く備えているように感じます。自意識、繊細さ、高潔であろうとする気持ち、甘え、我儘、そして有り余るエネルギー。彼は純粋であると同時に未成熟な人物だとも言えます。そんな彼が父の死の真相や(彼の目から見た)母のふしだらさといった、受け入れたくない現実に直面。自身の理想と現実の狭間で葛藤し、悶え苦しみます。

この苦悩する姿に、観る人々は共感するのではないでしょうか? 多くの人が日々、清く、道徳的な人間でありたいと思う一方で、世の中は不合理で、不条理であることを受け入れて生活をしているからこそ、感情と理性の間で揺れ動くハムレットの人間臭さに心を揺さぶられるのです。

このハムレットがどのようにして悩み多き若者から抜け出すのか、それも観劇する上で注目ポイントの一つかと思います。
 

 
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SPAC秋→春のシーズン2020-2021 #3
ハムレット Hamlet
演出:宮城聰
作 :シェイクスピア
翻訳:小田島雄志
出演:武石守正、奥野晃士、春日井一平、河村若菜、貴島豪、佐藤ゆず
   たきいみき、ながいさやこ、野口俊丞、布施安寿香
<上演時間:1時間55分(途中休憩なし)/英語字幕あり>
◆公演日程
静岡公演【完売・キャンセル待ち(両日)】
2月6日(土)・7日(日) 各日14:00開演 会場:静岡芸術劇場
下田公演
2月11日(木・祝) 14:00開演 会場:下田市民文化会館 大ホール
★公演ページはこちら
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