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2021年10月1日

『みつばち共和国』出演者に聞く!

◆中高生鑑賞事業「SPACeSHIPげきとも!」パンフレット連動企画◆
 SPACは「SPAC秋→春のシーズン」を中心に、中高生鑑賞事業「SPACeSHIPげきとも!」を実施しています。「SPACeSHIPげきとも!」では、あらすじや作品について考えるヒントが書かれた公演パンフレットをみなさんにお渡ししています。

『みつばち共和国』のパンフレットには、たきいみき、永井健二、仲村悠希の出演者三名による座談会の様子を掲載しており、今回のブログでは、このインタビューのロングバージョンを掲載します。
※一部ネタバレを含むため、内容を知りたくない方は、観劇後にお読みください。
 

▲今年の公演に向けての稽古開始に先立ち、オンラインで行われた座談会。
(写真左上から時計回りに)たきいみき、仲村悠希、永井健二

 
——『みつばち共和国』はどんな作品ですか?
 永井 わかりやすい百科事典、ハチのことを優しい言葉で伝える絵本のような作品です。
この作品は会話らしい会話があまりありません。特に僕の役は客席を向いていることが多いので、他の登場人物に対してではなく、むしろお客さんと会話している感じがします。そこが普通のお芝居と一番違うと思います。

たきい この舞台はメーテルリンクの『蜜蜂の生活』というエッセイをもとに作られていて、彼の観察眼や、哲学的な要素があちこちにちりばめられています。だから、自分が舞台上にいるときは、なんだか顕微鏡でのぞき込まれているような気分で、メーテルリンクの観察の対象になっているように感じる時があります。
そもそも舞台上で俳優は観察の対象ではあるのですが…。
「生物」として観察されている、と思うことはあまりないので、そこがこのお芝居に出演していて面白いと感じるところです。

 仲村 ハチは集団で何千、何万匹といて、それが一体となって動いています。その自然の様を二人だけで表現しなければいけないところが難しいです。たきいさんと私の二人の関係が、同じ働きバチだったり、女王バチとオスバチだったりといろいろ変わっていくことでハチの巣の生態を表現するのですが、そこが難しくもあり、同時に演じ手としての醍醐味でもあります。また、ミツバチの生態の細部を見るようなミクロの視点もあれば、すごく遠くから世界全体を俯瞰的に見る視点もある、とても多層的な作品です。
 
——作品のみどころや見てほしいシーンはどこですか?
たきい 私は花粉集めのダンスのシーンが素敵な場面だと思っています。他には卵を産むシーンが、見た目の面白さ満載なので見どころです。
それと原作者のメーテルリンクの言葉がシーンの随所に散りばめられているので、見どころというか「聴きどころ」もたくさんあると思います。


▲おススメシーン① 女王バチの出産
 
 仲村 私も、出産シーンは楽しいし、大好きです。たきいさん演じる女王バチが一生懸命産んだ卵を働きバチである私が一個一個、慌ただしく六角形の小部屋に入れていく作業のシーンは、本当に楽しい場面です。それと、『みつばち共和国』で演じるまでは、オスバチが一体どんな存在でどんな働きをしているのかを知らなかったので、オスバチの運命もぜひ見てほしいです。


▲おススメシーン② オスバチの最期
 
 仲村 ところで、この『みつばち共和国』は、元々フランスで上演されたものを、去年SPACで私たち日本人俳優の出演で創作した作品なんですが、SPACのスタッフがフランス公演の資料を基に作った小道具や舞台美術が、どれもとっても可愛いんです。ミツバチの「巣」の中も、花とか卵一つとってもすごく良く出来ているんです。そういうところも楽しんでほしいなと思いますね。

 永井 僕は、大量の農薬の名前がスクリーンに延々と流される中、たきいさんと仲村さんの二人が演じるハチが飛んでいるシーンが好きです。なぜこのシーンが好きなのか考えた時に、人間からの脅威に対して一生懸命生き抜こうとする姿が、小さくはかない存在にも見えながらも、自然を象徴するようなとても大きな存在にも見えるからです。最後にこのシーンが来るのは、演出家のセリーヌさんとしてもクライマックスという意識があると思うので、ぜひ何かを感じ取ってほしいです。
 
——演出家のセリーヌさんはどういう方ですか?

 仲村 初演時はZOOMを利用したリモートでの演出だったため、行ったこともない劇場で会ったこともない人たちにフランスから指示を出すのは、やっぱり大変だろうな、と思いましたね。

たきい 言葉も違うからね。

 仲村 もどかしかったと思います。

たきい だけど、ZOOM経由でも細かなニュアンスがちゃんと伝わっている感覚が確かにあって、不思議だなと思いました。

 仲村 こちらを信頼して、一生懸命感じ取ろうとしてくださっているように思えました。

たきい でも、休憩中とかは、めっちゃ女子で可愛かったです(笑)。画面越しに「今すぐハグしたい~」とか言っていて。「この方、会ったらめっちゃ可愛い人なんだろうな~」と思っていました。
 

▲遠くフランスよりZOOMで舞台装置を確認するセリーヌさん
 
※2020年の初演時のZOOM稽古の様子は以下からもご覧いただけます。

 
——作品に出演したことでミツバチに対する印象は変わりましたか?

 仲村 勝手に仲間意識が生まれました。この作品に関わることになり、実際に養蜂場にも行ったんです。最初はハチが怖かったのですが、この作品を通して恐怖感はなくなりました。
たきい 今ではティースプーン一杯のハチミツを掬う時も、これはミツバチが何万キロも飛んで集めたものだと感謝しています。
 永井 女王バチになるハチが生まれてすぐに自分のライバルを殺すことや、オスバチが役に立たなくなったら捨てられてしまうということを知って、「ミツバチの世界も生きることは大変なんだなぁ」としみじみ思いました。
 
——再演に向けての意気込みをお願いします

 仲村 緊張しています。昨年は楕円堂という、キャパが100人ぐらいの劇場でしたが、今年は静岡芸術劇場で、もう少し大きい劇場になります。演出も少し変わるのかな?と、緊張しつつも楽しみにしています。
 永井 僕も大きな劇場になるということが、一番予想のつかないところだと思っています。自分の役柄は、対観客というスタンスで演じているところがありますので、小さい空間ではアットフォームな感じでできたけれど、今年は倍以上の客席数で距離も遠いので、お客さんとの距離感のコントロール、関係の作り方が昨年と全く違うだろうなと。どうなるのか不安でもあり楽しみでもあります。
しかも静岡芸術劇場の他にもいろんな劇場で上演をしますので、会場がかわる度にお客さんとの関係性が変わっていくのが、普段の演劇、お芝居と違う点です。その変化を楽しめるように頑張りたいです。


▲永井演じる巣箱保護員
 
——最後に中高生に向けて一言お願いします

 仲村 今、窮屈な思いをしている人も多いと思います。メーテルリンクの言葉には、世界に対して広い視野を持つことができる言葉がたくさん詰まっているので、それを楽しんでください。

 永井 「わからないといけないんじゃないか?」とあまり力まずに、リラックスして観てもらいたいです。

たきい 新型コロナウィルスの影響で、これまでと同じようには舞台ができなくなってからずっと感じていることですが、ピンチの時にできなくなったことを嘆くよりも、アイディアを絞り出して表現することが、俳優の社会的な役目としてあるのではないかと思います。制約があることでかえって生まれる表現もあるし、すべてポジティブに捉えていけたらいいなと思います。中高生の皆さんにも、私たちが絶えず可能性を探っている姿を見てもらって、何かを感じてもらえればと思います。

(聞き手:SPAC制作部・鈴木達巳)

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SPAC秋→春のシーズン#1
『みつばち共和国』

メーテルリンク作『蜜蜂の生活』に基づく
作・演出:セリーヌ・シェフェール
日本語台本:能祖將夫
出演:たきいみき、永井健二、仲村悠希、木内琴子(声の出演)

<静岡公演>
2021年10月2日(土)、3日(日)、9日(土)、10日(日)、23日(土)、24日(日) 各日14時開演
会場:静岡芸術劇場(グランシップ内)

<下田公演>【下田市制50周年記念】
2021年11月27日(土) 14時開演
会場:下田市民文化会館 大ホール

☆一般公演は各日関連企画あり!☆ 詳細はこちら

★パンフレットは一般公演の物販コーナーにて1部200円でお買い求めいただけます。観劇の記念にぜひどうぞ。