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2010年9月1日

<スパカンブログ⑭>日本アフロ化計画

<スパカンブログ⑭>日本アフロ化計画

SPAC文芸部 横山義志

プログラム用のインタビューをしたとき、「この作品がプロの作品といえるのは、子どもたちがこの舞台を本当に生きているからだ」とニヤカムが言っていた。昨日8月最後の稽古を見て、その意味が分かった気がする。子どもが出演するダンス作品を見ると「踊らされている」ように感じるときがあるが、『ユメミルチカラ』ではそれが微塵もない。

もちろん振付はあるが、そこにも子どもたちのアイディアがふんだんに盛り込まれている。ちょっとした間ができると、子どもたちは振りをなぞったり、段取りを打ち合わせたりしている。稽古が終わっても、少しでも残れる子どもは、じっと照明の修正や舞台の作業を見守っている。その仕事が自分の人生のなかで本質的な部分を占めている、という認識を持って仕事をしている人をプロと呼ぶのであれば、この子どもたちは立派な「プロ」である。

3月にパリのアフリカ人街でニヤカムと会って話したときに、半分冗談で、「日本の子どもたちがアフリカの子どもたちと同じくらいお尻をふって踊れるようになったらこの企画は成功だね」という話をしていたが、それどころではない。日本の子どもたちがこんなに本気になっているのを、かつて見たことがあっただろうか。

ニヤカムはこの作品を「ジャパニーズ・アフロ・コンテンポラリーダンス」と呼ぶ。これだけ聞いてもどんな作品だかさっぱり見当がつかないだろうが、当然である。実際見てみても、映像・音楽・舞台装置も含め、どんな作品にも似ていないから、この作品の雰囲気を伝えるのはすごく難しい。あえていえば、そこは夢の中でしか見たことのない「幻のアフリカ」であり、「幻の日本」である。でもこの「夢」を本気で生きている「ダンサーたち」(ニヤカムはいつもこう呼んでいる)がいるわけだから、それは単なる夢ではないのかもしれない。

公演はいよいよ今週末、9月4日(土)、5日(日)の二日間。

http://spac.or.jp/10_summer/yumemiru.html