ブログ

2023年5月1日

ふじのくに野外芸術フェスタ2023『天守物語』レポート#1
今、『天守物語』を上演する理由わけ

みなさん、こんにちは。SPAC制作部の北堀です。
今回は、5月3日から上演される『天守物語』の稽古の様子をレポートします !

4月13日、『天守物語』の稽古がスタートしました!
まず、演出の宮城聰が、今、本作品を上演することへの想いを話しました。

今年は静岡県が「東アジア文化都市*」に選ばれ、日中韓での文化交流も盛んに行われることから、今年の野外芸術フェスタで上演する作品は『天守物語』がよいと思ったそう。
*東アジア文化都市についてはこちら

本作の初演は1996年(なんと私が生まれた年!同い年の作品に携われて嬉しいです)。
それまでは、日本語圏以外で上演できる芝居を創りたいと『ハムレット』など世界の古典を上演していたところ、知人のフランス人から聞いた「夏目漱石のような作家はヨーロッパにもいるが、泉鏡花のような作家はヨーロッパにはいない」という言葉がきっかけで、泉鏡花の作品を上演しようと思ったのだそうです。
96年は豪雪の年で、5月なのに雪が降る日もあり、会場となった富山県の利賀芸術公園 野外劇場も寒かったそう。宮城は「寒すぎてこれは俳優がもたない!」と思い、72分だった上演時間を10分ほど削りました。
宮城曰く、「削ったことで普遍性が生まれた」、何度も上演される作品となったのは、この年の寒さから生まれた奇跡なんですね!

宮城の『天守物語』には、アジアの民俗芸能や伝統演劇が盛り込まれています。
国内だけでなく、インド、パキスタン、中国、エジプト、韓国、アメリカ、フランス、台湾等、30都市で上演されました。
人間の能力を超えた台詞を、肉体的限界に近づけながら発することはアジア圏にも近い技法があり、言葉は通じなくても見せ場で拍手が起こったというエピソードも話してくれました。

宮城にとって『天守物語』は、アジアを知ることで私たち日本人とは何なのか知ることになった、自分たちを育ててくれたような作品であり、初心にかえることができる作品ということでした。

今回は4年ぶりの上演、メンバーみんなで動きや演奏を思い出していくところから稽古が始まりました。
何度も上演している作品で、上演を重ねる中で変わっているところもあるため、俳優たちは自分の記憶がいつの上演の時のものなのか、最新はどれなのか思い出すのも一苦労(笑)。
1つ1つ確認しながら稽古が進められていました。


 

▲演奏稽古の様子
 俳優による生演奏も見どころのひとつです。
 
そんな『天守物語』、今年は駿府城公園、浜松城公園と県内2カ所で上演します!
ムーバー(動き手)とスピーカー(語り手)が分かれた2人1役の技法であったり、こいのぼりを使った衣裳など、見どころがたくさんあります。
稽古を見ているだけでもワクワクする作品ですので、ぜひご覧ください。
 
<関連リンク>
★「リビング静岡」にて富姫を演じる美加理のインタビュー記事がこちらから読めます。
★「浜松百撰」にて図書之助を演じる大高浩一のインタビュー記事がこちらから読めます。
★「静岡新聞」
静岡新聞連載コラム【SPAC俳優 言葉をひらいて】阿部一徳が執筆。
い=「異国」:世界30都市を旅した『天守物語』について書いています。
連載は石井萠水と交互に執筆しながら、次の二人にバトンを渡していきます。
ウェブからもご覧いただけます。

==========
ふじのくに野外芸術フェスタ2023
『天守物語』

静岡公演
2023年5月3日(水・祝)、 4日(木・祝)、 5日(金・祝)、 6日(土)
各日18:45開演
会場:駿府城公園 紅葉山庭園前広場特設会場

浜松公演
2023年5月27日(土)、28日(日)
各日19:00開演
会場:浜松城公園 中央芝生広場特設会場

演出:宮城聰
作:泉鏡花
音楽:棚川寛子
出演:SPAC/美加理、阿部一徳、大高浩一、本多麻紀、
石井萠水、木内琴子、貴島豪、榊原有美、
桜内結う、大道無門優也、舘野百代、寺内亜矢子、
永井健二、山本実幸、吉植荘一郎、吉見亮

★公演詳細はこちら

==========