SPACてあとるてをとる『ちかくにあるとおく』、静岡芸術劇場ロビーでの全6公演も無事に終了。「SPACの公演ははじめて」というお客様も多く、小さなお子さんと一緒に観劇を楽しんでくださっていました。
今回のブログでは、静岡芸術劇場での公演の様子や「ベイビー向け公演」と「バリアフリー公演」の演出の違いなどを舞台写真を交えつつご紹介してまいります。
『ちかくにあるとおく』は、静岡芸術劇場の1階ロビーを上演会場としています。
車椅子やベビーカーでも移動が楽なことや、明るくて開放的な空間であることが、会場選びの重要なポイントとなりました。劇場になじみのない方や小さなお子さんにとって、はじめての場所に足を踏み入れることが大きなストレスになってしまうこともありますが、エントランス入ってすぐのロビーなら、客席でじっとしていることが難しくても気兼ねなく出入りが可能。また、少し離れたところからもお芝居の様子が見えるので、こちらが会場になりました。
会場の入口には、鏡の国に入っていくかのようなゲートを設置。
鏡文字の看板と、「はじまり」「おわり」と開演・終演時間をさした不思議な時計も。ウサギの足あとをたどってゲートをくぐると、そこは日常と地続きに広がる「空想の世界」です。
客席はマットが敷かれたスペースと椅子席がありました。ふわふわのクッションや色んな形の椅子がならんでいると「どこに座ろうか」と、席を選ぶワクワク感もありますね。
また、舞台が見える位置に、ゴロンと横になれたり自由におもちゃで遊べるスペースも作りました。
開演前に、お客さん同士やSPACのスタッフと一緒に遊びながら、劇場という場所や初めて会う人たちに少しずつ慣れていくことで、よりリラックスしてお芝居を楽しむことができます。
出演者も開演時より前に現れてお客さんとおしゃべり。
「どこから来たの?」「いくつ?」といった何気ない会話から、ゆるやかに「空想の世界」へといざないます。
それでは、「ベイビー向け公演」「バリアフリー公演」の違いについてご紹介していきます。
内容はほとんど同じですが、「バリアフリー公演」では手話通訳の方による案内があったり、劇中歌の歌詞が書かれたボードが登場したり、舞台で起きていることをリアルタイムに解説する音声ガイドなど、視覚や聴覚に障がいがある方への鑑賞サポートがありました。
舞台美術や衣裳の一部をさわって鑑賞するキットの貸し出しも。
「ベイビー向け公演」には、赤ちゃんも感覚的に作品世界に触れられる演出が盛り込まれていました。
そのひとつに海のシーンがあります。お客さんの頭のうえを漂う「魚群」はビニールシートでできていて、空気をはらみながらシャカシャカと音を立てます。この音は、赤ちゃんがお母さんのおなかの中で聞いていた音に近く安心するそうです。見た目も、天井の照明がキラキラと透けて美しくとても涼やか。そのなかを、帽子屋さん(三島景太)と音楽家のイカさん(棚川寛子)が、水の音がなる不思議な楽器を奏でていました。
はじめて耳にする音に、不思議そうな表情で応える小さなお客様。
「バリアフリー公演」の見どころのひとつとなっていたのは、白の女王(鈴木真理子)の歌と影のシーン。
空間を覆うように広がるドレスに、客席からは「わぁ~!」っと驚く声も。ドレスのスカートに映し出された影絵や、歌声にあわせてゆらめく波紋の影に、大人も子どももジ~ッと見入っていたのがとても印象的でした。
そして、どちらのバージョンでもラストはみんなで演奏です。
ひとりひとつずつエッグシェイカーを受け取って「おたんじょうびじゃないひ」をお祝い。
軽快な音楽に色とりどりの風船やシャボン玉が舞い踊り、会場は多幸感に包まれます。ベイビー向け公演では、小さな共演者が盛り上げてくれることも♪
最後に、お客様より寄せられた感想を一部ご紹介!
・子どもが小さいので「動いてもOK/声を出してもOK」というのが、リラックスして鑑賞できました。
・音楽も動きも楽しく、子どもたちが釘付けになっていたのが印象的でした。
・小さな子どもと観劇することが、こんなに楽しいなんて!新発見でした。
・子どもたちはもちろん、その親御さんたちがとても嬉しそうに観劇していたのが印象的でした。
・「なに?なに?」と思わせる不思議な世界で、衣裳、照明、音楽、子どもたちを楽しませる演出、娘も笑顔で会場をあとにし、とにかく大満足でした。
・不思議、わくわく、美しさ、温かさ、色んな感情を味わうことができ、見終わったあとも心が踊っていました。
公演にご来場くださいました皆様、誠にありがとうございました。
また、学校公演で出会った先生方や生徒の皆様にも心より感謝申し上げます。
このブログを通じて、少しでも「劇場に行ってみたい!」と思っていただけたり、プロジェクトのことや作品について少しでも興味を持っていただけていたら嬉しいです。
(制作部・計見葵)