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2011年7月2日

<萌目線。vol.72>図書之助会談

『天守物語』残すは千秋楽のみとなったある晩、図書之助役の大高浩一さん(ムーバー)が本多麻紀さん(スピーカー)を質問攻めにしているところに、
本多さんのアンダーをやらせていただいた私が遭遇。

爽やかで涼しい二枚目・図書之助に対するお二人の思い、お届けします‼

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大:本多が最初に図書役になったのっていくつのときだっけ?
本:もう10年位前ですかね。エジプト公演で。
大:最初のプランってどんなだった?
本:ど必死で、初演でスピーカーだった大高さんのプランをそのまんまやろうと思って。大高さんの台詞を聞いてそれをおこしてひたすらやってました。

大:図書之助って難しい?他にやった役柄と比べて。
本:うーん、そりゃあ簡単ではないですが基本的にはあまり悩まずにやりましたね。阿部さんの台詞を聞いてると体が勝手に変わるので。最初に大高さんから「図書之助は受けが大事。ひたすら受けるんだ。」って聞いたのもあって。
大: え?ああ。(笑)図書之助やってて、なにが面白い?
本:喋りながら、この人むちゃむちゃカッコいいな‼って思うんですよね!言ってることが涼しい!(笑)惚れ惚れしちゃうっていうか。自分が女性だからかもしれないですけど。
大:泉鏡花っておいしい言葉の並べ方するよな。
本:うん。泉鏡花の台詞は口にするだけで別世界に連れていかれる感じがします。

大:本多は図書之助みたいな男がいたら惚れるわけ?
本:惚れますね!きゃーカッコいいってなっちゃう!
大:じゃ図書之助と付き合うことになったらどうする?
本:緊張していっしょにごはん食べられない!
大:ここに乙女がいる。聞いて良かったよ。

本:大高さんは?
大:ああ・・・付き合うかな。ただ、人柄とは別で禍々しいものも感じる。忠義を尽くした挙句に切腹命じられて、なおかつその後に忠義を口にするなんて、目ぇ覚ませよって思うけど、その人にとってひとつしかないものに命を惜しまず邁進していく姿に色気なり凛々しさが宿っているんだとも思う。いや目ぇ覚ませよって思うけど。富姫目線なのかな。
本:ちょっと客観的なんですかね。
大:若いときにやってれば共感してたかもしれないけどね。初演でスピーカーのとき20代後半だったかな。とにかくひたすら一生懸命だった。今もたいして変わらないけど。
本:でもそれが、図書之助をやる上で一番大事なことだと思うんですよね。

大: 図書之助の台詞の中で、二番目に好きな台詞は?
本:またちょっと乙女的なんですけど、「真実のお声か、姫君。」ですかね。
大:俺は「御手向かいをいたします」かな。
お二人とも、10年以上『天守物語』と図書之助のことを考えて演じてこられたからなのか、話しを聞いてるとなんだか図書之助という人が本当に仲間としているような気配すら感じました。

戯曲に限らず、物語の登場人物って本当にいるように思うこともあるかと思うのですが、私にとっても図書之助はそうです。

不安でいっぱいで自信の無い自分を、とにかく立ち向かいに行くぞ!って引っ張っていってくれたような気がしています。

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『天守物語』という作品に参加して、私には先輩方が歩んできた道のりの険しさも、挑んできた勝負の厳しさも、刻んできた歴史の尊さも、きっと本当には理解できていないと思うんです。

でも、いつか自分も、大高さんや本多さんにとっての図書之助みたいに、
人生をかけて付き合っていけるような大切な役に出逢いたいなと思いました。

<萌目線。>とは・・・
SPAC新人俳優石井萠水の目線で稽古場や舞台裏の様子をお届けしています。