クリスマスを目前に、『グリム童話~少女と悪魔と風車小屋~』の衣裳をデザインしてくださった、衣裳デザイナーの堂本教子さんがSPACにいらっしゃいました。目的は「少女と悪魔と風車小屋」と「本物のフィアンセ」の稽古見学、そして演出家・宮城聰とのミーティングです。今回は堂本教子さんに衣裳デザインの仕事についてお話を伺ってみました。
Q.衣裳デザインという仕事をする上で心がけていることはありますか?
衣裳のデザインと言っても舞台美術ありきで、空間をどういう風にデザインするかを考えています。作品自体、演出、そして役者を含め、どういう世界観なのか。そういったこと全てを踏まえ、衣裳のデザインをその世界観に近づけていく・・・という作業を行っています。
Q.衣裳デザインをする上で苦労する点はありますか?
苦労することばかり。締め切りはあるし、全部がプレッシャーですよ。
それと、だんだんと仕事をしているうちに自分のデザインセオリーみたいなものが出来てきて、また同じようなデザインになっちゃった、ということが起こる。自分がより楽しむためにそこをどう飛び越えるかが難しいところです。上手いこと少しズラして、ズレたデザインで遊ぶことを考えています。例えばピッタリで動きやすいというデザインだけじゃなく、着る人に少しプレッシャーをかけるデザインもいいかなと思っています。
Q.「少女と悪魔と風車小屋」の白い紙のようなデザインはどのように決められたのですか?
衣裳のデザインは、台本を読み、稽古を見ることから始めました。そして舞台美術の方から「白い紙」という美術のイメージが提示されたんです。美術がそうならば衣裳も紙的なもので作ろうと考えました。でも衣裳を全て紙で作るのはなかなか難しく、試行錯誤の結果、あくまで紙という印象を失わないように、生地と紙を混ぜて作ることにしました。
Q.『グリム童話』の衣裳デザインをしていておもしろいところはどんなところですか?
影絵的な舞台美術なので、衣裳のシルエットを強調していく辺りがおもしろいです。
あと「少女と悪魔と風車小屋」の仕事をした時点で、この作品がシリーズものだと知らなかったんです。シリーズでデザインするのは初めての経験で、すごくおもしろいです。
Q.新作「本物のフィアンセ」の衣裳のイメージはどのようなものでしょうか?
「少女と悪魔と風車小屋」と同じ世界観でデザインします。重なっているキャラクターが多いので、演出家の宮城さんからの提案もあり、それらは共通のデザインでいきます。けれどストーリーが違うし、演じる人が違う。体型が変わるのに、衣裳のデザインが変わらない所がおもしろいんじゃないかな。2作品とも観て、比べて、楽しんでもらいたいですね。
Q.堂本さんにとって衣裳デザインとはなんでしょうか?
旅をすることです。作品世界への旅、同時に仕事をするみなさんと一緒に出る旅、ですね。「本物のフィアンセ」では「肉屋」に「きこり」に「馬丁」なんかが登場して、これらは私にとってこれまであまり考えたことがなかったような人々です。だからそんな新しい世界に旅ができることが、私にとっての衣裳デザインの仕事です。
★★★
とても元気で気さくな堂本さんの、とびきりのことは神社とお寺を訪れること。また民俗博物館が好きで、アトリエのスタッフと民俗研究会をつくり勉強会も計画中だそう。衣裳デザインを始めたのも堂本さんの田舎である若狭のお祭りとその衣裳がおもしろくて大好きだったからだとか。お祭りの持つ「ハレ」という感じが舞台に通じているのかな、とお話してくれました。
ひと月後、堂本さんが再び静岡に来る時は「本物のフィアンセ」の衣裳合わせです。これから堂本さんのデザインする衣裳をSPACの衣裳部でどんどん製作していきます!
今日はここまで・・・!