2013年2月14日(木) ル・アーヴル
SPAC文芸部 横山義志
ル・アーヴル公演日。町中から車で15分位の、まわりに何もない港の倉庫街にある劇場で、本当に人が来るのかどうか、ちょっと不安だったが、19時を過ぎるとレストランに人が集まりはじめる。毎回公演に関連した料理を用意しているらしく、今日は味噌汁や鉄板焼、おでん(!)がメニューに入っていた。
開場時間の19時半には長蛇の列。あっという間に500席の劇場がほとんどいっぱいになる。20歳前後の若者も多い。ル・アーヴル市の人口は15万人前後。このル・ヴォルカンという劇場が、これまでどれだけ観客育成に力を注いできたか、よく分かる。
この劇場は「国立劇場」のように常設のカンパニーはなく、招聘や共同製作を中心とする「国立舞台」と呼ばれる形態。この「国立舞台」のなかでは全国で3番目の規模で、予算は400万ユーロ程度だという。
町中にあるル・ヴォルカンの主劇場が再開するのは2014年とのこと。それまでの間、世界中から巨大客船を受け入れてきたこの船着き場が拠点となっている。日本から来た作品にこれだけ興味を持ってくれるのも、ル・アーヴルが国際的な都市だからだろう。
ここは仮設劇場らしく、公演中もあちこちでガタガタギシギシしているが、観客は慣れたものらしく、最後まで集中して見てくれ、パーカッションが鳴りやんだ瞬間に若者たちが立ち上がり、それにつられて多くのお客さんが立ち上がって喝采を送ってくれた。
帰り際にお客さんたちが笑顔で「ブラヴォー」、「来てくれてありがとう、すばらしかった!」などと声をかけてくださる。
すぐにバラシ。俳優は24時前に帰り、技術スタッフは午前2時過ぎに作業終了。タクシーを呼ぼうとしたらバレンタインデーでつかまらず、俳優を送ったバスの運転手さんが、時間外ながら、見るに見かねて戻ってきて、ボランティアで送ってくれた。静岡茶を差し上げる。午前3時前にホテル着、明日は午前7時20分集合・・・。