3月16日 イロトピーとSPACのコラボレーション 1
イロトピーの新作『身も心も』の滞在制作の仕上げとして、
SPAC俳優との4日間のワークショップ(以下WS)を実施。
イロトピーが静岡で制作したものを30分程度の小品としてまとめるということ。
WSに参加したSPAC俳優は4人、木内琴子、たきいみき、武石守正、永井健二。
小生は稽古場付きの便利屋として、WSに参加させていただきました。
集まったSPAC俳優たちにイロトピー芸術監督のブリュノが『身も心も』のコンセプトを説明してくれました。
イロトピーといえば清水港での水上パフォーマンスを思い出すだろうが、
本国フランスではもう一つ、街中での「食」にまつわるパフォーマンスも行っている。
「人を食す」というカニバリズムへの興味、それは
親しい人や愛する人を食べたいという欲求。自らを食べさせたいという欲求。
昔の夫婦は50年かけてゆっくり、お互いを食べ尽くした。現代は10年?一夜で・・・?
「こんにちの世界は競争的自由主義によって欲望に煽られた“人間が人間を食べる”社会になっている」――
アインシュタインのような風貌のブリュノさんによる、
からだに「食材でつくった服(肉襦袢)をまとった俳優がパレードのように路上に繰り出し、
出くわす人々にその料理=からだを食べてもらう」というパフォーマンスの創作が始まります。
まずは、ダンサーのファビエンヌによる準備体操。「身も心も」ほぐれていきます。
ひとしきり運動が終わると音響担当の俳優ピエールが名前を覚え合おうと提案。
日仏合同「名前まわしゲーム」がはじまりました。
名前が分かると「身も心も」溶けちゃいました。
稽古場の進行担当ドミニクが即興芝居をやろうと提案します。
パートナーの右手と左手の人差し指で割り箸をはさんで落とさないようにバランスをとったり、
歩行中に出会った二人がコンタクトを取り合い、関係性を作る。
次第に指示が具体的になってきます。
二人だけが関係を作り、その関係が周りを巻き込む。逆に外側の人間が二人の関係とコンタクトをとる。
ドミニクが問題点を指摘して、もう一度。さらにペアを変えてやってみる。フランス人の役者たちも提案します。
演出そっちのけで、みんなが意見を出し合い、シーンを作る。
ブリュノはそれを優しげに見つめ、みんなが価値観を共有し出したなというときに、意見を言います。
これがイロトピーのクリエイションなのです。
最後に小品のなかで使う「ベールの女」というシーンを創作。
「人がたくさんいないと試せないことが多かったのよ」とドミニク。
ストーリーや段取り、他の役者との関係性、新しいアイデア。
SPAC俳優も「こうしたらどう?」と様々な提案をします。
演劇は国や言語という垣根を飛び越えて行きます。
という感じで、1日目が終了。あっという間の5時間でした。
イロトピーの面々とSPAC俳優たちは濃密な作品を創り出しそうです。
*
3月17日 イロトピーとSPACのコラボレーション 2
SPAC俳優が揃うとブリュノの創作したキャラクターたちの説明が行われ、SPAC俳優にも人物像が振り分けられました。俳優たちはそれらを頭に叩き込みます。
衣裳担当のギッタとアンが出来上がったコスチュームを見せてくれます。身体を食べる仕掛けつきのコスチューム。けっこうリアルです。
食べる食材はコックであり、出演者のシリルが担当しました。食を通じたコミュニケーションということで、日本の食材をかなり取り入れているそうです。明日は朝の5:30に市場に出かけるとか。プロです!
ブリュノは言います。
「自分を食べさせるというのは、自分を解放するということ。路上で偶然出会った人(観客)に対して、開かれた身体を持たないと食べてはくれない。
だけど、実際、本番を経験しないとわからないよね(笑)。」
そんなこんなで本日のWSは始まります。
今日はSPAC俳優の武石守正が中心となり、「スズキメソッド」をイロトピーのメンバーに体験してもらいます。ダンサーのファビエンヌは流石の呑み込みの速さ!もちろん他の出演者たちもしっかりとついてきます。みんな、基本がしっかりしているからだろうなあ。
続いてはピエールによるヴォイス&リズムトレーニング。SPACでも音楽監督の棚川さん指導のもとリズムトレーニングを積み重ねていますが、演劇の現場にリズムトレーニングを組み込むというのは世界の主流になりつつあるのかもしれませんね!
トレーニングは終了し、進行役はドミニクにタッチ!小品の舞台となるカチカチ山(舞台芸術公園内 食堂棟)に見立てたベニヤ板とその上にスックと立つ粘土人形。舞台セットのミニチュアです。粘土人形にはmikiやkotokoとすでに俳優の名前が書かれています。
置かれている人形の位置を見ていたら、昨日クリエイションした「ベールの女」の説明が始まりました。ドミニクは人形を動かしながら、次のシーン「昇天する男」の動きも粘土人形で説明。「昇天する男」はピエールのシーンです。ピエールはそれを見てさっそく昇降機に乗ります。ピエールが満足するのを見計らって、ブリュノさんが「ベールの女」の新しい段取りとアイデアを説明。昨日の夜に思いついたようです。
ピエールは音響担当で音楽の録音・編集もしています。ブリュノの説明がおおかた終わると曲を流し、「ベールの女」が登場するきっかけとなる音と長さを実際に聞かせてくれました。ピエールの編集した音楽がストーリーやシチュエーションを創り出していきます。
仕掛けや段取りを確認し終えると、ドミニクは「貪りあう二人」というシーンを即興でやってみようと提案。ピエールが曲を流し、ファビエンヌがイメージを膨らませています。
「どう?」というドミニクの問いかけに、「やってみる!」とファビエンヌ&SPAC俳優。提案、即実行。
創作って感じ!
最後は今日やったシーンをアドリブを交えながら、ピエールの音楽に合わせて進行させてみることに。だんだん形になっていきます。
本日のWSはここでおしまい。終わった後はイロトピーの面々とSPAC俳優との交流ディナー。その席でブリュノさんは、「こうやってみんなで机を囲って、食事をする機会っていうのが大事だと思うんだ」と『身も心も』を創作するもう一つの動機をつぶやいていました。
さあ、あと2日です。明日はどんなWSになるのでしょうか。
牧山祐大
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清水港での水上パフォーマンスで喝采を浴びたフランスの「イロトピー」が、
「食と身体」をテーマに静岡のまちなかに出現!
『身も心も』
日時:5/16(土)、5/17(日)
会場:七間町名店街 (静岡市葵区)
無料・予約不要
☆「ふじのくに野外芸術フェスタ」詳細はこちら
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