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2015年10月9日

クランドール役・武石守正が語る『舞台は夢』の魅力、そして役作りについて

 皆様こんにちは!制作部の塚本です。
『舞台は夢』もいよいよ公演終了まぢか。10月10日、11日千秋楽の公演もまだご予約を受け付けております!今回は行方不明の息子、クランドール役の武石守正に行ったインタビューを大公開。『舞台は夢』という作品の魅力に始まり、武石の役作りについての深い話も盛りだくさん!もう『舞台は夢』をご覧になった方も、これから観ようかなと思っている方も、ぜひお読みください。

俳優・武石守正(たけいし・もりまさ)
SPAC所属俳優。大分県出身。実家はステーキ屋。好きな食べ物は餅。大学のころから演劇を始め、2003年よりSPAC所属。主な出演は、『ハムレット』『ペールギュント』『黄金の馬車』『ロミオとジュリエット』ほか多数。

――ズバリ、『舞台は夢』という作品の魅力を教えてください。

『舞台は夢』は、「フランス演劇の父」コルネイユによって17世紀に書かれた傑作喜劇です。
魔術師の幻影を通じて行方不明の息子クランドールの人生を目の当たりにする父。恋多き息子の人生は、非業の死で幕を下ろしたかに見えますが…、思いもよらない結末が待ち受けています。
 本作の面白さは、コルネイユが「そんなに凄くない人たち」を魅力的に描いているところにあると思います。
 古典劇では、登場人物たちの価値観は明確に規定されていることが多いのですが、実際の私たちは、それほど確固とした人格や価値観があるわけではないですよね。壮大な冒険や壮絶な生き方をする人はほとんどいない。そう考えると、コルネイユの人物描写はかえって面白みを感じます。こういう「そんなに凄くない人たち」を中心に描いた芝居は、当時は珍しかったのかもしれませんね。

――今回演じるクランドールは、どういうキャラクターですか?

 私が演じるクランドールも「そんなに凄くない人たち」のなかのひとりです。職業を転々とすることからもわかるように、現状では満たされず「ここではない何処か」を探し続けています。でも、大きな行動を積極的に起こすわけでもなく、誰かの決断を受けてから行動します。
古典劇では、職業がその人物を規定します。当時は、その身分や職業の家に生まれたら、ほとんどが死ぬまでその身分と職業です。そうすると身体が明確です。侍は侍の身体、農民は農民の身体、お姫様はお姫様というように。地位や損得も明確で、価値観も明確になる。一方クランドールは職業が定まらない。そこに彼を演じる難しさを感じますし、そこが彼の魅力なのかもしれません。

――自分とクランドール、似ていると思いますか?

 それは想定外の質問ですね(笑)自分が演じる役については、あくまで「素材」として捉えています。食材みたいなものですね。役はあくまで「造形していく素材」として考えています。だから、自分自身との類似は考えてないです。食材のピーマンと自分が似てるかなんて考えないのと同じですかね(笑)
 役を与えられたときに、「創作意欲のわく素材」と「全然イメージのわかない素材」という違いはありますけど。
 
――では、役作りはどのようにして行うのですか?

 役を演じる上で考えることは、舞台上の他の登場人物との関係性の中で、その人物がどう規定されていくか、ということです。「この役を魅力的に演じよう」とは考えません。関係性の中でその人物がどのように存在し、どう場面を機能させていくのか、その状況を作り出すことが重要だと思います。それから、登場人物をなるべく自分に引き寄せないことですね。「俺ならこうする」とか「私はこんなことしない」っていうアプローチは、素材を生かせなくなるように思います。
自分の思った通りのことができるわけでもないし、自分がプランニングした通りに観客に伝わって欲しいとも思っていません。ただ、その場面を観た観客のどこかを刺激して想像力が広がってくれればいいな、そう考えています。

――クランドールに何かアドバイスをするとしたら、なんと言いますか?
 
 アドバイスはしません(笑)人からどう言われても自分で気付かないと変わらないから。変わらない人にアドバイスするのって疲れるでしょ(笑)私自身も今言っていることと一カ月後に言うことは違っている気がするので(笑)

――最後に、演じてみて感じた『舞台は夢』という作品についての印象をお聞かせください。

 戯曲に関して言えば『舞台は夢』は劇的な展開の一歩手前で切り替えが起きていて、それが意外でした。ここから盛り上がりそうっていうところで次に行く。ちょっとずつストレスがたまっていく。でもそれこそがコルネイユのねらいなのか?なんて考えてしまいます。
 演出に関しては、舞台と映像の共存のカタチは面白いですね。あんなに堂々と撮影が行われたりマイクで拾ってる姿は衝撃でした(笑)それでいて映像を飛び道具のようには使っていないし、戯曲の魅力も引き出しているように思います。
今までにない作品になりそうなので、ぜひ観に来ていただきたいですね。

(構成:塚本広俊)


SPAC 秋→春のシーズン#1
『舞台は夢』
公演日時:9月23日(水・祝)、26日(日)15:00~
     9月27日(日)14:00~
     10月10日(土)、11日(日)14:00~
公演会場:静岡芸術劇場