今年も残すところあと数日ですが、劇場では舞台の建て込み真っ只中、照明や音響作業も同時に進行し、静岡芸術劇場内各所で『冬物語』の稽古や作業が着々と進んでいます。
なかなかお目にかかることのない搬入口!
舞台芸術公園で作られた舞台装置が芸術劇場に運び込まれました!
劇場客席には、舞台装置の模型の一部が…
何やら指示が書き込まれています。
このクルクルしたもの、何でしょう?
お見せするのは1本だけですが、
実はびっくりするくらい大量にあります。
リハーサル室での稽古も細かな作業に入ってきているようです。
ここから先は、研修でいらしている佐藤結さんの稽古場レポート第二弾です。
宮城さんからはムーバー(動き手)の演技について、人形浄瑠璃における人形遣いと人形の関係になぞらえて説明が入るのですが、動かす対象に生身の肉体と人形の違いはあれ、人形劇にも通じる話でとても興味深く拝聴しています。
今回の舞台では二人一役ということで、人形浄瑠璃における義太夫をスピーカー(語り手)が、三味線は打楽器の生演奏が、そしてムーバーは、いわば、人形遣いと人形の役を一人で担っているのです。人形遣いが人形を操るように、ムーバーは、自らの身体を自らで操っています。スピーカーとムーバーの二人一役とは言いますが、稽古をみていると、ムーバーの俳優はさらに自身の二人一役、つまり自分の身体とそれを操る遣い手としての自分とを自らのうちに含んでいるように思えてきます。日常においても心身一致の状況が人間の常態でないとはいえ、意識的に心身を分けて捉えるというのは並大抵の作業ではありません、、、!
中央に立っているのがムーバー、両脇に座っているのがスピーカー。
(舞台芸術公園での夏の稽古の様子から)
人形劇における人形は、人形遣いが持たない状態ではただの死に体、人形遣いが意志を吹き込んでこそようやく命を持った存在として生きることができるのですが、ムーバーはこの作業をひとりで行っているというわけなのです。人形劇の人形については、「ある作品のためだけに作られ、作品の上演される間にだけ生きる存在であるからこそ役者として純粋である」と人形劇関係者はよく言うのですが、作品の上演される時間以外にも人間として生き、生活をする生身の肉体を操り動かすことのむずかしさをSPACの二人一役には感じます。
二人一役の手法を用いた作品を初めてご覧になる方には、スピーカーとムーバー、生演奏と、どの要素も気になって目まぐるしく視点が移り大変かもしれません。そんなときには、作品を構成するひとつひとつの要素を分解して観劇するのもおもしろいと思います。
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SPAC秋→春のシーズン2016 ♯4
シェイクスピアの『冬物語』
一般公演:1月21日(土)、22日(日)、29日(日)
2月4日(土)、5日(日)、11日(土)、12日(日)
演出:宮城聰 作:ウィリアム・シェイクスピア 翻訳:松岡和子
音楽:棚川寛子 出演:SPAC
静岡芸術劇場
*詳細はコチラ
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