一般公演初日1月21日(土)、終演後に行われたアーティストトークの様子をお届けします。
演出の宮城と出演俳優3人によるトークは、
シェイクスピアの戯曲の中から『冬物語』を選んだ意図や、
一人の人物を二人で演じるにあたって、
ムーバー(動き手)と、スピーカー(語り手)で試行錯誤したことなどなど。
裏話も含めざっくばらんなトークとなりました。
登壇者:宮城聰 (SPAC芸術総監督)
たきいみき(出演 ポーリーナ/ムーバー)
布施安寿香(出演 ハーマイオニ/スピーカー&パーディータ/ムーバー)
本多麻紀 (出演 ポーリーナ/スピーカー)
司会: 大岡淳 (SPAC文芸部)
以下に、かいつまんで文字でも紹介します。
(詳しい内容は、ぜひ映像をごらんください^0^)
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Q:シェイクスピアの『冬物語』を選んだ理由は?
宮城聰:僕はSPACに来るまでは、ク・ナウカという劇団をやっていて、そこではずっと「二人一役」で作品を作っていたんです。SPACに来てからは、「二人一役」を部分的に使った作品はあるんですが、全面的に使った新作はこれまでにないんです。
SPACに来て10年経ったところで、SPACでもそろそろ二人一役の作品をやってみたい、それもシェイクスピアでやってみたいなと思いました。
シェイクスピアを二人一役で以前上演したのは1990年のク・ナウカ旗揚げ公演での『ハムレット』でした。『ハムレット』を「二人一役」でやってみようという理由はいくつかあったのですが、実際にはうまくいかなかったんです。
今回、シェイクスピアを二人一役でやるなら、どの作品が良いかいろいろ考えました。『冬物語』は彼の作品の中でも異色で、近代的な演技術では解決できないところが含まれている戯曲です。これなら、二人一役で活路が開けるのかなと思い、確信はなかったのですが、あてずっぽうというか、「これはダメかもしれないけれども、もう当たって砕けろ!」っという感じで選びました。
実のところ稽古している最中、「これは負け戦だったかな?」と思った時もありました(笑)
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Q:俳優の皆さんは、二人一役をどのように感じ、演じていたのですか?
たきいみき:私は2001年にク・ナウカに入ったんですが、2006年にはSPACに来たので、実はこれまであまり二人一役のムーバーの経験はなかったんです。ですので、今回は新鮮な気持ちでポーリーナのムーバーに取り組むことができました。スピーカーの本多さんの素敵な声(台詞)に身を任せるようにして、動きを担当していました。
ポーリーナという役は、台本を読めば読むほど、よく分からない人だと思いました。亡くなったといわれた王妃ハーマイオニを16年隠していたのかと思うと、すごくドSな人だとも思うし。「王妃の石像が動きます」と言うけれども、これは本当に石像だったのか、それともハーマイオニが石像のフリをして立っていたのかも、よく分からない…
私が好きなポーリーナの台詞に「信じる力をめざめさせて」という台詞がありますが、「王妃の石像を動かすのはお客さんですよ」という気持ちで、このシーンを立たせてもらっています。この場面は、もし私が台詞もしゃべったら過多になってしまうところが、私は身体だけでお客さんに向かい合うことで、観ている人に、私と同じように感じてもらたり、ほかの感じ方をしてもらえたりと、よりいろいろな想像をふくらませてもらえるものになっているのではないかなと。そういう意味では、謎の多いポーリーナという人物を演じるのに、二人一役の手法はすごくあっているのかなと思っています。
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本多麻紀:私はク・ナウカ時代、スピーカーをやらせていただくことが多かったんです。泉鏡花や三島由紀夫などの「語り」の台詞が多かったです。でもシェイクスピアはそういう台詞ではないから、今回スピーカーとしてどうしたらいいのかは、難しいなと思いました。
ポーリーナという人物は、ムーバーのたきいさんと相談しながら作っていきました。たとえば「服の紐を切って」という台詞から始まる、ポーリーナが王に王妃の死を告げるシーンでは、スピーカーの私は、とにかく言葉で王をボッコボッコにするというイメージでしゃべる。それに対して、ムーバーのたきいさんは、王妃を失った悲しみでカスカスになってしまったポーリーナの状態を身体でみせる、ということをしてみました。一人の人物が持ついろいろな側面を、語りと動きで別々に表現するチャレンジができたのは面白かったと思います。
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布施安寿香:私は、夏のワークショップでは、パーディータのムーバーだけを演じていたのですが、12月の稽古の開始直前に配役が変わり、王妃ハーマイオニのスピーカーもやることになりました。その連絡にびっくりしましたが、同時にこの2人は最後に再会するので、このキャスティングで最後のシーンはいったいどうするのだろうか!と思いました。
ハーマイオニは自分では想像もつかない役でした。いつもは言葉に向き合って、「ここはこういうふうにやろう」ということを考えていくんですが、そういうやり方では、自分の知っている世界しか作れないなと思いました。今回は宮城さんからの指摘を自分なりに消化してしゃべったり、ムーバーの美加理さんを見て、この身体からハーマイオニの声は出るんだなと思ったりすると、自分のからだも変わって、いつもとは違うこんな声が自分から出てくるんだという発見もありました。
いろいろなことを、リアリズムで最初にこうだと決めて創らない舞台だからこそ、その瞬間瞬間に生まれてくるものや、解決できないことを楽しんで演じています。
(続く)
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一つの舞台が出来上がるまでには、こんなにも不安や、開き直り(?!)、試行錯誤が。
それぞれが悩み、そして時に楽しみながら、作品が出来上がっていく様子が語られました。
シェイクスピアの『冬物語』にもあるように「時」と、
みなさんの力(演出家・俳優・スタッフはもちろん観客の皆様も)で出来上がる舞台、
ぜひ一人でも多くの方にご覧いただければ幸いです。
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シェイクスピアの『冬物語』
今後のアーティストトークの開催
◆2月4日(土)15:00開演 終演後
ゲスト:小野寺修二(演出家)& 宮城聰(演出)
司会:大岡淳(SPAC文芸部)
◆2月12日(日)14:00開演 終演後
ゲスト:今井朋彦(文学座)& 宮城聰(演出)
司会:大澤真幸(SPAC文芸部)
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SPAC秋→春のシーズン2016 ♯4
シェイクスピアの『冬物語』
一般公演:1月21日(土)、22日(日)、29日(日)
2月4日(土)、5日(日)、11日(土)、12日(日)
演出:宮城聰 作:ウィリアム・シェイクスピア 翻訳:松岡和子
音楽:棚川寛子 出演:SPAC
静岡芸術劇場
*詳細はコチラ
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