ボゴタ演劇祭参加の記
SPAC文芸部 横山義志
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公演三日目。
20時開演なので、ようやくゆっくり眠れる朝。
スタッフは11時ホテル発、俳優は13時ホテル発。
ちょっと散歩する人と、ひたすら寝倒す人に別れている。
私はホテルの近所の闘牛場(ラテンアメリカ最大規模とのこと)まで歩いてみる。往復20分。
午後はみっちり稽古で、演出・演技プランの微修正も。
その甲斐あって、とてもいい舞台になった。
いつもながら熱狂的な反応。
イアソンの「夫が他の女をめとって喜ぶ女はいないだろう云々」という台詞で、必ず笑いが起きる。通訳のアンヘリーカによれば、コロンビアではマチスモ(男性優位主義)が根強いので、それに対する皮肉も理解されやすいのでは、とのこと。
今日はSPAC版『ドン・ファン』で静岡に来ていたテアトロ・マランドロの名物技術ディレクター、ジャン=マルクが観劇してくれた。「いやーよかった、女たちが男に復讐してくれてすっきりしたよ」とのコメント。終演後ホテルに戻り、ジャン=マルクを囲んで、『ドン・ファン』で共に戦ったSPAC技術スタッフたちとコロンビアビールの杯を交わす。ジャン=マルクはかつてインドのケララ州に4年以上滞在してカタカリを学んでいたという。信じられないほど多くの国に住んだことがあって、聞けば聞くほど波瀾万丈の半生である。「引退してカフェでだらだらと世間話をするような人生は耐えられない」と、コロンビア・スイス・フランス・スペイン等々をめぐるオマール・ポラスの新作『シモン・ボリーバル』ツアーの準備に余念がない。
深夜12時、シャトルバスに乗って、フェスティバルのメイン会場の一つ「エル・シウダード・テアトロ(タウン・シアター、といったところだろうか)」に向かう。ここでは巨大なテント(「ラ・カルパ」)が二幕張られ、昼間は家族向けの芝居やスタンダップコメディー、大道芸などをやっているのだが、夜になると有名なラテンバンドやDJが次々と登場し、参加カンパニーのメンバーやフェスティバル関係者たちが踊ったりお酒を飲んだりするフェスティバルバーに変身する。ファビアナや通訳のユキさん、アンヘリーカさんに出会い、歩いているとファビアナが次々とコロンビア内外の演劇人に紹介してくれる。人に会うたび、「おぉ、あの『メデイア』のメンバー?あれはすごかった、今回三つ『メデイア』を見たけど、日本のが一番よかったよ」等々と感想を言ってくれてうれしい。ちょっと話してみると、すごく細かく見てくれていて、ここに来ている演劇人の目の高さが分かる。
午前2時のシャトルバスでホテルに帰る。さすがにへろへろ。しかし同じバスで帰ったファビアナは、翌朝8時から舞台の稽古だという。ブルキナ版『メデイア』の主演女優オディールさんも同じバスで、翌朝10時から観光とのこと。二人とも連日「ラ・カルパ」に通っているようだが、どういう体力なのだろうか。