2018年11月28日(水)
ダーランは夏には50度近くなるときもあるというが、冬は過ごしやすい。今日は最高気温23度、最低気温16度。パリに比べると15度近く暖かいことになる。
午後1時半、女性陣はアバヤを試着。よく見るといろんなデザインがある。サウジで女性が公共の場所に出る際には、体の線が出ないように、このゆったりとした黒い服で体を覆う必要がある。
午後2時、劇場を下見。どこも真新しい感じ。まだあちこちで工事している。技術スタッフはベルギー出身の方が多い。制作米山さんとそっくりな方も。
午後3時、芸術監督のエリーさん、芸術監督アシスタントのカイリーさんとお話。エリーさんはレバノン出身で、カイリーさんはオーストラリア出身。アヴィニョン演劇祭で『マハーバーラタ』と『アンティゴネ』を見てくれていて、昨年アヴィニョンで声をかけてくれたのはエリーさんだった。
エリーさんの話。
「みなさんがサウジアラビアに来てくれて本当にうれしい。この企画をなんとか実現できてよかった。この劇場はサウジアラビアではほとんど初めての本格的な西洋型の劇場で、一般のお客さんに見てもらうようになってからまだ6ヶ月しか経っていません。
この最初のシーズンはゲルギエフ指揮によるマリインスキー劇場のオーケストラで幕を明け、ロシアのクラウンやラジャスタン(インド)の音楽作品などを紹介してきましたが、ほとんどのお客さんにとって、本格的な演劇作品を観るのは『マハーバーラタ』がはじめてです。
全席を使うと850席ありますが、今回は舞台が見にくい席もありそうで、全部は売らない予定です。現状、予約は270席ほどですが、かなり多いともいえます。サウジでは、一週間以上も前に席を予約するような習慣はありません。そもそも、これまでは無料で見るのがふつうだったので、お金を払って劇場に来るような習慣もありません。席の料金は最大170リアル(約4000円)にしていますが、他に似たような劇場はないので、これが高いのか安いのか、なかなか判断が難しいところです。
サウジではSNSの利用率が世界一高いと言われています。前回のインド音楽のときも、初日が明けるまでは全然客席が埋まらずに不安でしたが、初日を見たお客さんからのSNSでの発信から火がついて、20人、50人単位での予約があり、あっという間に満席になりました。」
SPACを知らないどころか、そもそも「劇場」なるものもほとんどなく、「演劇」なるものを観る習慣もないこの国で、どんな人が予約してくれたのだろうか。
カイリーさんによれば、今年の6月24日に女性による車の運転が解禁されたほか、以前に比べて宗教警察による風紀の取り締まりもだいぶ少なくなってきているという。
夕方にホテル前の超巨大ショッピングモールへ。
家族連れなど、多くの人で賑わう。
女性だけの買い物客も多い。ファッションのお店のほとんどはZARAやMANGOなど欧米系のチェーン店で、品揃えは日本やヨーロッパのショッピングモールと大差ない。
そこにアバヤを来た女性たちがたくさん買い物に来ているのがすごく不思議だった。「アバヤを着た女性たちはここで買った服をどこで着るんですか?」と一緒に来てくれたエブラヒムさんに聞くと、「家のなかとか、パーティーのときとか」とのこと。「公共の場所」とそうでない場所とで、だいぶ着るものが違うらしい。
===
◆『マハーバーラタ』(アブドゥルアジーズ王世界文化センターのウェブサイトへリンク)
https://www.ithra.com/en/eventshub/events/201812-mahabharata
◆『マハーバーラタ』サウジアラビア公演(SPACウェブサイト内)
http://spac.or.jp/mahabharata_saudiarabia2018.html
===
SPAC海外ツアーブログ
アヴィニョン演劇祭参加の記:2014年『マハーバーラタ』『室内』上演記録
アヴィニョン法王庁日記 :2017年『アンティゴネ』上演記録
『顕れ』パリ日記2018 :宮城聰最新作『顕れ』上演記録
カテゴリすべて