ブログ

2019年6月22日

イナバとナバホの白兎/パリ日記2019(1)

SPAC文芸部 横山義志
2019年6月13日(木)

 
『イナバとナバホの白兎』パリツアーの先発隊スタッフは午前5時半に静岡芸術劇場からバスで出発。午前11:45羽田空港発の飛行機でパリへ。17時過ぎにパリ着。エッフェル塔を横目に、19時過ぎにケ・ブランリー美術館に到着。

6月19日(水)から、同美術館のクロード・レヴィ=ストロース劇場で『イナバとナバホの白兎』を再演する予定となっている。この作品は2016年に同美術館の開館10周年を記念して委嘱されたものだった。(2016年パリ公演時の日記はこちらでご覧いただけます)

ケ・ブランリー美術館はフランスで最も新しい国立美術館。アフリカやアジアなど、いわゆる大文明に属さない、それまで民族学や文化人類学の研究対象として収拾されていた文物を美術作品として展示するというコンセプトで作られ、多くの議論を呼んできた。

この劇場のこけら落とし公演は、宮城聰演出『マハーバーラタ』だった。2006年の時点では、宮城さんは今ほどヨーロッパで知られていなかったので、かなり思い切った決断だっただろう。その初演時から、日本人が古代インドの叙事詩をもとにつくったこの作品を「「文化が対話をするところ」というケ・ブランリー美術館のコンセプト(当時)にぴったり」とステファヌ・マルタン館長がとても気に入ってくださり、開館10周年を記念する作品を委嘱してくださった。フランスの国立美術館が日本の劇団に新作を委嘱するというのもはじめてだっただろう。

そこで、劇場の名前にもなっているフランス出身の20世紀を代表する文化人類学者クロード・レヴィ=ストロースの仮説を出発点に、作品を作ることになった。レヴィ=ストロースは最後の著作の一つとなった日本文化論『月の裏側』で、「日本の「イナバの白兎」の神話とアメリカ先住民の神話にはアジアで生まれた共通の祖先があった」という仮説を提出している。

第一部では日本の神話、第二部ではアメリカ先住民の神話、そして第三部ではその共通の祖先であっただろう神話を集団創作により再構築したこの作品は、そういえば三年前の上演で、レヴィ=ストロース夫人にも好評を得て、今年も見に来てくださるという。今年はクロード・レヴィ=ストロース没後10年。

ケ・ブランリー美術館に荷物を置いて、ついでに技術スタッフたちと束の間の再会を果たし、10分だけ打ち合わせをして、21時頃に宿へ。
 

 
『イナバとナバホの白兎』パリ公演
Le lièvre blanc d’Inaba et des Navajos

日時:
2019年
6月19日(水)20:00
6月20日(木)20:00
6月21日(金)20:00
6月22日(土)18:00
6月23日(日)17:00

会場:
フランス国立ケ・ブランリー美術館 クロード・レヴィ=ストロース劇場
Le musée du quai Branly, Théâtre Claude Lévi-Strauss

*ケ・ブランリー美術館ウェブサイトでの公演案内はこちら(仏語のみ)