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2021年9月25日

待望の“対面”稽古/『みつばち共和国』レポート

こんにちは、SPAC制作部1年目の戸塚美奈です。
『みつばち共和国』では、演出のセリーヌ・シェフェールさんと舞台美術のエリ・バルテスさんがついに、“対面の”稽古に合流しました。
というのも、お二人は9月頭に来日してから2週間の自主隔離期間中、「リモートでの稽古」を行なってきました。そして遡ること一年、昨年は来日が叶わず、この作品は「リモートでの稽古」だけで初演を迎えました。
このブログではオンライン会議アプリ・Zoomを使った稽古や、二人が一年越しに劇場に合流した初日の様子、そして作品の魅力についてレポートしていきます。
どうぞよろしくお願いいたします!
 
◆ リモートで稽古ってどうやるの?
皆さんは、「Zoomを使ったリモートでの稽古」ってどんな風に行うか想像できるでしょうか?普段からZoomを使っている方も、そうでない方も、ピンとこないという方が多いのではないでしょうか。実は私自身も、Zoomを使った稽古がどのようなものになるのか分かりませんでした。

『みつばち共和国』のリモートでの稽古は、稽古場である静岡芸術劇場とセリーヌさん・エリさんの部屋をつないで行われました。

これは稽古の準備中に撮った、客席の2階席から見た劇場の写真です。数字が書かれた位置にリモートでの稽古に必要なカメラやパソコン、モニターが設置されています。

客席の後方①の位置には、Zoomに接続されたパソコンが設置されていました。舞台を映すカメラの役割としてスマートフォンが接続されています。

そして②の位置には音響スタッフがリモート稽古のために使用していたパソコンとタブレット端末が1台ずつ設置されています。音響スタッフは作品づくりだけでなく、Zoomでのコミュニケーションをスムーズに行うための環境づくりにも大きな役割を果たしていました。

また、③の位置でも舞台を映したタブレット端末を1台Zoomに接続しています。
この位置からの映像で、俳優の表情や仕草など細かいところまでチェックできるようになっていました。

リモート稽古中は通訳の平野暁人さんや山田ひろ美さんもZoomに接続します(④の位置)。通訳は稽古が対面になってからも、話す言葉が違う人同士のコミュニケーションに欠かせない存在です。

そして、舞台の前⑤に設置されているのは大きなモニターです。 
このモニターには①のパソコンの映像がそのままモニターに拡大されて映し出されるようになっています。舞台上にいる俳優をはじめ、劇場のメンバーはモニターに大きく映ったZoomの画面を見てセリーヌさんやエリさんとコミュニケーションをとっていました。
 
◆ 9月上旬、リモート稽古がスタート
リモート稽古の初日は、画面越しではありますが1年ぶりの再会ということもあり、とても和やかな雰囲気で始まりました。


 
セリーヌさんとエリさんは劇場に合流してから確認したほうがいい事と、リモートの環境でもできる事をテキパキと判断して稽古を進めていきます。

また、リモート稽古ならではのこんな風景も見られました。


 
Zoomの画面ではどうしても他の視点より小さく映ってしまう舞台上のメンバーは、大きなジェスチャーで画面の向こうのセリーヌさん達に意思を伝えています。なかでも両腕で大きく丸をつくるOKのポーズは定着し、対面の稽古になった今も見かけるポーズになりました。
 
稽古が終わった後には「自然の声」役で出演する木内琴子の仮録音も行われました。舞台上にアクリルパネルで録音ブースを設置し、セリーヌさんやエリさんとZoomでつなぎながらの録音はリモート稽古ならではの光景です。稽古用に録音したものですが、朗らかで聞く人に寄り添うような、本番がますます楽しみになる素敵な声でした。


▲舞台上に準備される録音ブース
 
◆ いよいよ対面の稽古に合流!
9月20日、いよいよ演出のセリーヌさんと舞台美術のエリさんが対面の稽古に合流しました。セリーヌさんは劇場を見て「magnifique(すばらしい)!」と感激した様子。やっと対面できた喜びを、『みつばち共和国』のメンバー全員で分かちあいました。


 
劇場では、二人に改めてSPACの俳優とスタッフを紹介していきます。そして舞台上に上がる際の足元や手指の消毒、大きな声で話す際にはマイクを使うこと、物の受け渡しの際は消毒をすることなど、SPAC独自の感染防止対策についての説明がされました。
 

 
稽古冒頭の挨拶でセリーヌさんは、
「各セクションが全力を尽くしてくれたから来日できました。皆さんという働きバチが結集し、劇場を大いに揺さぶってくれることを期待しています。」
とSPACメンバーをミツバチに例えながら伝えてくれました。また、この作品を大人から子どもまで楽しんでほしいこと、知識を得るのに年齢は関係ないこと。見たり知ったりするだけでなく、知って考えたことが伝達・伝承していく美しさについて。そして、作品は自然との関わり方が重要で、自然が近くにあり感受性の高いSPACの俳優とこの静岡芸術劇場で公演を行うことがより意義をもつのだという創作への思いなども語っていました。
 
対面の稽古では、初めて直に見る照明や映像、舞台装置、俳優の見え方などをシーンごとに舞台を確認して細やかに調整しています。照明ひとつをとっても光の強さや色、切り替わる速度など驚くほど様々な観点で、SPACメンバーと相談し調整しています。やはり実際に見て確認できることは多く、照明の当たった衣裳の見え方を確認したり、舞台床面に塗られた色を塗り直したりと調整がすすめられています。


▲俳優の影を見ながら照明を細かくチェックするセリーヌさん


▲舞台美術の色合いを調整するスタッフ


▲俳優やスタッフと衣裳をチェックするセリーヌさんとエリさん
 
昨年の初演からさらに進化し、開幕までいよいよ一週間となった『みつばち共和国』。俳優・スタッフ一同、SPAC独自の感染症対策ガイドラインに基づき感染防止策を講じて稽古を進めています。

みつばちの神秘に触れ、四季の美しさや自然との関わり方を見つめる『みつばち共和国』は、大人から子どもまでお楽しみいただける、今の世の中でこそご覧いただきたい作品です。
静岡芸術劇場で、皆様をお待ちしています!
 
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SPAC秋→春のシーズン#1
『みつばち共和国』

メーテルリンク作『蜜蜂の生活』に基づく
作・演出:セリーヌ・シェフェール
日本語台本:能祖將夫

<静岡公演>
2021年10月2日(土)、3日(日)、9日(土)、10日(日)、23日(土)、24日(日) 各日14時開演
会場:静岡芸術劇場(グランシップ内)

<下田公演>
2021年11月27日(土) 14時開演
会場:下田市民文化会館 大ホール

☆一般公演は各日関連企画あり!☆ 詳細はこちら
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関連リンク/2020年初演時の振り返りブログ