ブログ

2020年11月21日

コロナ禍の『みつばち共和国』公演を終えて(後編)

前編はこちら>
 
~できる限りの対策を取りながら~

 『みつばち共和国』は、俳優の演技と美術・映像・照明・音響が緻密に組み合わさった演出になっていて、加えてコロナ対策をしなければならず…時間は無いのにやることはいっぱい…だれもがもどかしい気持ちになっていたと思います。そんな中でもひとりひとりがやるべきことをやりながら、全体としてのアンサンブルを生み出していく…まさに台本にある「蜂の巣の精神」を宿したような…そんな現場になっていくように僕には感じられました。虫や鳥やイノシシたちの気配をビンビンに感じる舞台芸術公園の環境がそう思わせてくれたのかもしれません。
※現場の苦闘は、通訳の平野暁人さんが「劇場の「リモート稽古」とは?「舞台芸術」の「リアル」の意味【オンライン通訳】」にとても詳しく書いてくださっています。ぜひご覧ください。
 
 ここで作品に取り込まれたコロナ対策を一部ご紹介します。


▲Zoomでセリーヌさんに衣裳をチェックしてもらう永井健二さん(写真右端)と仲村悠希さん(写真右から3人目)。写真左から2人目が衣裳を担当した駒井友美子さん。
 
 永井さん演じる巣箱保護員はセリフを発するためフェイスシールドとワイヤレスマイクを着用しなければならず、養蜂家の防護服を模した形の帽子にフェイスシールドが組み込まれました。
 

▲シールドが永井さんの顔にあたらないように細かい工夫が施されています。
 

▲セリフを発するのはサーキュレーター(写真内の赤い〇部分)を置いたエリアに固定。発声時はファンが回って風を起こします。舞台から客席にエアロゾルを届かせないための工夫です。
 
 女王バチ・働きバチ・雄バチを演じるたきいみきさんと仲村さんの衣裳にはマスクと手ぶくろが組み込まれ、セリフはすべて録音することに。
 

▲作品世界を壊さないようにデザインされたマスクと手袋 
 

▲コロナ禍の公演再開ということで、いつにも増してテレビや新聞に取材していただきました。
 
 客席もコロナ対策で、俳優とお客様の距離、お客様同士の距離をとった結果、客席数は通常の楕円堂公演の3分の1以下に。お客様には、手指消毒、検温、来場者カードの記入などにもご協力いただきました。


 

▲楕円堂に入る前に手指消毒のお願いとソーシャルディスタンス目印
 

▲楕円堂に入る前に検温のお願い
 

▲楕円堂入ってすぐのスペースで来場者カードご記入のお願い。感染症対策の黄色い張り紙は、グラフィックデザイナーの山口良太さんがデザインされたものです。こちらで無料公開されています。本当にありがたいです!
 

▲開演前の畳ロビーでもソーシャルディスタンスのお願い
 

▲雨天時に混みあわないように、傘置き場にテントを設置。
 
 終演後はお客様と出演俳優との交流の場も設けることができず、寂しく感じでいたのですが、お客様には舞台芸術公園の環境そのものも楽しんでいただけた様子で、天気のいい日が多くてホッとしました。(※公演初日の10月17日は雨だったのですが。。)
 

▲舞台芸術公園入口から見える富士山
 

▲楕円堂ロビーから見える富士山
 

▲楕円堂ロビーには、SPACメンバーが制作した巣箱を置きました。
 

終演後はお客様による富士山撮影会に。
 
~公演を終えて、すべてのつながりに感謝~

 今回の公演では、お客様と言葉を交わすことがあまりできませんでしたが、その分なのかいつもの公演よりもたくさんアンケートにお答えいただくことができました。ありがとうございます!
 お客様からいただいたご感想を少しご紹介いたします。

  ● 久々にSPAC公演を生で観られてうれしかった。
  ● コロナ禍でふさぎがちだった心に希望を与えてもらえたような気がします。
  ● 劇場とそれをとりまく環境がすばらしい。いい空気と感動をいただきました。
  ● この場所(ここに来るまでの自然の中)で、みつばち共和国を観れたこと、良かったです。
  ● みつばちの巣箱の中にいるような感覚になりました。
  ● 心の栄養としてのSPACが必要なんだと再確認しました。
  ● 心があたたまり、涙が、感動が、こみあげてきました。
 
 「劇場は出会いの場」というのは、常に大事にしたいと思っていることですが、舞台作品との出会い、人との出会い、そして場所との出会いの豊かさをありありと感じる『みつばち共和国』公演でした。ご観劇くださったお客様、公演スタッフに入ってくださったSPACシアタークルーのみなさん、『みつばち共和国』創作に関わったメンバー、他の様々なプロジェクトを動かしてるSPACメンバーたち、舞台芸術公園の木々、お茶畑、虫たち、動物たち、月、星たちに、この時期に『みつばち共和国』公演をとおして出会えたこと、そしてなにより、「花から星まで、すべてはつながっている」(巣箱保護員のセリフ)と教えてくれた『みつばち共和国』に心より感謝いたします。
 『みつばち共和国』の公演中、フランスをはじめヨーロッパでの感染者数が増えてきて、外出禁止令なども出される事態となりました。日本でも感染者数が再び増え始めてきています。予断を許さない日々が続いていますが、可能な限りの対策をとりながら演劇をつくり発信し続けていきたいと思っています。いつか、みなさんと、そしてセリーヌさんやエリさんともお会いできる日が来ることを楽しみにしております。
 『みつばち共和国』ページにて舞台写真を一挙公開しております。よろしければご覧ください。
 それでは!
 

丹治 陽(SPAC制作部)

 
=======================
『みつばち共和国』
メーテルリンク作『蜜蜂の生活』に基づく

作・演出:セリーヌ・シェフェール
日本語台本:能祖將夫
台本下訳:井上由里子
通訳:平野暁人

出演:たきいみき、永井健二、仲村悠希、坂東芙三次 [50音順]

2020年10月17日(土)・18日(日)・24日(土)・25日(日)
会場:静岡県舞台芸術公園 屋内ホール「楕円堂」

*公演詳細はこちら
=======================