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2021年11月4日

『桜の園』ブログ#1 稽古初日はオンラインでお久しぶりです!初めまして! 

10月よりSPACでは「秋→春のシーズン」が開幕し、静岡芸術劇場ではシーズン1作目の『みつばち共和国』の一般公演が10月24日に無事に終わりました。『みつばち共和国』は、今後は県内ツアーに旅立ちます。そして劇場内ではシーズン2作目『桜の園』の稽古が着々と進められています。

『桜の園』ブログでは、本作の創作の様子や魅力をこれからたっぷり皆様にお届けいたします。

初回のブログでは、今年の夏に行われた第1期稽古の様子を振り返ります。
 
静岡での国際共同制作の再開

桜の園』はSPACとフランス国立演劇センター・ジュヌヴィリエ劇場の共同製作による新作です。SPACでは毎年、様々な国際的な事業を行っていますが、昨年は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、「ふじのくに⇄せかい演劇祭2020」は中止、またそれ以降の国際共同制作も延期やリモート稽古となり、外国のアーティストと時間と空間をともにしての創作は、できない期間がしばらく続いていました。しかし、今年は『桜の園』でようやく海外アーティストを静岡に招いての国際共同制作が再開できることとなりました。

 
それでも、最初の稽古はオンライン!?

SPACでは新作を作る時には、たいてい稽古期間を2つの期間に分けていて、『桜の園』の第一期稽古が行われたのは、夏。その頃は日本でもヨーロッパでも、まだ新型コロナウイルス感染者の数が多く、日本入国には出発から72時間以内のPCR検査陰性証明書の提出をはじめ、フランス出発前にも日本入国後にも様々な条件が付される状況でした。フランスチーム来日に向けて準備を進めていた日仏両サイドのスタッフは、本当にこの企画が実現できるのか、最後まで内心ではハラハラしていましたが、関係各所の多大なご協力もいただきまして、7月下旬、メンバー全員が無事に来日することができました。

しかし、入国した後も、14日間は日々オンラインで健康観察レポートを提出し自室に待機することが求められ、劇場でみんなが集まって稽古ができるのは2週間先。それまでの時間も有効に使おうということで、まずはオンライン会議ツールZoomを使用してのリモート稽古が行われました。

ジュヌヴィリエ劇場ディレクターのダニエル・ジャンヌトーさんがSPACで演出するのは、『ブラスティッド』(2009年)、『ガラスの動物園』(2011年)、『盲点たち』(2015年)に続いて、今回が4作目です。

今回SPACの出演俳優の多くは、かつてダニエルさん作品に出演したメンバー。フランスチームは全員、何度かダニエルさんと創作を共にしたことがある方々。劇場でのリアルな稽古に先立って、画面越しでのあいさつは「お久しぶり!」と「初めまして!」です。

メンバー紹介や稽古や本番で現在SPACが実施している感染症対策の説明などが一通り終わった後、稽古開始にあたりダニエルさんから座組みんなへのメッセージが。

 
<オンライン稽古初日 演出ダニエルさんより>

パリで飛行機に乗る2、3日前まで、この企画が本当にできるのか分かりませんでした。だから今こうして静岡にいられるのは夢みたいです。

これから私たちが取り組むチェーホフの『桜の園』は不確実性をテーマにした作品です。登場人物たちは「今私たちのいる世界は決定的に揺り動かされている」と感じていますが、それがどうなるか、この先に決定的な破局が来るのか、それともユートピアが来るのかは分かりません。彼らの状況は今の私たちの状況と重なるのかもしれません。

けれども、チェーホフの作品に共通するのはユーモアと軽さです。この状況にとらわれずに、演劇を演じることの楽しさの中で、チェーホフのユーモアと軽さを見出していきましょう。お客様に楽しいと感じていただくには、何より演じている人たちが、まず楽しんでいないといけませんから。

 

SPACでは独自の厳しい感染症対策ガイドラインにしたがって稽古でも本番でもマスクをしなくてはならないなど、様々な制約がありますが、このような状況の中でもこうして演劇の創作ができること、それも海外のアーティストを招いて共同制作ができることのありがたさと喜びを、そして今私たちがチェーホフの『桜の園』に取り組むことの意義を皆が改めて感じる時間でした。

 
日本語とフランス語でロシアの物語を

そして、早速オンラインで台本の読み合わせから稽古スタートです。今回出演するのは、日本人8人とフランス人5人の計13人。日本人とフランス人がほぼ半数に近い割合の混合チームでロシアの作家チェーホフの『桜の園』に挑戦。いったいどんな稽古になるのでしょうか。


▲オンライン稽古での読み合わせの様子

 

まずはダニエルさんが、チェーホフという作家や、『桜の園』がどういう作品なのかということを簡単にしゃべった後、早速1幕の冒頭から読み合わせです。すでに配役は決まっているので、それぞれの俳優が自分の役の部分を読んでいきます。SPACの俳優は日本語で、フランス人の俳優はフランス語で… でも、二つの言語でどうやって?そうなんです。国際共同制作で作品を作るときには、それぞれの俳優やスタッフが自分の母国語の台本の他に、制作スタッフがこんな台本を作成して座組全員に渡しています。


▲『桜の園』日仏対訳台本

1幕冒頭
小間使いの娘ドゥニャーシャと商人ロパーヒンが、桜の園の女領主ラネーフスカヤを待つシーン。

今回の対訳台本は、左側に日本語、右側にはそれに対応するフランス語が併置されていて、どちらの言語で発話されるのかすぐわかるように、実際に話される言語の方に色が付けられています。そして、日本語の台詞には、フランス人チームの皆さんにも発音が分かるようにとローマ字表記もつけてあります。通訳さんの支えに加え、こういう対訳台本を用いて、国際共同制作の稽古は進められていきます。

それでも稽古初日の読み合わせはパソコンやタブレットの画面越しで、2か国語が飛び交うとなると、お互いの台詞の位置の把握や、掛け合いなど、けっこう難しいのではないかと思っていましたが、いざ始めてみると、2言語をまたぐ台詞の掛け合いもスムーズに進み、意外でした。

ちなみに、客席のお客さんは、どうやって二言語を理解するのと思ったあなた!フランス語の台詞には、舞台上に字幕が表示されますのでご安心ください。

 

『桜の園』ブログ、初回はこのあたりまで。次回は待機期間が明けてからの劇場稽古の様子をお届けします。

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SPAC秋→春のシーズン#2
『桜の園』

演出・舞台美術:ダニエル ・ジャンヌトー
アーティスティック・コラボレーション、ドラマツルギー、映像:ママール・ベンラヌー
作:アントン・チェーホフ
翻訳:アンドレ・マルコヴィッチ、フランソワーズ・モルヴァン(仏語)、安達紀子(日本語)

出演:鈴木陽代、布施安寿香、ソレーヌ・アルベル、阿部一徳、カンタン・ブイッスー、オレリアン・エスタジェ、小長谷勝彦、ナタリー・クズネツォフ、加藤幸夫、山本実幸、アクセル・ボグスラフスキー、大道無門優也、大内米治

<静岡公演>
2021年11月13日(土)、14日(日)、20日(土)、21日(日)、23日(火・祝)、28日(日)
12月12日(日)各日14:00開演
会場:静岡芸術劇場(グランシップ内)

<磐田公演>
2021年12月3日(金)13:30開演
会場:磐田市竜洋なぎの木会館 大ホール

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