「Shizuoka春の芸術祭」2作品目となるレバノンのアーティスト・ラビァ・ムルエの『消された官僚を探して』。
そのラビァから衝撃的なメールが入ったのは8日のことでした。
「お元気ですか?ビザは取れたのですが、状況は全くよくありません。内戦が始まったようです。すぐには終わらなそうな雰囲気です。空港はヒズボラのメンバーに占拠されて閉まっています。レバノン全体がヒズボラの捕虜になってしまいました。街で戦闘が始まりました。ベイルートは燃えています。」慌ててニュースを探してみたところ、確かに、反政府勢力ヒズボラが空港やそこに至る道を封鎖していて、ベイルートの街で戦闘が起き、死者が出ている、という報道がありました。18年前に終わった内戦以来、はじめての状況だそうです。
翌日には、ラビァが仕事をしている与党系のテレビ局もヒズボラに占拠され、放送が停止になった、というメールが来ました。ラビァと私たちスタッフとで連絡を取り合い、何度も現地の航空会社に問い合わせたりして、一時は飛行機が出そうだ、という話もあり、リスクは自分で負うので、道路が分断されてても空港まで歩いていく、とまで言ってくれたのですが、結局飛行機は飛ばないことがわかりました。今にして思うと、無理をしないでいてくれて本当によかった、と思います。ご存じのように、ベイルートでは激しい銃撃戦が繰り広げられ、今でもレバノン各地で小規模な戦闘が続いています。50人以上の方が命を落としたそうです。
ラビァは、そんな状況だからこそこの作品を上演する意義がある、といってくれたので、わたしたちも一緒に公演が実現できる道を探り、「インターネットのライブ映像通信による公演」という形にたどり着きました。(つづく)