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2023年3月11日

『人形の家』出演俳優にちょっと聞いてみました(前半)

こんにちは。制作部の丹治です。
2/11(土)に幕を開けた新作『人形の家』の公演は、今週末の3/11(土)・12(日)を残すのみとなりました。
公演を重ねるごとに熟成されていく感じがする舞台を観ながら、ふと「俳優はどんなことを考えながら演じているのか?」と気になりましたので、ちょっと聞いてみました。
 
たきいみき 篇
 

 
丹治
この作品の核となるノーラを演じるたきいさんは、ずっと舞台に出ずっぱりだし、セリフも多いですね。物語が進むにつれて、いろんなことに気づいていくノーラの言葉が随所で印象に残るのですが、セリフを発していないときも何かを語っているような気がします。
そんなことを感じさせるのが、ドアの開け閉めの動き。
この写真はその瞬間をとらえたものですが、このときはどんなことを考えていますか?
 
たきいみき
「固定点」5%
「リアルなドアとドアノブ」10%
「直前に関係した人物との関係性」40%
「空間の感じ、客席の空気感、相手役の今日の雰囲気のことなどその瞬間
ごとにいろいろ」10%
「トルヴァル大好き」135%(最後のドア開けは除く)

小野寺修二さんの演出作品『オイディプス』『変身』で教わって、たくさん稽古した固定点というパントマイムの概念があります。
固定された「ここに存在してあるもの」に触れるイメージを持つ感じ。
リアルなドアを想像して触れる。
ドアのヒンジとドアノブの描く円周、ドアノブが水平に動く様子もリアルに想像。
まずテクニックとして稽古始めの頃は100%このことを考えていました。つまり段取り稽古という感じ。

で、稽古が進むと少しずつテクニックから離れてお芝居の流れの中で動作が出来るようになります。
触れる時に体感するドアノブの温度がかわってきたりします。
冒頭の帰宅シーンでは触れると幸せ感に満たされるのに、問題が起きてくるとドアノブの触感もヒヤリと冷たく感じてしまいます。
これは他の人との関係性が影響しているんでしょうね。なにも考えてはいませんでしたが改めてここに書いているとそう思います。

ちなみに一番気に入ってるドアのマイムがらみは、2幕でトルヴァルの部屋に鍵をかけて開かないか確かめる所。
地味に上手にできていると、自己満足しています。笑
みなさんも残りの公演で、上手に出来ているかぜひチェックしてみてください^-^

そして基本的にノーラは「家にいる=トルヴァルに包まれている」という身体性の超恋愛体質さんだと思うので、いつでもトルヴァル大好き、トルヴァルファースト。
ドアの開け閉めばかりでなく、お茶を入れてる時も裁縫してる時もランク先生に告られているときも家の中すべてでトルヴァルを感じてるのだと思ってます。
(このエネルギーが、自分への教育にも注がれることを願ってやみません。ノーラ、ファイティン。)
だから最後のドア開けは、この癒着を引きはがす作業なので本当に痛い。
溶解点に達してるくらいの熱いものに触れて掌の皮膚がジュってなってるのをべりべりと…あーーー。いたーーーい。

なーんてことを考えながらドアを開け閉めしております♡

 
 
加藤幸夫 篇

丹治
ノーラの秘密を知る弁護士クログスタを演じる加藤幸夫さん。
写真は元恋人リンデとのシーンで、青い照明がとても印象的です。
このときはどんなことを考えているんですか?
 

加藤
何を考えているんでしょうね?
正直、自分でも分かりません。
ただ、自分の身体の内と外のあらゆるものをキャッチしようとは努めています。なので、舞台上で”考えている“というよりも”感じている“ということかもしれません。
中でも、特にリンデを演じる葉山さんから受けるエネルギーを敏感に感じて舞台に立っているつもりです。
というわけで、もしかしたら何も考えてないかもしれませんね。

 
武石守正 篇

丹治
武石さん演じるドクトル・ランクは、哀愁の中にユーモアを感じさせると言いますか、陰と陽が絶妙にまじりあっている人物に見えます。写真は、酔って陽気になっているシーンですが、このときはどんなことを考えていますか?

武石
そのように感じてもらえたのなら嬉しいです! 写真は自分の死を確信したあとの、別れの場面ですね。ランクは最後まで「死」も「別れ」も正面から告白する事ができません。 「別れ」を悟られないように、ちょっと大袈裟に酔ったフリをし、陽気に去って行くというプランで演じています。そのほうが彼の孤独が滲んでくるのではないかと思ったからです。稽古では「絡み酒」のような、タチの悪い酔い方をするパターンも試してみました。それも面白くなりそうな気がしましたが、その前に登場した場面との対比など考慮して今回は陽気な方を選択しました。
俳優としては、ベロベロに酔った演技とはいえ、出たとこ勝負のデタラメでは成立しないので、ちゃんと準備したうえで、身体と感覚のバランスや関係性など選択しながらやってます。 短い場面ですが、変化が多いので演じていて面白いですね。
 
 
後半(葉山陽代さん、bableさん、森山冬子さん)もぜひご覧ください!

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SPAC秋→春のシーズン2022-2023 #4
『人形の家』
2023年 2月11日(土・祝)・12日(日)・19日(日)
3月4日(土)・5日(日)・11日(土)・12日(日)
各日14:00開演
会場:静岡芸術劇場

演出:宮城聰
作:ヘンリック・イプセン
訳:毛利三彌(論創社版)
出演:たきいみき、加藤幸夫、武石守正、葉山陽代、bable、森山冬子

https://spac.or.jp/au2022-sp2023/dollhouse_2022
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