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2023年4月16日

『XXLレオタードとアナスイの手鏡』の魅力を制作部スタッフがご紹介♪

演劇祭開幕まで2週間!
今年は韓国から3作品がラインナップしていますが、そのうちの1つ『XXLレオタードとアナスイの手鏡』を制作部スタッフの計見が、演目担当の視点からご紹介します♪


 
演出のチョン・インチョルさんは、2019年に『ボッコちゃん~星新一 ショートショートセレクション~』を東京芸術劇場で上演されていて、日本での上演は今回が2度目となります。

そんなインチョルさん率いるシアター・カンパニー・ドルパグは、10年間という活動期限を設けて2015年に設立されました。ドルパグは、日本語で「突破口」という意味を持ち、「階級」「若さ」「ジェンダー」に焦点をあてて、演劇を通じて「世代」「場所」そして「俳優」をつなげるような活動を行なっています。
 
今回上演する『XXLレオタードとアナスイの手鏡』が創られたきっかけは、2014年に起きた韓国の大型客船「セウォル号」の沈没事故でした。セウォル号には、修学旅行中だったアンサン市の高校生がたくさん乗船しており、この事故でほとんどの学生が亡くなってしまったことは、韓国社会に大きな衝撃を与えました。その後、アンサン市を中心に、若者をめぐるさまざまな問題への関心が高まっていきます。この作品も、アンサン市から提案を受けて創られました。

2015年に初演され、その後も韓国各地で繰り返し上演されてきましたが、その間にも、世界的な広がりをみせた「MeToo運動」やコロナによって変化し続ける韓国社会とともに、この作品もアップデートされてきました。
 
物語の舞台は、大きな住宅団地の中にある高校。その高校に通うジュンホは高身長で体格も良く、いつもキチンと制服を着ている模範的な学生ですが、女性用レオタードを着ることが彼の密かな楽しみになっています。ある日、顔にモザイクがかかったレオタード姿の男性の写真が拡散。それは学校で孤立してしまっているヒジュの仕業で、その写真を口実に、体育の課題であるダンスのペアになってほしいと言い寄られてしまいます。ジュンホはガールフレンドのミンジや同級生に正体をバラされることを恐れて渋々承諾。最初は全然乗り気ではなかったジュンホですが、誰にも言えなかった本当の自分を共有できたことや、目標に向かい努力しているヒジュのことを知り、徐々に距離を縮めていきます。同級生たちにからかわれ、ミンジから拒絶されてしまったジュンホですが、ヒジュと過ごす日々のなかで緩やかに変化が生まれ…

ジュンホとヒジュを否定する同級生たちもそれぞれに悩みや問題を抱えていて、タイトルにある「アナスイの手鏡」にはミンジと母親の物語が込められています。
 
作品の背景にあるテーマは、ちょっと重いように感じてしまいますが、登場人物たちが置かれている状況や悩みは多くの方が共感を覚えるのではないでしょうか。

また、常に全員が舞台上にいるという演出で、ドルパグのポリシーでもある「私たちはお互いに影響しあい、みな繋がっている」ということが可視化されているので、客席から舞台を観ながらも、ドルパグのメンバーと議論をしているような感覚になる作品です。

SPAC制作部 計見葵

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【演劇/アンサン・韓国】
『XXLレオタードとアナスイの手鏡』
日時:5月3日(水・祝)14:00、4日(木・祝)13:00
会場:静岡芸術劇場
上演時間:90分(途中休憩なし)
韓国語上演/日本語字幕

演出:チョン・インチョル
作:パク・チャンギュ
製作:シアター・カンパニー・ドルパグ
https://festival-shizuoka.jp/program/xxl-leotard-and-anna-sui-hand-mirror/
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