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2024年1月21日

『ばらの騎士』ブログ♪7 サロンを振り返る

静岡芸術劇場にて、絶賛上演中の『ばらの騎士』。本作は初の試みとして、創作現場を公開する有料企画、『ばらの騎士』サロンを展開していました。

私たちは、作品の上演が決まると、その作品について学び、稽古の中でアウトプットしていきます。その過程をお客様にも体感していただこうとサロンを始め、文芸部による作品講座や、稽古見学を実施しました。

▼第一回目のチェックインについてはこちらのブログをお読みください♪
https://spac.or.jp/blog/?p=33435

9月のチェックインから、4か月間続けてきたサロン、最後のリアル開催は一般公演日の1月8日(月祝)終演後にに行われた「スペシャル・レセプション」でした。演出家を始め、俳優やスタッフとの交流会、とても充実した時間となりました。

今回のブログでは、この『ばらの騎士』サロンに参加してくださった、静岡県出身で横浜を拠点に演劇活動をされている熊谷ひろたかさんにインタビューをしました。

熊谷 ひろたか

演出家。演劇ユニット平成レトロ主宰。
1996年生まれ、静岡県出身。
横浜を拠点とし、平成レトロ全作品の構成・演出を担う。
古典作品を中心に演劇を儀式的なものとして捉え舞台に立ち上げる。
日本演出者協会会員
過去作品に「ロミオとジュリエット」「存在しない儀式への立ち合い」等

 
 
 
1. まず、『ばらの騎士』サロンに入会されたきっかけを教えてください!

SPACの作品は非常に面白いものが多く劇場へとよく足を運んでいるのですが、作品を観るたびに、どのような稽古をしているのだろうかと気になっていました。「ばらの騎士」サロンでは本番までの稽古見学が出来るということで興味を持ちました。
また、今作で共同演出を手掛ける宮城さんは僕が最も尊敬している演出家であり、その演劇論には強く影響受けています。その宮城さんが作品を構築していく過程を見逃すわけにはいかないと思い入会を決めました。
 
2. 5回の講座・トークショーがありましたが、ご自身にとって参考になった回、印象に残っている場面はありますか?

SPAC制作部座談会が非常に面白かったです。座談会では、前半で、公共劇場・劇団としてどう運営されているかや、年間を通した予算編成から広報物の作成など、多岐にわたる制作業務についての説明があり、後半では、制作部の方々と座談会の参加者が複数のグループに分かれ、今後SPACがどうあるべきかについて議論を行う2部構成となっていました。この後半の議論において、参加者の方々が今後のSPAC在り方や県内における認知度向上の方法などについて率直な意見を交わしているのが印象的でした。参加者の多くは静岡県在住の方で、自分がどうしてSPACを観るようになったか、身の回りで劇団がどう認知されているのかなどの、個々の経験をもとに、SPACの作品をより多くの人に届ける方法を考えている様子は、まさに劇団・劇場が地域の人々とともにあることを示しているなと感じ、印象深かったです。

3. 8月の第一期稽古、11月からの第二期稽古と長い期間を経て公演を迎えた本作。熊谷さんをはじめサロンメンバーの皆さんには11月、12月に行われた計10回の稽古見学にご参加いただきました。演出家、スタッフ、俳優も、皆さんがいてくれたことで得た気づきや和やかな創作の時間に感謝しています。稽古見学をされてのご感想をお聞かせください!

稽古見学は本当に刺激的な場でした。見学日の初日では、安全な作品作りのためにどのように稽古場を運営していくかや、そもそも稽古場とはどのような空間であるべきか、などについて俳優や演出家を中心に議論が行われており、僕自身も一人の演出家として大変勉強になりましたし、SPACでさえも試行錯誤しながら稽古をしていることを知れたのは非常に勇気をもらえる出来事でした。
 また、今回の稽古を見て「作品が立ち上がってくる」という印象が強くありました。演出家が具体的な指示を出して作品を組み立てるのではなく、俳優の方々が話し合ってシーンが出来上がっていくのです。演出の寺内さんや宮城さんは、俳優たちが作ったものに対して、外からどう見えるかについてフィードバックを行ったり、時として「台詞」や「身体」についての禅問答のような問いを投げかける。俳優の方々はそれをもとに再度話し合いを行う。そんなプロセスが繰り返されることで、徐々に作品が立ち上がってくるような感覚を覚えたのです。この方法は演出家と俳優がお互いを信頼しているからこそ可能である、そんな手法だなとも感じました。
この演出手法故か、稽古見学のたびに、以前見たシーンが全く別の表情を持ったシーンへと変化していたりするのも非常に面白い体験でした。まるで作品が生き物のように流動的で常に変化していくため、見学の日は、今日はどんな風に変わっていくのかと、とても楽しみでした。

4. SPAC版『ばらの騎士』は、20世紀初頭に書かれたオペラを原作としています。ドイツ語で書かれた台本(リブレット)から本作の上演に書き直され、新たに作曲された音楽で上演する演劇作品です。長い期間作品を共に伴走してくださった熊谷さんにとっての、この作品の魅力を教えてください!

リズミカルに進んでいく喜劇的な作品ですが、一人一人の登場人物の置かれた状況や心情を考えると、人と生きることの様々な側面が見えてくるのではないかと思います。観る人によって全然違った感想が出てくる多面性を持っているのではないかとも思うので、友人や家族と一緒に観て、作品の感想を共有し合うのもきっと楽しいと思います。また、稽古場で変化を続けてきた本作品が、本番を迎えた後どんな変化をしていくのかという点も非常に魅力的な部分なのではないでしょうか。

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インタビューにお答えくださった、熊谷さんありがとうございました。
サロンの参加者にはご自身も演劇活動をされている方や、SPACのことを応援してくださっている方、そして、SPACの作品をまだ観たことがないけれど・・と多様なメンバーが、東京や静岡県内各地から集まっていました。

「講座でばらの騎士への理解を深め、稽古で形創られる過程を楽しみ、ゲネプロで最終的にどうなったのか観られる。とても楽しい時間でした。」「稽古で自分が好きになったシーンを、稽古中、何度も観て味わえた」「演出家も音楽家も俳優さん達も、各々が納得が行くように、何度も話し合いと演技を繰り返して行く作業が、あの舞台を作り上げるんだな!と感激しました。」と感想をいただきました。

月1で開催した講座や、定期的に公開した稽古見学で、サロンメンバーの皆様には足繫く劇場へ通っていただきました。メンバーの皆さんに、作品の創作過程を見守っていただいていることを、心強く思っていました。

本作は、SPACの新作の中でも、長い期間をかけて創作されました。しかし、全ての作品がそうであるわけではありません。再演の作品など、短い期間で製作される作品もあります。様々な方法で創られていく演劇作品・・・、この創作現場を公開する新たな挑戦をまたみなさまにお届けできたらと思っています。

宮城は「稽古場にいると、『あうん』の呼吸で分かるといった種類の閉鎖性が、必要な気がしてしまう。他者がいることで、それが解消される方向に進む可能性はあるのではないか、『ばらの騎士』サロンで稽古場を観にきてくださる方々がいることは、僕にとってとても励みになりました。」と語っています。

SPACの今後の取り組みにも、ぜひご注目ください!

(SPAC制作部・佐藤美咲)

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SPAC秋→春のシーズン2023-2024
#3『ばらの騎士』


演出:宮城聰・寺内亜矢子
作:フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
音楽:根本卓也
出演:石井萠水、大高浩一、木内琴子、貴島豪、小長谷勝彦、榊原有美、佐藤ゆず、武石守正、永井健二、本多麻紀、牧山祐大、宮城嶋遥加、森山冬子、山本実幸、吉植荘一郎、若宮羊市[五十音順]