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2024年2月12日

『ばらの騎士』ブログ♪8 “ズボン役”ってなんだ??

みなさまこんにちは!
2月に入り、日々の寒暖差が耐え難くなってきましたが、SPAC新作『ばらの騎士』はホットに日々公演を行っております。

静岡芸術劇場では、1月10日(水)~3月8日(金)の期間にげきとも公演(中高生鑑賞事業公演)を上演しています。23公演で5,000人以上の学生の方に観劇いただきます!
一般公演とげきとも公演では、客席の反応が違うのも発見の一つだったりします。

本作は3幕で構成されているのですが、その幕間(まくあい)の時間では、元帥家の執事(石井萠水)によるフリートークが日々繰り広げられており、客席の皆さんとコミュニケーションも♪ 中高生の集中を惹きつけ、物語を理解しやすいように工夫を施します。石井のセンスが光るアドリブに毎回客席から笑いが起こっています。

劇中に登場する青年オクタヴィアンと娘ゾフィーは、実は中高生の皆さんと同世代。ただ舞台設定は明治なので既に学校を卒業し、政略結婚をする年齢であることや、夫がいないと何もできないよ~というゾフィーの考えには現代的に共感が難しいかもしれません。しかし、親に反抗したい!、それは古い世代の意見だ!などと、令和の中高生にも共感できる部分もあるはず!
最後に元帥夫人がオクタヴィアンに「あなたはもうご自分に責任を持つお歳ですよね。」と自分自身での決断を迫るこの台詞には、はっとさせられる生徒さんもいらっしゃるかもしれません。

そして何よりも、かなりウざめなオックス男爵と結婚させられそうになるゾフィーを守るオクタヴィアンの姿、とーってもかっこよくて、キュンキュンしてしまいます♥
そんなオクタヴィアンを演じるのは、山本実幸

女性が男性を演じるということに、珍しい!と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そうでもなかったりします。日本の伝統芸能である歌舞伎も元々は女芸人の出雲阿国が男装して踊ったことが始まりとされているんです。
また、原作のオペラの世界では、男装する女性歌手の役割を“ズボン役”と呼んでいます。元々フランス・オペラの伝統だったらしいのですが、『ばらの騎士』の原点、ドイツ・オペラにも多いそうです。その中でも有名なのはモーツァルトのオペラ『フィガロの結婚』に登場する、ケルビーノという女性を見ると恋に落ちてしまう少年。

『ばらの騎士』は、R.シュトラウスがモーツァルトのような作品を作りたい!と実は『フィガロの結婚』をベースにしているので共通点も多くあるのです。その中でもケルビーノとオクタヴィアンには、女性歌手が男装する<男役>でありながらも、劇中でさらに女性に扮するという共通点があり、これは女性が男性を演じるズボン役ならではの見どころなのではないでしょうか。といっても、シュトラウスは元々オクタヴィアンをテノール歌手(男性歌手)にしようとしていたのですが、ホーフマンスタールの熱心な薦めによりズボン役(メゾ・ソプラノ)に設定したそうです。


▲オクタヴィアンが女装した姿をオックス男爵は「ショコラちゃん」と呼ぶ・・・(ひいい)

今回、そんな二重にも性別が変わる役を演じる山本。これまでのSPAC作品『ロミオとジュリエット』(2012年初演)、『ドン・キホーテ』(2014年)、『弱法師』(2022年)でも、男性役を演じていました。

これまで幾度か男性の役を演じてきた山本にオクタヴィアンを演じてみての思いを聞いてみました!

Q1.オクタヴィアンはご自身でも数回目の男性役ですが、劇中で男性として女性を演じることが特徴的です。そんな“ズボン役”を演じてみて、気づいたことや、感触を教えてください!

男役は本当に疲れます…(笑)いつもとは違う身体を探します。自分の中にある男性的な部分を探して、その割合を増やすみたいな感じです。あくまでも自分でありながら、その中の男性性、女性性のパーセンテージを変えていくようにします。男性であっても女性らしい一面もあるので、その役にあったパーセンテージを探します。そしてエネルギーの使い方です。エネルギーの方向としては、怒りが爆発した時と似たような感じがあります。あくまで私にとってはですけど(笑)
でも怒りのエネルギーってすごいじゃないですか。それくらいのパワーを舞台場で放出しているつもりです。
日常ではそこまでのエネルギーは出さないので、かなりジャンプしているところがあります。特にこれまでの男役は感情を出す役が多かったので、その放出する作業というのは大変でした。でも男役をやることで、人間が見えてきます。どの役も女性の部分もあるし、男性の部分もあって、両方の性別やどんな人でも起こる現象もあることに気付きます。最近は男を演じているというよりは、人間を演じると思って臨んでいます。

Q2.元帥夫人との間で大切にしてきた恋、ゾフィーとの間に新しく芽生えた恋、二つの愛情を前にうろたえそうになる姿もオクタヴィアンというキャラクターの必見ポイント。山本さんご自身にも何か決断を迫られた経験はありましたか?

中学生のときからバスケ部だったのですが、高校1年生のときに膝を悪くして手術をしました。でも膝は痛いままで、且つバスケも下手でした。プレーをするのは好きだし、仲間と一緒に居るのも好きだけど、上手にできないし、膝も痛いしどうしよう、辞めようかすごく悩みました。そして、結果マネージャーとしてバスケに関わることを選びました。途中で何かを辞めるというのは嫌だったので、退部ではなく、自分が居られる形を探しました。

Q3.伯爵、女の子、そしてばらの騎士と、3幕を通して色んな姿の山本さんを観ることができる『ばらの騎士』。どのように役を切り替えていますか?

その瞬間を全力で生きる!目の前で起きていることと、目の前にいる人のことだけを考えて受け取っています。逆に変えよう変えようと思ってしまうと上手くいかないのです。

Q4.観客の皆さんにオクタヴィアンからどんなことを受け取ってほしいですか?

オクタヴィアンは本当にその瞬間を生きている人です。過去のことも未来のことも考えずに、「今」を体現している人なので、その瞬発性や情熱を受け取ってほしいです。自分からすると、それは眩しくて、でも愚かだなと思っているのですが、そうやって生きれる人を演じられて楽しいなと思っています。

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本作では凛々しい美少年を演じる山本ですが過去作品では、可愛らしい女の子役も♪

そして、他にも本作には過去のSPAC作品を彷彿とさせる場面や役があります。これってなんだか観たことある・・!既視感感じる!
まさにばらの騎士既視感(キシキシ感)!このシリーズは今後SPAC公式SNSで展開していく予定ですのでお楽しみに♪

公演期間も気付けば半分以上が過ぎ、げきとも公演も残るは数公演となりました。
一般公演は千穐楽3月10日(日)のみ!ゴールまで突き進みます!
ぜひ“ズボン役”オクタヴィアンにもご注目ください✨

(SPAC制作部・佐藤美咲)

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SPAC秋→春のシーズン2023-2024
#3『ばらの騎士』


演出:宮城聰・寺内亜矢子
作:フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
音楽:根本卓也
出演:石井萠水、大高浩一、木内琴子、貴島豪、小長谷勝彦、榊原有美、佐藤ゆず、武石守正、永井健二、本多麻紀、牧山祐大、宮城嶋遥加、森山冬子、山本実幸、吉植荘一郎、若宮羊市[五十音順]