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2024年9月30日

SPAC『イナバとナバホの白兎』2024 レポート①

自己紹介
はじめまして!
私は、静岡文化芸術大学に通う大学院2年の村上瑛真(むらかみえま)と申します。
現在、都道府県や市町村が設立した劇場の活動に注目した研究を行っております。
その中で、(公財)SPAC-静岡県舞台芸術センターにご協力いただき、SPACの皆様の活動を調査しています!

さて、なぜ私がブログを書いているのでしょうか?
ずばり、2024年10月19日(土)から一般公演が始まる『イナバとナバホの白兎』について多くの人に知っていただきたい!と思ったからです!
(公演情報はこちらから!作品のトレーラー映像もご覧いただけます。)
『イナバとナバホの白兎』は、楽しい音楽と動き、衣裳や仮面など、「演劇」を多くの角度から誰でも楽しめる作品です!

さらには、SPAC作品創造を私自身の目線でレポートすることによって、SPACをより深く知っていただけるのではないかと考えています。
普段は研究・調査として、SPACのみなさまが大切にされていることに触れています。しかし、研究論文では私が見たり感じたりしたことを全ては書くことができません。
その際に、SPAC制作担当の方から、ブログの執筆のお話をいただきました。
『イナバとナバホの白兎』の稽古の中で、私自身が考えたり、実際に聞いたりしたことを、観客の皆様とシェアすることで、新たな発見や対話の糸口にできるのではないかと考えました。

このブログは、私自身がSPACの皆様と接する中で発見したことや考えたことをまとめたものです!
ここから、『イナバとナバホの白兎』の再演に向けて作品をより味わう種をシェアしていきたいです。

『イナバとナバホの白兎』について
『イナバとナバホの白兎』は、2016年にフランス・パリの国立ケ・ブランリー美術館の開館10周年を記念して、ケ・ブランリー美術館から作品制作を委嘱され、美術館内にあるクロード・レヴィ=ストロース劇場にて初演されました。
(初演時の情報はこちらから)

本作品は、文化人類学者クロード・レヴィ=ストロースが考えた、ある仮説を演劇を用いて想像した作品です。

ある仮説とは、日本の「古事記」に描かれる大国主命の物語とアメリカ大陸の先住民族、ナバホ族の伝承神話には、アジア大陸の共通の起源となる伝承がある!というものです。
大国主命の物語は、ワニをだまして海を渡ろうとし、皮を剥がされた白兎を大国主命が助けるというエピソードが有名ですね!
これらと似たポイントを、レヴィ=ストロースはアメリカ大陸の先住民族の神話伝承に見出しました。しかし、この「似たポイント」は日本の古事記では別々のエピソードに散らばり、アメリカ大陸の先住民族の神話伝承では一つのエピソードにまとまっています。
レヴィ=ストロースは、アジア大陸で生まれた神話の一体系が、まず日本に伝わり、それからアメリカ大陸の先住民族に伝わったと考えました。日本には早く伝わったため、長い時間をかけて、「似たポイント」が複数のエピソードに散らばり、日本よりも遅く伝わったアメリカ大陸では「似たポイント」が散らばらなかったと、レヴィ=ストロースは考察しています。(ここでは、簡単に「似たポイント」と表現しています。そして、エピソードを時系列に受け取ったり、意味づけをしたりするのではない考え方を「構造主義」と言います。)
そして、レヴィ=ストロースは、自身よりも日本神話に詳しい専門家が、失われた起源となる伝承を明らかにしてほしいと述べています。

実際にナバホ族の方と接したライター・久保田梓美さん、出演俳優の皆さんとSPAC芸術総監督・宮城聰さんが全員で日本の古事記とナバホ族の伝承神話を「構造主義」の考え方を用いて考察し、失われた起源を導き出し、かつ演劇としての表現を模索した作品です。つまり、誰か一人が書いた台本・物語ではなく、全員で創った物語、作品であるということです。そして、演劇としての表現の中には、レヴィ=ストロースが考えた「構造主義」を用いて鑑賞できる表現も模索されました。

以上のことから私は、『イナバとナバホの白兎』は、レヴィ=ストロースの仮説に、全員で向き合い、演劇表現を様々な角度から挑戦した作品だと考えています。

私が気になったこと
ここまで『イナバとナバホの白兎』について、簡単に説明してきました。
稽古を見学したり、作品についてSPACの皆さまとお話したりする中で、不思議に思うことが沢山浮かんできました。

とても壮大な作品だけれど、皆で作品を創るってどうやってやるんだろう?
今回初めて参加する人はどう考えているんだろう?
皆バラバラなセリフを話している部分があるけれど、どういうことなんだろう?
音楽は楽しいし、盛り上がるけど、どうやって創っているんだろう?

などなど…

作品を観る一観客として、皆さまと疑問を共有し、作品を一緒に楽しみたいです。
作品に携わっている皆様にインタビューにご協力いただき、ずばり裏話や大切にしている点を伺うことで、ブログを読んでいる皆さまにも、より作品を楽しんでいただけると良いと思います!

これからの記事を楽しみにお待ちいただけますと幸いです。
よろしくお願いいたします!

村上瑛真(静岡文化芸術大学・大学院2年)


秋→春のシーズン2024-2025
#1『イナバとナバホの白兎』

<静岡公演>
2024年 10月19日(土)、20日(日)、27日(日)、11月3日(日祝)、4日(月休)、9日(土)
各日14:00開演

会場:静岡芸術劇場(グランシップ内)
 
<浜松公演>
2024年 12月7日(土)13:30開演
会場:浜松市福祉交流センター ホール
 
<沼津公演>
2024年 12月21日(土)13:30開演
会場:沼津市民文化センター 大ホール
 
上演時間:110分(予定)
日本語上演/字幕あり(英語、フランス語、ポルトガル語、日本語)
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*公演詳細は↓バナーをクリック

 
*それぞれのポスターをクリックすると、2016年(左)・19年(右)上演時のブログをご覧いただけます(2016年初演時の文芸部・横山義志によるパリ日記はこちら)。