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2024年11月27日

象BlogⅣ インターン生と対談❶『象』の稽古場に参加してみて

みなさんこんにちは!SPAC制作部佐藤美咲です。
11月も下旬となり、寒さが増す一方ですね・・。静岡芸術劇場では、まもなく『象』の公演が始まります。12月7日(土)から4公演、ぜひお見逃しなく!

『象』の稽古場には、静岡大学 地域創造学環アート&マネジメントコース 3年生の宮城羽那さんが、インターン生として参加してくれています。羽那さんは、中高生鑑賞事業でSPACに初来場。それから何度か足繫く通ってくださっています。

今回のブログでは羽那さんと、制作担当の私とで『象』についてお話した内容をお送りいたします。
なんと、イラストが上手な羽那さんが似顔絵を作成してくださいました(^^)

これまでのブログはこちらからご覧いただけます。

佐藤:羽那さんは7月から、SPAC『象』の稽古場に来てくれているけど、『象』について、最初読んだときどうだった?

羽那:1番最初はやっぱ難しい内容だなっていう感想があって。
演劇って基本会話で繋いでいくと思うんですけど、その会話がうまく繋がってない部分っていうのが結構多かったので、どういうことを言ってるのかっていうのが割とわかりにくい部分があるなあと思いました。

佐藤:私も同じこと思った!謎にカフェ・シンデレラで、真っ暗闇の中読んでたんだけど、詩的な部分が多くて、場面について想像するのが難しくて。なんだろうと思っていたら読み終わってしまった。

羽那:場面がつかみにくくて、文字情報だけでは分かりづらいところがあるかもしれないですね。稽古場に入って俳優さんたちの演技をみて、こういうことを言ってたのか!って気付いて。

佐藤:読み合わせから始まって、俳優さんたちが読んで、あ、人がここにいるって思った。全然自分が想像していたものとは違っていて。俳優さんが読んで演じるからこそ、戯曲って成り立つんだなあ、小説とは違うんだなあと思ったよ。

そんな『象』の稽古場はどうでしたか?

羽那:演出家のEMMA(旧・豊永純子)さんと、俳優の皆さんが何度も議論して、演技を変えていました。1日行かないだけで全く別のシーンになっていたりすることが結構ありました。戦争を経験していないからこそ、真摯に向き合って作り上げている現場だなと思いました。

佐藤:そうだね、最初からガチっと決まっているわけではなくて、日々変化が目まぐるしかった。
9月になって、実際に利賀に入ってからも、やっぱりこっちの方がいいなとかあって、最後の最後まで練って作り上げていました。次の12月の公演も、会場のサイズが初演時とは違うので、利賀公演とはまた違ってくると思うので、これからの稽古が楽しみです。
ちなみに、好きなシーン、印象に残るシーンはある?

羽那:看護婦と赤ちゃんのシーンです。見た目的にも一番インパクトがあるかも。

佐藤:わかる。その日の自分のコンディションによって、ひっかかるシーンは違うんだけど、利賀の創造交流館で観たとき、看護婦の「子どもを産みたいんです」というセリフが妙に響いて。他にも俳優さんの演技が毎回変わるから、毎回ドキドキします。つまり静岡での4公演、どの公演も絶対に同じ公演はないところが見どころかもしれない!1週目と2週目とかですごく変わりそう。

・・・『象』は被爆者が登場するお話で、その戦争のことも考える話ではあるけど、このワードを聞くと、やっぱり重たいなあってどうしても思ってしまいます。しかも自分はこれまで、戦争について深く考えてきたことはなくて、向き合うチャンスが来たんだなあと思っています。

羽那:歴史が一時期すごく好きなときがあって、調べてたことはあったけど、原爆となると、急に重たい感じはしてしまいます。過去に起こったことだと認識ができるけど、感情としての記憶が先行しがちで、自分は感情移入しすぎてしまうから、同じように避けてきたかもしれません。

佐藤:学生のときに、必ず国語の教科書で題材にされている物語はあって、勉強はもちろんしてきたよね。私は特に、高校生のときに修学旅行で広島に行ったのは大きいかも。でも当時、原爆資料館の展示を直視することができなくて、今となっては後悔している・・。

羽那:私も市の派遣で広島に行ったことがあります。観光目的では行かないだろうと思って、がっつり勉強しに行く!と思って派遣事業に参加しました。平和式典への参加や、戦跡を巡ったりしました。

佐藤:すばらしい・・、でも確かに私も修学旅行で行かなかったら、まだ広島に行ったことなかったかも。静岡からも距離があるし、夏に行こうかなって思ったけど、断念しちゃった。
歴史としてはもちろん知っているけど、なかなか向き合えないよね。でも映画でよく題材としてとりあげられているイメージ。最近も『オッペンハイマー』が話題になっていたり。

羽那:私も学童とかで、終戦日前後に必ず戦争関連の映画を見ていました。

佐藤:あとは朝ドラとか。この前の『虎に翼』でも、原爆裁判とか、ケロイドのある女性が登場していたよ。その女性が、街に出ると顔を見られて・・みたいなことを語っていて、『象』を思い出さずにはいられなかった。そもそもケロイドについて考えることもこれまでになかったし、知らない世界だったから、朝ドラをみて繋がった部分もあって、怖い・・というイメージもあるけど、『象』はそういう意味では怖くないよね!

羽那:感情はかき乱されるけど、怖くはないです!

佐藤:戦争って重たいなあって思っている人にも、劇場の扉は気軽に開けてほしいですね。

羽那:エンタメが1番気軽にって言ったらよくないかもしれないけど、気軽に思いを馳せる機会にはなりますよね。
この前『ゴジラー1.0』を観て、直接的には描かれていなかったけど、「黒い雨」とか登場するんです。SNSには原爆についての感想も多くて。そう考えると、演劇もきっかけ作りに最適だなと思います。

・・➋へ続く(https://spac.or.jp/blog/?p=34401

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SPAC秋→春のシーズン2024-2025
#2『象』

演出: EMMA(旧・豊永純子)
作:別役実

出演:阿部一徳、小長谷勝彦、榊原有美、牧山祐大、吉植荘一郎、渡辺敬彦[五十音順]

<静岡公演>
SPAC秋→春のシーズン2024-2025 #2
12月7日(土)18:30開演/8日(日)・14日(土)・15日(日)各日14:00開演
会場:静岡芸術劇場

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