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2012年4月1日

ボゴタ演劇祭二回目参加の記(8)

ボゴタ演劇祭二回目参加の記(8)

3月26日(月)

SPAC文芸部 横山義志

前回(隔年なので2年前)のボゴタ演劇祭はロバート・ウィルソン、ピーター・ブルック、フランク・カストルフ・・・といったラインナップだったが、今回からはじめて全面的に新ディレクターのアナマルタ・デ・ピサロさんのプログラムになり、ロメオ・カステルッチ、インバル・ピント、アクラム・カーンなど、一世代から二世代くらい若返った印象。

ボゴタ演劇祭 劇場で上演される演目のプログラム

http://festivaldeteatro.com.co/2012/obras.html

アナマルタ・デ・ピサロさんは有名な元反政府運動家。大学時代から独特のファッションで目立っていたらしいが、仲間から批判されると、「私はコロンビア人が全員私みたいに好きな格好ができるようになるように運動をしているのよ」と言い返していたという。

アナマルタ・デ・ピサロさん

アナマルタ・デ・ピサロさん

アナマルタ・デ・ピサロさん

今日は午前11時から午後1時まで、ホルヘ・タデオ・ロサノ大学視聴覚ホールで宮城さんの講演会がある。「偉大な演出家との出会いEncuentro con grandes directores」という枠。たしかに(?)、このラインナップのなかでは、宮城さんは比較的キャリアがある方になる。この企画は二回行われ、第二回のゲストは韓国のイ・ユンテクさん(SPACでは『ロビンソンとクルーソー』を演出)。講演会の内容については、また後日。

これだけアジアの作品が重要な位置を占めているのは、アシア・イベロアメリカ文化財団の存在によるところが大きい。

http://asiaiberoamerica.org/?cat=32

アシア・イベロアメリカ文化財団+アナマルタさん、2010年に静岡を訪問

この財団の企画として、ボゴタ演劇祭のなかで毎回「オラ・アシア!」というアジア舞台芸術の紹介枠を設けていて、今回はその枠のなかでイ・ユンテク演出『ハムレット』、アクラム・カーン振付『Vertical Road』、そしてSPAC版『ペール・ギュント』の三作品が上演されている。

「オラ・アシア!」のフェイスブックページ

http://www.facebook.com/pages/HOLA-ASIA-Festival-de-Artes-de-Asia-en-Colombia/276735309006961

財団代表のサミル・ヤンさんによれば、もともとコロンビアはかなりヨーロッパとの結びつきが強く、ラテンアメリカのなかでも比較的アジア人が少ないところだったという。韓国出身で、コロンビアで神学の博士号を取ったサミルさんは、よく中国人か日本人に間違えられていて、「それなら、どうせ見た目はほとんど同じだし、コロンビア人には区別がつかないんだから、ここではアジア人がみんなで集まって存在を主張した方がいいのではないか」と思って、このアシア・イベロアメリカ文化財団を発想したとのこと。今回の『ペール・ギュント』も、「アジア人は真面目に黙って働いているばかり」というイメージを修正するするのに、とても役に立っただろう、という。「コロンビアの舞台で本当に成功した日本人は山海塾と佐野碩とSPACくらいだ」などとおっしゃって下さった。

サミル・ヤンさんと宮城さん

サミル・ヤンさんと宮城さん

サミルさんは日本や中国の大使館、さらにはベトナムなど東南アジア諸国の大使館にも、「本国の政治状況がどうなっていようと、コロンビアでは同じアジア人として仲よくやっていこう」と積極的に声をかけて、各国で予算を出し合って様々な共同のイベントを立ち上げている。

あっという間の最終公演日。今日はバラシがあり、長い夜になるので、劇場行きバスは午後3時と午後3時45分の2便。俳優は4時30分トレーニング開始。

楽日になって、連絡の手違いで舞台装置を港まで送るコンテナの手配ができていないことが判明。緊急ミーティング。コンテナがダメなら、何台かのトラックに分けて持って行くという・・・。不安が漂う。

緊急ミーティング 制作担当ディアナさん、SPACTシャツの通訳小林さん、制作大石さん、丹治さん

緊急ミーティング 制作担当ディアナさん、SPACTシャツの通訳小林さん、制作大石さん、丹治さん

『ペール・ギュント』は4月・6月にも公演があるが、メンバーの入れ替えがあり、今日で最終公演になるメンバーもいるため、舞台上で円陣を組む。

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劇場に詰めかけるお客さんたち

劇場に詰めかけるお客さんたち

今日は在コロンビア日本大使館から、大使を含め6人の方がご観劇くださった。

緊張感のある、とてもいい舞台。お客さんはすごく集中して見てくれていて、一挙手一投足に反応してくれている。

トロルの王様役の渡辺敬彦さんが牛の小便をワイングラスに注ぎ、ペール・ギュントに向かって、スペイン語で「トメ!(呑め!)」といい、まわりのトロルが「トメ!トメ!」というと、客席からも「トメ!トメ!トメ!」と合唱が。

トメ!トメ!トメ!

トメ!

オラ・アシア!の冊子デザインを担当したサンチャゴさんと公演後にお話。「プレス向けリハーサルでもちょっと見たけど、こんなにすごいとは思わなかった。このパーカッションは、ラテンアメリカ人ならみんな体がうずくよ。前半はかなり笑ったけど、後半、こんな話になるとは夢にも思わなかった。すごく深い話なんだね。本当に人生について考えさせられたよ」等々。たしかに、この壮大な物語は、ボリバルを生んだコロンビアにふさわしい話なのかも知れない。

サンチャゴさんはカメラマンとしても随所に出没

サンチャゴさんはカメラマンとしても随所に出没

11時半、お客さんたちをブエナスノッチェス、グラシアス、と送り出し、名残惜しむ暇もなく、早速各自片付けにとりかかる。

グラシアス!

グラシアス!

午前0時、一端集合。バラシの打ち合わせ。

えーではバラシの段取りを、と技術主任村松さん

えーではバラシの段取りを、と技術主任村松さんから

コルスブシディオ劇場のみなさんの希望で記念撮影。

チーズ! ウィスキー! サケ!

チーズ! ウィスキー! サケ!

スタッフの多くは常勤の劇場スタッフで、2年前の公演と同じ方が多く、とても助かった。

帰りのバスは午前1時、午前3時、午前5時(!)の3便。

深夜作業なので無理しないように気をつけながらも、時間通りに乗れるように、各所てきぱきと作業を進める。

装置の下の部分はほぼ解体

装置の下の部分はほぼ解体

午前2時30分頃、コンテナが到着!何があっても、何とかなるのがこの演劇祭の不思議なところ

頼もしいコンテナ登場

頼もしいコンテナ登場

午前2時46分、舞台はだいぶ片付いている

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セリを下っていくパネル

セリで降りていくパネル

午前3時、コンテナへの荷積み作業中。まだ第2便出発はできなそう

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午前3時4分、衣裳部は最後のテーブルを片付け中

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午前3時6分、楽器箱作成中に手を怪我してしまった武石守正さん

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午前3時45分、楽器・小道具班の俳優集合

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午前3時55分、第2便のバス出発。

午前4時5分、ホテル着 ようやく走れてうれしかったのか、ものすごく飛ばしていた

楽器・小道具を搬出し、各部屋に移動ののち、午前4時20分、第2便組解散。