2015年3月24日

◎『身も心も』ができるまで(3)◎ 俳優牧山がレポート!SPAC俳優×イロトピー合同ワークショップ

3月16日 イロトピーとSPACのコラボレーション 1

イロトピーの新作『身も心も』の滞在制作の仕上げとして、
SPAC俳優との4日間のワークショップ(以下WS)を実施。

イロトピーが静岡で制作したものを30分程度の小品としてまとめるということ。

WSに参加したSPAC俳優は4人、木内琴子、たきいみき、武石守正、永井健二。
小生は稽古場付きの便利屋として、WSに参加させていただきました。

集まったSPAC俳優たちにイロトピー芸術監督のブリュノが『身も心も』のコンセプトを説明してくれました。

イロトピーといえば清水港での水上パフォーマンスを思い出すだろうが、
本国フランスではもう一つ、街中での「食」にまつわるパフォーマンスも行っている。

「人を食す」というカニバリズムへの興味、それは
親しい人や愛する人を食べたいという欲求。自らを食べさせたいという欲求。
昔の夫婦は50年かけてゆっくり、お互いを食べ尽くした。現代は10年?一夜で・・・?
「こんにちの世界は競争的自由主義によって欲望に煽られた“人間が人間を食べる”社会になっている」――


▲ 『身も心も』のコンセプトの説明をするブリュノ

アインシュタインのような風貌のブリュノさんによる、
からだに「食材でつくった服(肉襦袢)をまとった俳優がパレードのように路上に繰り出し、
出くわす人々にその料理=からだを食べてもらう」というパフォーマンスの創作が始まります。

まずは、ダンサーのファビエンヌによる準備体操。「身も心も」ほぐれていきます。
ひとしきり運動が終わると音響担当の俳優ピエールが名前を覚え合おうと提案。
日仏合同「名前まわしゲーム」がはじまりました。
名前が分かると「身も心も」溶けちゃいました。

稽古場の進行担当ドミニクが即興芝居をやろうと提案します。
パートナーの右手と左手の人差し指で割り箸をはさんで落とさないようにバランスをとったり、
歩行中に出会った二人がコンタクトを取り合い、関係性を作る。

次第に指示が具体的になってきます。

二人だけが関係を作り、その関係が周りを巻き込む。逆に外側の人間が二人の関係とコンタクトをとる。
ドミニクが問題点を指摘して、もう一度。さらにペアを変えてやってみる。フランス人の役者たちも提案します。
演出そっちのけで、みんなが意見を出し合い、シーンを作る。
ブリュノはそれを優しげに見つめ、みんなが価値観を共有し出したなというときに、意見を言います。

これがイロトピーのクリエイションなのです。

最後に小品のなかで使う「ベールの女」というシーンを創作。
「人がたくさんいないと試せないことが多かったのよ」とドミニク。
ストーリーや段取り、他の役者との関係性、新しいアイデア。
SPAC俳優も「こうしたらどう?」と様々な提案をします。

演劇は国や言語という垣根を飛び越えて行きます。

という感じで、1日目が終了。あっという間の5時間でした。
イロトピーの面々とSPAC俳優たちは濃密な作品を創り出しそうです。
 

 
3月17日 イロトピーとSPACのコラボレーション 2

SPAC俳優が揃うとブリュノの創作したキャラクターたちの説明が行われ、SPAC俳優にも人物像が振り分けられました。俳優たちはそれらを頭に叩き込みます。

衣裳担当のギッタとアンが出来上がったコスチュームを見せてくれます。身体を食べる仕掛けつきのコスチューム。けっこうリアルです。

食べる食材はコックであり、出演者のシリルが担当しました。食を通じたコミュニケーションということで、日本の食材をかなり取り入れているそうです。明日は朝の5:30に市場に出かけるとか。プロです!

ブリュノは言います。
「自分を食べさせるというのは、自分を解放するということ。路上で偶然出会った人(観客)に対して、開かれた身体を持たないと食べてはくれない。
だけど、実際、本番を経験しないとわからないよね(笑)。」

そんなこんなで本日のWSは始まります。
今日はSPAC俳優の武石守正が中心となり、「スズキメソッド」をイロトピーのメンバーに体験してもらいます。ダンサーのファビエンヌは流石の呑み込みの速さ!もちろん他の出演者たちもしっかりとついてきます。みんな、基本がしっかりしているからだろうなあ。

続いてはピエールによるヴォイス&リズムトレーニング。SPACでも音楽監督の棚川さん指導のもとリズムトレーニングを積み重ねていますが、演劇の現場にリズムトレーニングを組み込むというのは世界の主流になりつつあるのかもしれませんね!

トレーニングは終了し、進行役はドミニクにタッチ!小品の舞台となるカチカチ山(舞台芸術公園内 食堂棟)に見立てたベニヤ板とその上にスックと立つ粘土人形。舞台セットのミニチュアです。粘土人形にはmikiやkotokoとすでに俳優の名前が書かれています。

置かれている人形の位置を見ていたら、昨日クリエイションした「ベールの女」の説明が始まりました。ドミニクは人形を動かしながら、次のシーン「昇天する男」の動きも粘土人形で説明。「昇天する男」はピエールのシーンです。ピエールはそれを見てさっそく昇降機に乗ります。ピエールが満足するのを見計らって、ブリュノさんが「ベールの女」の新しい段取りとアイデアを説明。昨日の夜に思いついたようです。


▲ 昇降機に乗り「昇天する男」を演じるピエール

ピエールは音響担当で音楽の録音・編集もしています。ブリュノの説明がおおかた終わると曲を流し、「ベールの女」が登場するきっかけとなる音と長さを実際に聞かせてくれました。ピエールの編集した音楽がストーリーやシチュエーションを創り出していきます。

仕掛けや段取りを確認し終えると、ドミニクは「貪りあう二人」というシーンを即興でやってみようと提案。ピエールが曲を流し、ファビエンヌがイメージを膨らませています。

「どう?」というドミニクの問いかけに、「やってみる!」とファビエンヌ&SPAC俳優。提案、即実行。
創作って感じ!

最後は今日やったシーンをアドリブを交えながら、ピエールの音楽に合わせて進行させてみることに。だんだん形になっていきます。

本日のWSはここでおしまい。終わった後はイロトピーの面々とSPAC俳優との交流ディナー。その席でブリュノさんは、「こうやってみんなで机を囲って、食事をする機会っていうのが大事だと思うんだ」と『身も心も』を創作するもう一つの動機をつぶやいていました。

さあ、あと2日です。明日はどんなWSになるのでしょうか。

牧山祐大
 
 
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清水港での水上パフォーマンスで喝采を浴びたフランスの「イロトピー」が、
「食と身体」をテーマに静岡のまちなかに出現!
『身も心も』
日時:5/16(土)、5/17(日) 
会場:七間町名店街 (静岡市葵区)
無料・予約不要
☆「ふじのくに野外芸術フェスタ」詳細はこちら
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2015年3月17日

◎『身も心も』ができるまで(2)◎ どんな作品?演出家ブリュノさんに大学生がインタビュー!

「ふじのくに⇄せかい演劇祭」のボランティア・静岡県立大学1年の酒井七菜子さんが『身も心も』の創作現場を訪問し、芸術監督ブリュノ・シュネブランさんに独占インタビューを実施しました。まだまだ全貌が見えない『身も心も』ですが、作品のコンセプトやイロトピーという集団の目指すものなど、ディープなお話をたっぷりと聞き出してくれました!


▲ 左がブリュノさん、右がインタビュアーの酒井七菜子さん

――現在滞在制作している『身も心も』はどんな作品ですか?

 今回は「食」に関する作品を舞台芸術公園で滞在制作しています。同じような「食」に関する作品は、これまでもフランスをはじめ様々な国の街中で行ってきました。
 私たち「イロトピー」という劇団は、常に公共の場所、開かれた場所でパフォーマンスをしています。ですので、作品の性格上、お客様には全部無料で観ていただくような作品です。県や市町村などの自治体が、我々の作品をお金を払って呼んでくれる、そのようになっています。SPACでは昨年、一昨年と2年続けて水の上での作品を上演しました。
 今回のテーマである「食と身体」は、私たちのどこかに残っているカニバリズム(人の肉を食べる)という習性を探す、というものです。私は現代社会の中にそういった習性が今も残っているのではないかと思っています。
 なぜ人間は、自分が愛した人を食べるのでしょうか?「食べる」というのは、ある意味象徴的な表現ですが、私たちは(愛した人を)すぐに食べてしまうのではなく、10年とか時間をかけて食べつくしてしまいます。
 今回の作品では、俳優というのが観客にとっての食べ物になります。演劇的にどうやって俳優たちが食べられていくのか、そういう作品です。例えば俳優たちの動きを、観客が食べていくのです。それを比喩的に見せるために実際に食べられる食べ物を使います。それぞれの俳優がそれぞれ違ったキャラクターを持ち、それぞれが違った食べ物を違った身体の場所から食べさせます。
 今回来日したメンバーの中にいるシリルさんは、コックさんです。彼が今やっていることは、どこにもない食べ物を創ること。でも折角日本に来たのですから、日本の食事から様々なインスピレーションを得たものを創ろうとしています。
 観客が食べるのは一口程度の食べ物です。それらの食べ物が、シリコン等で作られたボディスーツに付けられています。その身体に付いた食べ物を、観客がそれぞれ自分の手で取ります。役者たちは取ってはくれません。観客が自ら手を出して取る必要があります。世界中に多くの食事がとれない人たちがいるんです。私たちが食事をとれる、物を食べられる、というのは、食べられない人がいるからです。ですから、(それを象徴的に示すためにも)観客が食べ物を自ら進んで取りに行く必要があるんです。


▲ シリコンで作られたボディスーツの一部

 『身も心も』は、5月16日、17日に七間町名店街で上演します。今回ここ、舞台芸術公園で3月20日まで色々な制作をして、1度フランスに戻り、5月のショーを仕上げて戻って来る予定です。
 私たちイロトピーは、こういった食べ物を使った企画をこれまで何本もやってきています。食べ物というのは現代社会において何であるのか、それは我々にとってとても重要な問題なんです。
 私たちの劇団の仕事の仕方として、社会的な問題点を先ず見つけて、それに対してアーティストの立場で何を提言できるのか、それをテーマに沿って考えていく、そういった形で活動しています。今までも、例えば住居とか水、移動と運送をテーマとして掲げて作品を創りました。それから愛情、自殺についての作品も創りました。もちろん死に関してもです。
 私たちの作品にはテキスト、台詞がありません。色々なイメージ、映像的なモノを創って、そこから演劇的なメッセージを伝えるということを考えています。私たちは、文章というものをひとつの栄養として取ります。食べ物のように。そこから映像的なイメージを発信していこうとしています。我々の芝居というのは、イメージ、映像といった画的な作品を創っているといえます。イメージ、映像と言っても、もちろんそれは実際に生きている、そこで動いている役者の身体を通してのイメージです。


▲ 過去のパフォーマンス例。食べ物を使用したものも。

――「テキストが無い」と仰いましたが、それでは結末がわからなくないのですか?

 私たちの作品には、「語る物語」というものは無いんです。始まりも終わりもない。今行われていることを見せるだけなんです。
もちろん役者たちは話しませんが、ジェスチャーとか顔つきとか、あと態度とか、そういったもの全て含めて表現をします。

――食べ物を観客の方から取りに行くんですよね。観ている方としては気にはなってもちょっと自分から取りに行くのは怖いというか、ためらってしまうと思いますが、どうやって観客に食べ物を取らせるか、という部分をどのように考えていますか?

 フランスでも90%以上の人が劇場に入ろうとしない、劇場で芝居を見ようとしない、それと同じことなんです。「劇場に来て」と言うことも、ある意味でとても難しい事です。ですから、これは俳優としてもチャレンジなんです。どうやって観客を「取っていいんだ」という気にさせるか、それが俳優のチャレンジです。俳優の仕事っていうのは、そういう風に相手を信じさせて惹きつけることなんです。

――距離は近いんですね、役者と観客の。

 全くないです。観客と俳優が混ざり合うようにしています。

――劇場というひとつの場所にこだわらないのは何故ですか?

 私たちにとっては、街そのものが舞台なんです。私たちは、自分たちの舞台を「街の中だ」と決めました。そして、水をテーマとしたら港に行ってしまおう、交通がテーマになったら、バスの中に入ってしまおう、という感じで創作しています。

――バスの中ですか!?それはどういうパフォーマンスですか?

 バスの車内でのパフォーマンスでは、本当に街なかのバスを使ったり、イロトピーが持っているバスを交通機関にみせかけて使ったりして上演しました。他にも、バスの停留所に人が住んでしまおう、という企画もありました。

――観客は知らずに入って来るんですよね。

 それはケースバイケースですね。バス会社と組んでやるときもありましたから。
 フランスでは、バスに乗りたがらない人が増えています。バスに乗ると言えば、女性か、貧乏人か、すごく若い子か、老人か、移民という感じになるので。
 色々な人をバスに呼びたい。そう思った時に、何かここでショーをやって人の興味を引こう、と思ったわけです。だけど、バスに乗れる人数が少なくなってしまうので、もう1台バスを後ろに付けて、観客にはそちらにも乗ってもらったりしました。
 バスは外から見たらいつもと全然変わらなくて、運転手さんも普通にいるんだけれども、中に入ったら農場があったり、音楽を流して踊っていたり、トレーニングルームになっていたり…、コロコロ変わります。

――日本ではまだ上演したことはないんですか?

 ヨーロッパの他の国では、何度かやったことがありますが、まだそれ以外のところではないです。

――このパフォーマンスは、バス会社から「お願いします」と依頼があるのですか?それともこちらが思いついて提案する、ということなんでしょうか?

 基本的には我々の方から「こういうことができますよ」という提案をしてきています。
 ただ、演劇とかパフォーマンスとか枠に閉じ込めるのではなく、ジャンルとかにとらわれないで、考え方を広げていく方が良いと思います。

――私はジャグリングをやっているのですが、いつも「お客様をどうすれば楽しませることができるのか」を考えています。どうやったらお客様の心を掴めるか、楽しんでもらえるのか、アドバイスを戴ければと思うのですが。

 フランスには物語を語りながらジャグリングする人がいるのですが、これはショーとしてとても面白いです。
 ただ、私たちの劇団には、ジャグリングができる人とか、アクロバットが出来る人とか、そういう人はいないんです。私は社会学的なところから、「社会をどう考えるか」というところから演劇を創作してきました。私は、芝居というのは、体を作っていなくても、声が出来ていなくても、特にテクニックを習っていなくてもできるもので、ただ社会というものの中にこうやって入っていきたい、という意思が必要なのだと考えています。演劇というものは、自分を表現するひとつの手段、道具なんです。
 日本での、こういった全ての人たちとの関わりが演劇なんです。もうここは演劇の場で、これは舞台なんですよ、ひとりひとりに自分の役割がある。

(2015年3月3日 舞台芸術公園 休憩所「カチカチ山」にて)

【プロフィール】
ブリュノ・シュネブラン/『身も心も』演出家
パフォーマンス集団「イロトピー」芸術監督。1964年パリ生まれ。精神分析学、社会学、建築などを学び、舞台の技術監督や、コンテンポラリーダンスの照明デザイン、音楽劇などの美術デザインを行う。78年にカマルグ(ローヌ川下流の三角地帯)の小さな島と出会い、エコフレンドリーな生活を実践。80年にイロトピーの活動を開始。

☆『身も心も』公演の詳細はこちら


2015年3月12日

◎『身も心も』ができるまで(1)◎ あの!イロトピーが滞在制作中!

昨年、一昨年と清水港で上演された『夢の道化師~水上のイリュージョン~』
色とりどりの花火、幻想的な音楽、おとぎ話のような情景、ユニークな人々のドラマ・・・これら全てが海の上で展開されるという、
驚きの作品を上演したフランスの野外パフォーマンス集団「イロトピー」。
そのイロトピーが日本で新作を上演するために
今、舞台芸術公園で滞在制作を行っています!

 
『夢の道化師~水上のイリュージョン~』映像

新作のテーマは「食と身体」。
タイトルは『身も心も』です。


▲ 「JAPON RESIDENCE 2015」と書いてあるファイルを発見


▲ ここが創作現場

今は衣裳・音楽の製作、食べ物の試作を中心に行っています。
・・・といっても、奇想天外なパフォーマンスを行うイロトピーの創作過程では、一般的な衣裳・音楽・食べ物を作るのではなく、どうしたら作品のイメージ世界を具現化できるのか、といったシステム作りの試行錯誤から始まります。


▲  試作品について打ち合わせ。手前が演出家のブリュノさん、中央がシェフのシリルさん、奥が衣裳デザイナーのギッタさん

この作品は5月に「ふじのくに野外芸術フェスタ2015」にて上演されます。
この日は「シズオカ×カンヌウィーク2015」も同時開催しており、七間町名店街にはマルシェもオープンします。
あの!イロトピーのことなので、街中で驚きのパフォーマンスを見せてくれることと、
私たちスタッフもどきどきわくわくしています。
次回のブログは創作現場にもっと踏み込んでお届けしますね!
A bientôt!(またね!)

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『身も心も』
日程:2015年5月16日(土)・17日(日)
場所:七間町名店街(静岡市葵区)
<観劇無料/予約不要>
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