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2016年6月11日

イナバとナバホの白兎/パリ日記(15)(16)

2016年6月4日(木)
SPAC文芸部 横山義志

 
朝9時劇場入り。
 
舞台作業をはじめたときから懸案だった非常灯問題が意外な展開を見せる。
 
 
多くの劇場で、暗転時に非常灯を消せるか否かは舞台効果上大きな問題になる。もちろん保安上は非常灯がついていた方がいいわけだが、非常時の安全を確保しつつ、いかに作品としての効果も出せるようにするか。

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このクロード・レヴィ=ストロース劇場が特殊なのは、舞台奥に非常灯がついていることだ。舞台の奥側は階段状になっていて、最上段はホワイエにつづき、ホワイエのさらに奥には庭園がある。実は、これが避難経路の一つになっている。つまり、非常時には観客は入ってきた入口からだけでなく、舞台を通って庭園へと抜けていくことにもなっている。この経路を指示するために、舞台上に二つの非常灯がともっている。

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ただし、実際に観客が避難することを想定してみれば、舞台美術や楽器でいっぱいの舞台を通って庭園に非難していく、というのは危険極まりない。しかも、そこに非常灯がついていたとしても、多くの観客は上演中、カーテンの向こう側に庭園があるということに気づかないので、そこに逃げていこうとは思わないだろう。

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この非常灯はかなり高い位置にあるので、『マハーバーラタ』を上演したときにはあまり気にならなかったが、今回は舞台美術のちがいもあり、高い位置まで目が行くので、非常灯を消せないものか、議論がつづいていた。
 
俳優・スタッフに疲労がみられることもあり、明日は多くのメンバーには休んでもらうことにしたい、ということを劇場側のスタッフに伝えたところ、「明日は劇場側スタッフは来ることになっているが、ちょうどいいかも知れない。カーテンの吊り替え作業をしなければならず、SPAC側の作業や稽古がない方が作業がしやすい」という。何の話なのか、はじめはよく分からなかったが、どうも客席後方の仕切りになっているカーテンを取り外し、1メートルごとくらいに切れ目が入った特注のカーテンに取り替えるという。その固定のために、カーテンレールに新たなビスを打ち込んだり、という作業が必要とのこと。かなり大変な作業。

添付

これによって、舞台奥からの避難は想定せず、客席後方から観客が一斉に避難できるようになる。セキュリティと芸術上の効果を両立させるために、劇場の未来を見据えたうえで決断したのだろうが、美術館がこの作品に賭ける意気込みが伝わってくる。
 
午後4時半から9時過ぎまで全体稽古。本日はヘアメイクの梶田さんが入ったので、はじめてヘアメイク付きでの稽古。フランスで見てみると、同じものでも見え方が変わったりもする。第三幕の老婆のヘアスタイルは変更になりそう。
 
 
午後10時退館。
 

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2016年6月5日(日)

ひさびさの好天。

どうしても今日作業をする必要がある照明班・舞台班とそのお手伝いをしてくれる俳優さんが午後2時~3時入り。劇場では客席裏のカーテン吊り替えのためにレールにビスを打っていく作業が進んでいる。かなり時間がかかりそう。

午後6時まで作業して、退館。まだ日が高いうちに帰るのが新鮮。

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フランス国立ケ・ブランリー美術館開館10周年記念委嘱作品
『イナバとナバホの白兎』
6/9(木)~19(日) ケ・ブランリー美術館クロード・レヴィ=ストロース劇場
◆公演の詳細はこちら
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