2016年10月30日

『高き彼物(かのもの)』への道 9歩目】出演者インタビュー第6弾・本多麻紀

『高き彼物』出演者インタビューの6人目は、野村市恵役の本多麻紀さんです。
とても真面目で熱い気持ちも持っている野村市恵を演じる本多さん。今回の演技について伺っていると、本多さんからも役に通じる真剣な様子が見えました。
(収録は第一期稽古期間〔8月〕に行いました。)

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–本多さんが演じられる野村市恵についてお聞かせください。

本多:袋井の中学校で国語の教師をしていて、10歳の息子がいるシングルマザーです。以前に猪原(正義)先生と同じ高校で教えていた縁で、猪原先生とそのご家族とお付き合いしています。

–本多さんから見た野村市恵の印象はいかがでしょうか。

本多:冗談の通じない真面目な人という描写があるなど、いかにも中学校の国語教師といった雰囲気ですが、時々イメージを裏切るような行動をとることもあって。読み返すたびに発見がある、けっこう振れ幅の大きい役だなと思いました。
戦後に少女時代をすごし、結婚して割とすぐに離婚して息子を育て、苦労してきただろうなぁと思います。市恵は猪原先生のどういうところに惹かれたのかという事を考えているのですが、(猪原先生の)何かのモノサシで人を見るのではなく、その人自身をちゃんと見よう、その上でちゃんと向かい合おうとする情熱的なところかなと。それって言葉では簡単ですけど、実際にそういう人はなかなかいなくて、市恵もそうなりたいけど難しいと悩んでいます。市恵は、猪原先生はそれを実現している人だと思っています。そんな人はたしかに素敵ですよね。

–本多さんは猪原家をどんな風に見ますか。

本多:正義も平八(正義の父親)も智子(正義の娘)も直接口にしないこともありますが、ふとした瞬間のさりげない思いやりをみせるのでグッときます。例えば電話が鳴っているのに近くにいる平八が電話に出ず、智子に出させるシーンがあります。「それくらいしてあげればいいのに融通が効かない頑固なじいさんだなぁ」なんて思いましたが、平八はその電話には智子が出た方がいいだろうと思っていたから出なかったんですよね。「なんだ、平八は実はいいやつじゃん」って。そういう家族ならではのやさしさは美しいですよね。

–そういった人物を作っていく稽古、古舘さんの稽古はどのように進んでいますか。

本多:この『高き彼物』は、(SPACで上演する)宮城の演出作品ではあまり扱わない現代戯曲です。古舘さんご自身も現代口語演劇の方というイメージが強く、それらをあまりやったことがない私に出来るのだろうかという苦手意識がありました。
でも、稽古で何度かワークショップをしたりお話を伺ったりしているうちに、普段自分が戯曲や役に向かい合っていることと根っこは同じなんだなと感じました。それからは少し肩の荷がおりました。
ただ、突き詰めるポイントの違いはあって、そこはすごく面白いです。日常で無意識にしている動きや話し方に意識的になりました。例えば、驚く時にどういう意識の流れで、どの瞬間にどういう動きをして、どのポイントで驚くのかということを考えます。声や動きなどのリアクションが入る細かいポイントを発見していくのが新鮮でおもしろいです。これはこの先、芝居を続けていく上で大切なことだと思います。
いざそれをやろうとすると、難しくてなかなかできないんですけどね。

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–お話を伝える上で、そうした演技のディティールなどが大切になりそうですね。それでは、『高き彼物』というお話に抱いた印象や伝えたいことがありましたらお聞かせください。

本多:どの登場人物も時として愚かで誤った選択をしてしまい、誰かを傷つけることがありますが、そこで苦しみ懸命にもがく姿こそそれぞれの人物の「高き彼物」の切望であり、人間ってしょうがないな、尊いなといったところにつながっている気がします。台本の最初に書いてある人間賛歌はこういうことなのかなと。それは時代が変わってもあることですし、伝わるといいですね。

–「演技」をせずに自分でいてください、と稽古で古舘さんはおっしゃっていますが、自分ではしないことも芝居では行いますよね。そういう時は、役者としてはどのような状態なのでしょうか。

本多:例えば今やっているリーディング(第一期稽古で行いました)は、先のことを考えずに1つ1つの台詞をその時の相手の反応を見ながら進めるというものです。台本の流れをよく知らないまま進んでいくので、途中でその人物が自分の思いもよらない選択をすることがあります。そういう内心「それはない!」と思うこともたまにありますが、今はその気持ちに嘘はつかずに「ないわ~」っていう身体性に乗せて、その選択をするということをしています。
これは相手役から発せられた台詞によって初めて生まれる感情もあるので、1人で台詞を考えているだけでは思いつかないことです。だから稽古は面白いですね。
古舘さんの理想とする”真のリアリズム”、舞台上の人物みんなが、客観的リアルではなく主観的リアルでいる状態というのはとっても難しいし、私も観たことがないけれど、その壮大なチャレンジをさせていただけることはやりがいもあり、とっても嬉しいと思っています。

–ありがとうございました。

公演情報はこちら。
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SPAC秋→春のシーズン2016 ♯2
『高き彼物』
一般公演:11月3日(木・祝)、5日(土)、13日(日)、19日(土)
演出:古舘寛治 作:マキノノゾミ 舞台美術デザイン:宮沢章夫
静岡芸術劇場
*詳細はコチラ
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