2018年7月15日

<『顕れ』#001>県大での公開授業レポート

Filed under: 『顕れ』2018

今月9日より、宮城聰の演出による新作『顕れ(仮題)』の稽古がスタートしました!
この作品は、フランス・パリにある現代作家の作品のみを上演するコリーヌ国立劇場の創作委嘱を受けた作品で、静岡では「SPAC秋→春のシーズン2018-2019」の3作品目として年明け1月の上演が予定されています。

稽古がはじまったばかりの11日に、「ムセイオン静岡」*特別企画として、静岡県立大学にて宮城聰による公開授業「『顕れ(レヴェラシオン)』について」が行われました。
『顕れ』ブログ第1回目は、この公開授業のレポートをお届けします!(写真提供:静岡県立大学 広報・企画室)

大学でいう1限目、9時からのスタートにも関わらず、学生だけでなく職員や地域の方々が詰めかけ、220名定員の教室は満員に!
「僕が1限に出ていたのは、大学1年生のときくらい(笑)何年ぶりの1限だろうかなんて思って今日は来ました」という宮城の言葉から講義がはじまりました。

*「ムセイオン静岡」とは?
静岡市の草薙地域およびその周辺地域には、静岡県立大学、静岡県立美術館、静岡県立中央図書館、静岡県埋蔵文化財センター、静岡県舞台芸術センター(SPAC)、グランシップ(静岡県コンベンションアーツセンター)、ふじのくに地球環境史ミュージアムが位置し、若者や専門家が自由に行き交い、多くの文化を発信しています。
「ムセイオン静岡」は、この地域の文化関連機関が、自主協働プログラムとして文化・芸術・教育を学ぶ場を提供し、文化を発信する活動をしていきます。

 

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委嘱を受けた経緯

ことの始まりは、2016年のある日。
ワジディ・ムアワッド氏から「どうしても宮城と直接話したい」と連絡をしてきたそう。
ワジディ氏は、8歳のときに戦火のレバノンからフランスに渡り、15歳のとき再亡命を余儀なくされたという過去を持つ劇作家。
SPACは2016年の「ふじのくに⇄せかい演劇祭」に彼の作品を招聘し、『火傷するほど独り』(原題『Seuls』)が上演されました。

  <参考>
   ◎『火傷するほど独り』演目ページ
   ◎ワジディ・ムアワッドのこと(横山義志)

そんなワジディ氏からの話は
2017年にフランスのコリーヌ国立劇場の芸術監督に就任することが決まり、2018年のシーズンのオープニング作品を宮城に演出してほしい」というもの。
戯曲はカメルーン出身フランス在住の女性作家、レオノーラ・ミアノの『顕れ』原題:Révélationで、「演劇の魅力がぎっしり詰まったどうしても上演したい戯曲」「作者と誰に演出を頼むのがいいか検討したが、なかなかこれだという人が出てこず困り果てた。そこで、実現可能性を棚に上げて世界中の誰でもいいから演出してほしい人の名前を挙げようと話したとき、レオノーラ氏から挙がってきた名前が宮城だった」と伝えられたそう。

『顕れ(Révélation)』は奴隷貿易を扱った芝居で、宮城は依頼を聞いた当初、「日本の僕らにとっては最も知らない・遠い題材だと感じた」と言います。
なおかつワジディ氏のオーダーは、フランスの俳優に演出するのではなく、SPACの俳優たちで作ってそれをコリーヌで上演すること。
シーズンのオープニングを海外のカンパニーに、という驚天動地の依頼に最初は戸惑ったそうです。

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演出を引き受けるキッカケとなった、ある“偶然”

『顕れ(Révélation)』にはまず、最高神・イニイエが登場します。
アフリカでは輪廻転生、死ぬと魂は“魂の海”に還っていく、というのが基本的な死生観。
この戯曲では、人間の肉体が誕生するときに、最高神・イニイエの懐のなかから魂が飛び出して赤子の中に入るとされています。
この魂たちが「この世に生まれたくない」とストライキをはじめ、「かつてものすごく大きな、途方もない罪を犯したアフリカ人たちの告白を聞かなければ、この世はどんどんひどくなってしまう。」と言います。
その途方もない罪というのが、奴隷貿易への加担
アフリカの歴史のなかで、加担した人についてはほとんど語られることなく、そのうえ本人たちも口をつぐんだまま死んでいきました。
無念や怨念を抱え込んだまま死んでしまっているために、アフリカは幸せになれない、その魂たちを呼び出して告白してもらおう、というところからこの物語ははじまります。

宮城はこの「この世への恨みや自分への恨みを抱え込んだまま死んでしまった人が、そうした人生で最も辛い瞬間を語り直す、演じ直す、そしてみんな(観客)にシェアすることによって救われる」という構造・テーマが、自身が演出を手掛けた近作と通ずるところがあると感じ引き受けたそうです。

たとえば、2017年5月に静岡で、7月にはアヴィニョン演劇祭で上演した『アンティゴネ』は、原作通りだと全員が不幸になって終わるところを、冒頭のシーンで舞台上の人物をすべて亡者とし、劇中劇として亡者たちが記憶を回想するというしつらえにしました。
これには上演場所である、アヴィニョンの法王庁の中庭にたくさんいるだろう非業の死を遂げた浮かばれない魂を想い、その魂たちの慰めになるような芝居をしたい、その魂たちが救済され喜んでくれれば、おそらく上演は成功するという構想があったそうです。

また2017年1月に上演した『冬物語』は、嫉妬ゆえに最愛の人を自殺に追い込んでしまった人間を“赦す”芝居。
かつての人生の最も痛切なシーンを演じ直すことによる、魂の救済です。
さらに2018年1月に上演した能形式の『オセロー』は、まさにそうした霊的な存在が主人公となる「複式夢幻能」の形式を使ってシェイクスピアの『オセロー』をリライトし上演しました。

この3作品が上演されることを知らなかったワジディさんが『顕れ(Révélation)』の演出を依頼してきたという偶然、そしてアフリカの死生観と鎌倉仏教以後の日本的な死生観にとても似ているところがあることに驚いたと語りました。

稽古真っ最中だからこその熱量で、90分間ノンストップで話し続け授業は終了。
参加者からは、「すごくいいお話でした。授業で学んだ能「実盛」のお話とリンクして興奮しました」
「奴隷貿易なんて特に興味ないなと思っていたけれど、お話を聞いて、これはもう観にいかないわけにはいかない!と思いました」という声が届きました。

 

『顕れ』作者 レオノーラ・ミアノ氏による講演会開催決定!

授業で話があった、作品の演出に宮城を指名した『顕れ(Révélation)』作者のレオノーラ・ミアノ氏が急遽来日することが決定しました!
「SPAC秋→春のシーズン2018-2019」の製作発表会とともにレオノーラ・ミアノ氏の講演会を開催いたします。
両プログラムとも一般の方にご参加いただけます。ぜひ足をお運びください!
詳細は「SPAC秋→春のシーズン2018-2019」製作発表会/レオノーラ・ミアノ氏講演会のお知らせをご覧ください。

*『顕れ』(フランス公演)詳細はこちら