2013年2月10日(日) パリ
SPAC文芸部 横山義志
パリに来てからはじめての雪。つもりはしないが、骨までしみる寒さ。今年のふじのくに⇄せかい演劇祭で上演予定のクロード・レジ演出『室内』のための舞台美術模型を見に、創作技術部主任の村松さんと、ポンピドゥーセンターの近くにあるレジの制作事務所を訪問。2010年の『海の讃歌』以来の舞台美術家サラディンとの再会。大きな楕円堂の模型のなかに、ちょっと大変な舞台美術案。詳細はまだ秘密。
公演五日目、楽日。開場前から客席のうしろにいくつも椅子が並べられる。今日は超満員。三〇分前にはすでに長蛇の列。あいにくのお天気と流行している風邪のせいか、来られなかったお客さんもそれなりにいたものの、当日券を求めて並んでいたほとんどの方は入っていただけず。セキュリティー上これ以上は無理、とのことだが、自分もよく同じように並んで待っていた経験があるだけに申し訳なく、一人ずつお声をおかけしてみる。こういう時にはそれぞれ「どうしても見たい」事情があるもの。今後のツアーのご紹介などしてから客席に。
そんな熱気が伝わったのか、舞台も心なしか熱を帯びた印象。ヒロインのダマヤンティー姫にかけて静岡茶をアピールする「ダマヤンTEA新発売!」の場面はすごく受けていて、拍手まで出る。初日の心もとない笑いがウソのよう。終演して、俳優が舞台に戻ってくると、客席はほとんど総立ちで迎えてくれる。割れんばかりの拍手を聞くと、ツアーのしんどさも、どうでもよくなってくる。
オリヴィエ・ピィの『ロミオとジュリエット』や『グリム童話』でヒロインを演じたセリーヌ・シェエンヌさんが楽屋を訪ねてくれる。オマール・ポラスの『ロミオとジュリエット』でジュリエットを演じた美加理さん(今回はもちろんダマヤンティー姫の役)、本多麻紀さんと、熱く見つめ合ったのち、写真を一枚。他にも静岡で舞台に立った俳優たちが何人も来てくれた。
歓喜の再会もそこそこに舞台に戻れば、早速バラシがはじまっていて、スタッフも俳優も、早く帰りたい一心で走りまわっている。第七劇場の鳴海さんもバラシに加わってくださる。今日の終演は19時で、バラシの予定終了時刻は午前2時・・・。
舞台は見る間に解体されていき、予定より早く、午前1時には作業終了。村松さんは今日で帰国。慣れ親しんだクロード・レヴィ=ストロース劇場とも今日でお別れ。劇場スタッフのみなさんと、再会を祈りつつ、挨拶を交わす。土偶さん(?)とも、また会う日まで。